国際問題だけでなく、国内の問題にも意識を
俳優であり、2012年から国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の特使を務めるアンジェリーナ・ジョリーは、これまでに多くの難民地域を訪れ、とくに子供や女性への人道支援を行なっている。また6人の子供を育てており、第1子マドックスはカンボジアから、第2子ザハラはエチオピアから、第3子のパックスはベトナムから引き取ってきた養子である。
内戦が続くシリアを訪れたこともあるアンジェリーナは、その時に見た現地での現状を、「多くの家族が、毎日、どの子供に少ない食料や薬を与えるかという苦悩と闘っていた」と報告している。しかし自身が暮らすアメリカで、非武装の黒人が白人警官に殺される事件が連続して発生し、黒人の人権を叫ぶBlack Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)が各地で大規模発生していることを受けて、最近では国際問題だけでなく、アメリカ国内の問題を強く意識するようになったと、英Harpers Bazaarのインタビューで明かした。
「国連とともに、世界の戦争の最前線を旅し、本当に問題となっていることは何なのかという考えを吸収する機会を、幸運なことに数年前に得られました。6人の子供を持ち、何が最も重要なのかを日々思い出させられています。しかし約20年にわたる国際的な仕事ののちに起こったこの(新型コロナウイルスの)パンデミックと、現在のアメリカの状況によって、私の母国の中で起こっている苦悩や必要とされていることについて再び考えさせられています。国際的なことと国内のことを、ともに意識しています。その2つは結びついていますからね。世界では7,000万人以上の人々が、戦争や迫害で故郷から逃げなくてはならない。そしてアメリカでは、人種差別や他の差別が存在しています。(アメリカ社会の)私を守るシステムは、私の娘を守らないかもしれません。もしくはその肌の色によっては、他の男性や女性、子供たちも。それは耐えがたいものです」
差別問題には共感でなく改革を
アンジェリーナの娘ザハラは、黒人。これまで白人警官に殺された黒人には女性も含まれており、2020年3月には、新型コロナウイルスが深刻となるなか救急救命士として働いていたブリオナ・テイラーが、自宅で就寝中のところ、“手違い”で警官3名から8発の銃弾を浴びて亡くなっている。
黒人差別が存在する社会では、自分の娘にも差し迫る危険を感じるのは当然。アンジェリーナの母としての心情は想像にたやすい。彼女はそのような社会では、根本的な改革が必要だと強く語った。
「共感だけではなく、構造的な人種差別と責任逃れにしっかりと取り組む法や政策における進歩が必要です。警察による暴力を終わらせることは、始まりにすぎません。このムーブメントは、さらに先までいきます。社会のすべての側面、教育システムから政治まで」
(フロントロウ編集部)