マーベル・ファミリーの反応
ケヴィン・ファイギ
マーベル・スタジオの社長であり、MCU成功の立役者であるケヴィン・ファイギ氏は、「私自身、そしてマーベル映画に携わるすべての人は、シネマが好きだし、映画が好きだし、映画を見に行くのも好き。そして、人でいっぱいになった映画館でみんな一体となって映画を見るのが大好きです」と、映画への愛を語ったうえで、「マーベル映画をシネマだとは思わない人もいます。そして、誰にだって自分の意見を持つ権利があります。誰にだってその意見を繰り返し発する権利があります。誰にだってその意見についての見解を述べる権利があります。そして私はこれから物事がどう展開していくのかを楽しみにしています。ただその間、私たちは映画を作り続けます」と、冷静なコメント。
しかし最後には、「マーベル映画は、とても大きな映画です。そして、非常に高価な映画です。私たちは私たちが持つビジョンを信じているし、キャラクターたちができることを信じています。私たちは成長し、進化し、変化し、ジャンルを盛り上げていく必要があると信じています」と、情熱を持って語った。
ジェームズ・ガン
映画『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』のジェームズ・ガン監督は、自身のTwitterにコメントを投稿。「スコセッシ監督は僕にとって、最も尊敬する映画監督のうち5本の指に入るほどの人物」としたうえで、「人々が作品を観もせずに、彼の『最後の誘惑』を批判した時は憤りを感じたけど、そんな彼が僕の作った作品をそれと同じように批判しているのは悲しい」と憤りをあらわにした。
そして、ギャング映画を多く撮ってきたコッポラ監督の「同じような映画」という発言に対しては、「昔ギャング映画はすべて同じだと思われていたし、時には“浅ましい”とも言われたものです」としたうえで、「スーパーヒーロー映画は、いわば現代のギャングで、カウボーイで、宇宙の冒険者。かつての西部劇やギャング映画とおんなじです。たとえ天才でも、それを楽しめるかどうかはわかりません。それでいいんです」とSNSでコメントした。
カレン・ギラン
映画『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』でネビュラ役を務めるカレン・ギランは米The Hollywood Reporterでガン監督の発言に触れ、「彼は自身の個性やユーモアのセンスを映画に注ぎ込んでいます。それがあるからこそ、作品は非常にシネマチックになるのです。彼はアーティストなのです」と擁護した。
ジョス・ウェドン
映画『アベンジャーズ』のジョス・ウェドン監督は、スコセッシ監督の「感情的・心理的体験を他の人に伝えようとしている人間の映画ではありません」という言葉をツイッターで引用して、「最初にジェームズ・ガンのことを考えました。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』には、彼の温かさや勇気が詰まっています」と、MCU作品を擁護。「(スコセッシ監督を)崇敬しているし彼が言わんとしていることはわかるけれどさ…」と、尊敬する巨匠からの言葉に肩を落とす様子が見て取れた。
ロバート・ダウニー・Jr.
『アイアンマン』シリーズのトニー・スターク役、ロバート・ダウニー・Jr.は、「スコセッシ監督の意見には感謝するよ。何事においても、いろんな見方をする人の意見を聞くことは重要だと思う。そうすることで、議論を集めて前進することができるからね」と冷静な意見を述べたうえで、マーベル映画は「シネマではない」とする意見は「意味をなしてない」とバッサリ。
続けて、「世間では、スーパーヒーロー映画というジャンルが映画というものの芸術性をダメにしたという意見がたくさんあったよね。もしそれが問題だって言うなら、僕はその“問題”の一部になれたことを嬉しく思うよ。だって、(スーパーヒーロー映画というジャンルは)まるで野獣のように大きな足音を立てながら、ほかの競争相手たちをどんどん踏み潰していったんだよ。それって、驚異的なことじゃないか」と、MCU映画の成功を誇らしげに語った。
サミュエル・L・ジャクソン
『アベンジャーズ』シリーズのニック・フューリー役、サミュエル・L・ジャクソンは米Varietyの取材で、「映画は映画。誰もがマーティンの映画を好きだというわけでもないし、それぞれに意見があっていいと思う。それで誰かが映画作りをやめるきっかけにもならないし」と、一歩身を引きつつもはっきりとした意見を述べた。
ナタリー・ポートマン
『マイティ・ソー』シリーズのジェーン・フォスター役、ナタリー・ポートマンは、「どんな映画にだって存在する余地はあると思う。芸術をつくるのにたった1つの方法しかない、なんてことは無い」とコメント。「マーベル映画が人気なのは、本当に面白くて、人々がそういった娯楽を強く求めてるからだと思う。仕事で疲れて帰ってきた後や、日常生活での困難に立ち向かっているとき、みんなが求めるのは、そういうものなんだと思う」と、MCU映画の魅力を述べた。
ポール・ラッド
『アントマン』シリーズのスコット・ラング役、ポール・ラッドは、出演したラジオ番組でマーベル映画はシネマだと思うかと聞かれ、「そうだと思う」と答えた。「マーベル映画は、VFXの効果だけではなく、ちゃんと人間同士の関係性を描いている。」と述べたうえで、「キャラクター感情的・心理的経験を伝えようとしているし、『アントマン』でいえば娘との関係性を描いている。」とコメント。
ジョン・ファヴロー監督
『アイアンマン』シリーズのジョン・ファヴロー監督は、米CNBCに「スコセッシやコッポラは自分にとってのヒーローで、彼らには意見をするだけの権限がある。彼らがこの道を開拓してくれなかったら、僕は監督にはなっていなかった」としたうえで、「(1996年の自分の映画)『スウィンガーズ』の時代から彼らがインスピレーションの源だった。彼らだったら何を言ってもいい」と巨匠たちに敬意を示した。
セバスチャン・スタン
『キャプテン・アメリカ』シリーズのバッキー・バーンズ役、セバスチャン・スタンは、米ヒューストンで開催されたイベントFandemic Tourでコッポラ監督の意見に言及。コッポラ監督について、「現代で最高の映画監督であり、永遠の存在だし、自分にとってのヒーローの一人」と称えつつも、「作品を観た人たちは、『ありがとう』、『この映画に救われた』、『この映画のおかげで気分が晴れた。孤独を感じなくなった』とよくお礼の言葉をかけてくれる。それって、マーベル映画が人々の助けになってるってことなんじゃないの?」とコメント。
そして、「すべての映画が何かしらの形で貢献している。そういうことなんだと思う。人を助けられるなら、僕は支持するよ。それが小さなスクリーンで見られる作品だろうが、iPhoneで見られようが、背後に天才や会社がいようが関係ない。誰かを助けられることなら僕は支持する」と持論を展開した。
ベネディクト・カンバーバッチ
『ドクター・ストレンジ』シリーズのドクター・ストレンジ役、ベネディクト・カンバーバッチは、米Sirius XMのラジオ番組で一連の議論について言及。「マーベル映画のフランチャイズが、王のように全ての映画を乗っ取るというとでも思っているんでしょうかね」とコメントし、さらに「映画製作者はあらゆるレベルで支援されるべき」だといった。
クリス・ヘムズワース
『マイティ・ソー』シリーズのクリス・ヘムズワースは、2023年に英GQとのインタビューでスコセッシ監督とタランティーノ監督の発言について話を向けられた際、「そういうことを聞くとものすごく気分が落ち込みますね」と落胆を示した上で、「これで、僕は自分の2人のヒーローとは仕事をしないということになりますから。彼らは僕のファンではないということですよね」と、自身のヒーローである2人の大御所監督と仕事をする機会が遠のいてしまったとコメント。
続けて、世界的に大ヒットしたMCUというフランチャイズに参加してきたことは誇りだとして、「人々を映画館に留めることになった作品の一部でいられることに感謝しています。これらの映画が他の映画に不利に働いたかについては、僕には分かりかねます。このビジネスやアートの空間は脆いものなのに、お互いに詮索し始めるのは好きではありません」と語った。
クリスは2人の監督について「今でも僕のヒーローですよ」と強調しており、「彼らと仕事をする機会があればすぐにでも飛びつきますよ。僕はただ、この議論に対して意見を言っているだけです。答えを持っている人など誰もいないと思いますが、でも、僕らは努力していますよ」と、彼らとはいつでも仕事をしたいと思っているとも語った。
ウォルト・ディズニー・カンパニーCEO、ボブ・アイガー
MCU映画を配給しているウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOボブ・アイガーは、米Wall Street Journal主催のカンファレンス・イベントに参加した際、コッポラ監督やスコセッシ監督からの意見に対し「困惑している」と述べた。
「私自身も彼らの映画が好きですし、私たちはみんな彼らの作品を観てきたので、とても尊敬しています」と前置きしつつ、コッポラ監督からの「卑劣だ」という意見に対し、「そういうことは大量殺人を犯したような人に対する言葉では」と言った。そして、マーベル映画を作っている人々は、スコセッシ監督やコッポラ監督と同じように映画を楽しんで作っているということをアピールした。
現在活発に意見が交わされている「マーベル映画はシネマなのか」論争。良くも悪くも、映画業界を盛り上げるきっかけにはなっている。
(フロントロウ編集部)※こちらの記事は2023年2月22日に公開された記事に加筆して再投稿したものです。