Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)の抗議デモに乗じて、暴徒化する「白人」を「黒人」が『止める理由』には、彼らが背負わされてきた過酷な歴史があった。(フロントロウ編集部)

黒人の人権を叫ぶデモで暴徒化する異人種

 非武装の黒人が白人警官に殺される事件が過去に何度も起きており、さらに警官のうち多くが不起訴などの処分になっていることから、「Black Lives Matter/ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命にも価値がある)」ムーブメントがかつてない規模で、黒人コミュニティが存在する世界中の地域で発生している。

 かなりの勢いで広がったこのムーブメントで行なわれているのは、平和的なデモ行進やプロテストがほとんどだけれど、一部では暴徒化する市民も。もちろん迫害されている当事者の黒人もいるけれど、黒人以外の人種が暴徒化している光景も数多く目撃されている。

 大勢の白人の青年たちが建物を壊すのを止めようとする黒人の女性の姿を映した映像では、投稿者はこう呟いている。

「この動画を見て心が痛い。彼らの原動力がなんなのか、この白人たちを誰がまとめているのか分からない。とにかく、彼らは私達(黒人コミュニティ)のことを気にしているわけじゃない。1人の女性が泣き出しそうになっているのに、彼らは見ることすらしない」


黒人が暴徒を止める理由とは

 黒人の参加者が暴徒を止めようとするのには、もちろん平和的な抗議デモを願っていることも理由のひとつにあるけれど、別の切迫した理由もある。

 メリーランド州ボルチモアでは、暴動に参加しようとした白人を、黒人の参加者が止めようとする様子が目撃された。切羽詰まった様子で止める黒人女性が話した理由は、暴動を起こしたのが白人であっても、警察は黒人を殺すからというもの。

 これまで、非武装でも白人警官に殺されてきた黒人が置かれる立場は、暴動であっても同じ。彼らが背負わされている重荷がどれほどのものかを感じさせるこの言葉だけれど、聞いていた白人は耳を貸さず、警察による黒人殺害はすでに起きており、どっちにしろ殺される、と発言。黒人の命にも価値があると叫ぶこのムーブメントに参加しようとする白人の発言としては無理解と取れる。この現場からはその後、同一人物かは分からないけれど、暴動に参加しようとしていた白人を黒人が追い出すとこが目撃された。


同様の光景が各地で

 同様のことは、各地で発生している。作家のナンシー・フレンチは、ナッシュビル州のプロテストで起こったことをツイッターで伝えた。

「ナッシュビルは、たった今壊された。投げられたレンガは、すべて白人の手によるものだった。馬のフンをパトカーに投げつけ、車の窓を割った白人に、この男性は叫んだ。『彼ら(警察)は俺たち(白人)を責めるんだぞ!』」

 また、別の黒人女性が撮影した映像では、建物の壁に「Black Lives Matter」と書く非黒人女性の姿が。ここでも、止めに入った黒人が口にしたのは、「彼ら(警察)は私達を責めてくる」というものだった。


暴徒に黒人の命は関係ない

 Black Lives Matterは2012年に、非武装の黒人高校生が自警団ボランティアの男に射殺されたことが発端で起こり、2020年5月に、ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人警官に殺された事件をきっかけに全世界へ広がったムーブメント。しかし、この混乱に乗じて暴動に加わる人々のなかには、その信念がまったくない人もいる。フロイド氏が殺害されたミネアポリスでショップから物を担いで出てきた2人組に、その理由を聞く黒人女性。しかし最後には、なんと「もちろんジョージ・フロイドのためじゃねーよ」というあり得ない言葉を残し、走り去っていった。

 各地の抗議のデモ行進やプロテストでは、いくら市民が平和的に行なっていても警察が暴力をふるい、テレビレポーターまでをも攻撃するという無法地帯となっていた場所も。そんななかで黒人の命の価値を叫び、しかし暴徒の行動が原因でふたたび黒人の命が狙われるかもしれない、という恐怖を持たなくてはいけない状況に置かれている黒人。彼らが背負わされている重荷は、あまりに大きい。(フロントロウ編集部)

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