映画・テレビ業界人の安全・安心な職場のために
イギリスの映画やテレビ番組を制作する監督たちの業界団体“ディレクターズUK”(Directors UK)は、英国映画協会や英国映画テレビ芸術アカデミーの支援をうけ、ヌードやセックスシーン撮影におけるガイドライン『ヌードとセックスシーンのためのガイドライン:大胆な仕事を安全な環境でおこなうために』を発表した。
この発表の前日、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に出演したエミリア・クラークがヌードシーンが辛くてバスルームで泣いたことがあると告白していた。エミリアは、ヌードシーンの撮影をもっと自分にとって演じやすいものにするため、制作スタッフに要望を出したところ、「『ゲーム・オブ・スローンズ』ファンをがっかりさせたくないだろう?」と言われたという。
ディレクターズUKは、このガイドラインはデリケートなコンテンツ制作に関わる人たちが注意すべき点を明確にリスト化したものでもあると発表。働く職場は安全で、安心して過ごせる場所であり、プロフェッショナルでなければならないという声明を出している。
ガイドラインには、監督、プロデューサー、脚本家、俳優、キャスティングディレクター、スタイリスト、メイクアップアーティスト、配給会社、コーディネーターなど、映画にかかわるすべての人が意識しなければいけないポイントが、わかりやすく書いてある。
例えば、本当に脱ぐ/性行為のシーンが必要なのかということや、演者とオープンな協議をしたかなどをはじめ、キスシーンの接触時間や圧力、「舌」を使うかどうかしっかりと説明をして同意が得られたかなど、とても細かいガイドまで掲載されている。
また、オーディション時にパフォーマーに全裸を要求してはいけないということや、どうしてもヌードが必要な場合は48時間前までに通知すること、撮影された素材は完全に破棄することなども書かれている。
これは、オーディションが性質上、選ぶ側と選ばれる側の力関係に不均衡が生まれ、一部の俳優は「いやなこと」でも仕事を得るために受け入れなければという強迫観念を感じる場合があるためだと、ディレクターズUKはしている。
また、これらのことはアダルト映画の撮影においても同様で、必ず尊重し合いながら進行しなければならないと記されている。
このガイドラインは、米映画プロデューサーだったハーヴェイ・ワインスタインのセクシャル・ハラスメント事件から始まった「#Me Too」運動を受けたもの。
ディレクターズUKの映画委員会委員長であり、ドラマ『ジェネレーション・キル』や『パレーズ・エンド』のスザンナ・ホワイト監督は、キャストがデリケートなシーンの撮影をするときに、身の危険や動画の悪用、または動画が管理されてないという不安にさいなまれるべきではないと、本ガイドラインの声明の発表と共に述べている。
さらに、ディレクターズUKのガイドラインが、ヌードやセックスシーンを撮影するための基準を設定してくれたため、映画やテレビ業界全ての人にとって安全な職場環境を促進するのに役立つだろうと語っている。(フロントロウ編集部)