自殺願望を抱いた過去
シンガーのビリー・アイリッシュは、2015年に音楽ファイル共有サービスのサウンドクラウドに投稿した楽曲「オーシャン・アイズ(Ocean Eyes)」が口コミで評判となり、その後、とんとん拍子にメジャー・デビュー。そして、2019年3月にリリースしたデビュー・アルバム『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』やシングル曲「バッド・ガイ」が世界的に大ヒットを記録し、瞬く間にスターダムを駆け上がった。
以前から自身が抱えるメンタル・ヘルスの問題を赤裸々に語り、自分と同じように悩む人々の励みになればと啓発活動に注力してきたビリーが、じつは、16歳だった2018年に深刻な“うつ”の症状に悩み、自殺願望を抱くほど追い詰められていたという事実を告白した。
米現地時間1月26日に行なわれる第62回グラミー賞で、史上最年少で主要4部門とその他2部門の計6部門にノミネートされたビリーは、同授賞式に先がけて放送された米CBSの特別番組『The Gayle King Grammy Special(ザ・ゲイル・キング・グラミー・スペシャル)』に出演。
大御所インタビューアーのゲイル・キングとの対談の中で、突然の名声や、劇的に変わってしまった周囲の環境などによるプレッシャーや孤立感に押し潰されそうになり、自ら命を絶とうという思考にまで陥ってしまった過去を明かした。
2019年内に収録が行なわれたインタビューで「私は去年すごく不幸せだった」と2018年に自身を襲った心の不調を振り返ったビリーは、「本当に幸せじゃなかった。本当に、楽しくなかった」と、華々しいキャリアの成功の影で鬱々とした日々を過ごしていたことを告白。続けて、「正直言って、自分は17歳まで生きて到達できないと思ってた」と衝撃的なひと言を口にした。
自殺願望を彷彿とさせるこの発言を聞いたゲイルが、「自分で自分を終わりにしたい(I wanna end me)」という歌詞が登場するビリーの楽曲「ベリー・ア・フレンド」は、実体験に基づくものなのかと質問すると、ビリーは「うん」と即答。「それに、韻が良かったからね」と一瞬おどけながらも、滞在先のドイツ・ベルリンで、自ら命を絶ってしまいたいという衝動に駆られたというエピソードを打ち明けた。
「ベルリンのホテルの部屋にたった1人で居たときのことを思い出す。窓がそこにあって…私は泣いてた。そこから飛び降りたら、自分がどんな死に方をするだろうって想像しながら。私は、そうしようとしてたから」
引き止めてくれたもの
“今すぐ窓から飛び降りてしまいたい”という衝動を止めてくれたのは、一体何だったのかというゲイルからの問いに、「ママだよ」答えたビリー。
現在では、母親であるマギーと兄や父といったそのほかの家族のサポート、そして、その後、通い始めたセラピーのおかげで、だいぶ調子が良くなったといい、自らの影響力を活かして、自分と同じ様な問題と闘っている人たちの救いになりたいと決意を新たにしたという。
メンタルヘルスの問題を抱えているファンたちについて、「ファンの子たちの肩を掴んで、『お願いだから、自分を大事にして。自分にやさしくして。自分に親切にして。』って伝えたい。『どうか、その余計な一歩を踏み出さないで。これ以上、自分自身を傷つけないで』って」とメッセージを送ったビリー。
2019年5月にはアメリカの自殺防止団体Seize The Awkwardのキャンペーンに参加し、「苦しんでいる時は、助けを求めることが大事」だと語ったほか、同年11月には、自身が見た”自殺の夢”を題材にした楽曲「エブリシング・アイ・ウォンテッド」をリリースするなど、独自の視点で若者のメンタルヘルスの問題にスポットライトを当て続けている。
ビリー本人が監督を務めた「エブリシング・アイ・ウォンテッド」のMV」
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(フロントロウ編集部)