「エルサにガールフレンドを!」
2013年に公開された前作『アナと雪の女王』は、主人公のエルサの恋愛を描く代わりに、妹であるアナとの姉妹の深い絆を描き、従来のディズニーアニメの軸となってきた「真実の愛」というものが、必ずしも異性間や恋愛をしている人たちの間だけに生まれるものではなく、家族や友人など、お互いを思いやる者同士の間にも存在するものであると印象づけたことが高い評価を得た。
さらに、秘密を抱えて生きるエルサがそれを受け入れ、オープンにした時に幸せを手に入れる姿がLGBTQ+の若者たちが抱える悩みに似ているという理由から、世間では、「ぜひ、続編では、エルサをディズニー初の同性愛者のプリンセスとして描いて欲しい」という声が噴出。このアイディアは、「#GiveElsaAGirlfriend(エルサにガールフレンドを)」というハッシュタグと共にSNS上で拡散され、一大ムーブメントを巻き起こした。
キャストたちがそれぞれの思いを語る
しかし、11月22日公開の続編『アナと雪の女王2』でも、妹アナの恋は描かれるものの、エルサの恋愛に関しては、またしてもノータッチ。
その理由について、同作のジェニファー・リー監督は、「エルサという女性は恋愛ができるような状況にはまったく無い人物」、「たくさんのプレッシャーにさらされ、王国の重みを背負い、自らの特別な力を求める声にも戸惑いを感じています。そんな状況に置かれたエルサが誰かと恋愛をするという展開は、私たちが考えるストーリーの方向性にはフィットしなかった」などと説明したが、それでも鳴りやまない「エルサにガールフレンドを!」のコールに、メインキャラクターの声を担当する英語版のキャストたちが、それぞれの見解を明かした。
ロサンゼルスで行なわれた『アナと雪の女王2』のワールドプレミアのレッドカーペットで米Varietyの直撃を受けたキャストや制作スタッフたちは、この件に関して、三者三様の考えを口にした。
エルサの声を担当したイディナ・メンゼル
「エルサはロマンチックな愛にはフォーカスしないの。私は、この作品の“恋愛だけが全てじゃない”っていうメッセージがすごく気に入ってる。この作品で焦点が当てられているのは、自分自身を愛すことや姉妹の間の愛だから」
アナの声を担当したクリスティン・ベル
「私、気づいたんだけど、それって(世間があれこれ言うべきことではなく)エルサ次第じゃない? 」
クリストフの声を担当したジョナサン・グロフ
「僕は、エルサがほかのプリンセスとは違って、恋愛だけでは定義できないキャラクターだっていうところが好きだな。彼女は自立した女性なんだよ」
アナとエルサの母イドゥナの声を担当したエヴァン・レイチェル・ウッド
「(バイセクシャルを公表している自分自身を示して)私を見てよ。映画の中ではエルサの母親をやってるし、今回の続編ではそういう展開になるとは思えないけど、将来的には、可能性アリだと思う」
ノースルドラ族のリーダーイエレナの声を担当したマーサ・プリンプトン
「私はそうなって欲しいと思ってるわ。もし彼女が望むならね」
楽曲制作を担当したクリステン・アンダーソン・ロペス
「私自身と同じように、エルサというキャラクターは恋愛では定義されないの。エルサは自分の不思議な力がどこから来たものなのか、本当の居場所はどこなのかを模索している。そして、アレンデール王国の重みを一身に背負っているのよ」
リー監督は、『アナと雪の女王2』の公開を前に行なわれた米Yahoo Moviesとのインタビューで、第3作目の制作の可能性について、「私としては、今回が最後の物語になる気がしたけれど、その可能性がゼロだとは言わないわ」とコメントしており、『アナと雪の女王3』の制作に関して意欲的ともとれる発言をしている。
『アナと雪の女王2』はエルサが自らが持つ力の起源を探すために、アレンデール王国での安定した生活を後にし、アナや仲間たちと偉大なる冒険の旅に出る物語。同作の結末や、エルサの心の変化や成長次第では、もしかしたら、今後、彼女の恋愛を描く物語が制作されるかも? そしてその暁には、エルサが同性と恋をすることになるのか、異性と恋をすることになるのか、またもや議論が巻き起こりそう。 (フロントロウ編集部)