『ハリー・ポッター』シリーズの原作者であるイギリス人作家J.K.ローリング氏の“死亡”を匂わせる「#RIPJKRowling(J.K.ローリングよ安らかに眠れ」)」というハッシュタグがツイッターでトレンド入り。存命にもかかわらず、物騒なハッシュタグが注目を集めている理由とは?(フロントロウ編集部)

「#RIPJKRowling」がトレンド入り 注意書きが添えられる

 シリーズ累計世界興行収入が77億ドル(約8,530億円)を超える大ヒット映画シリーズ『ハリー・ポッター』の原作となった児童文学・ファンタジー小説『ハリー・ポッター』や、そのスピンオフシリーズである『ファンタスティック・ビースト』の原作者として知られるイギリス人作家のJ.K.ローリングが、“亡くなった”ことを示唆するようなハッシュタグ「#RIPJKRowling」が日本時間9月14日深夜頃からツイッターでトレンド入り。

画像: 「#RIPJKRowling」がトレンド入り 注意書きが添えられる

 実際には、ローリング氏の命に別状はないが、記事執筆時点で41万件以上のツイートでこのハッシュタグが使用されている。

 一部には、ローリング氏が逝去したものと信じてしまうユーザーもおり、この異例の事態に、ツイッター社は「No, JK Rowling is not dead(いいえ、J.K.ローリングは死んでいません)」という注意書きを表示した。


亡くなっていないのに「#RIP」の真相は?

 このハッシュタグが頻用されることとなった背景には、ローリング氏が別名義で出版する新作のキャラクター設定が関連している。

 ローリング氏は、2013年にロバート・ガルブレイスの名義で大人向けの犯罪小説『私立探偵コーモラン・ストライク』シリーズを出版しているのだが、その第5弾となる新作『Troubled Blood(原題/トラブルド・ブラッド)』が9月15日に出版。

 本作は、前作までと同様、主人公の私立探偵コモーラン・ストライクが冴えわたる推理で犯罪の核心に迫るストーリーだが、今回の犯人のキャラクターは“女性を殺害するために女装をして犯罪を繰り返すシスジェンダー(※生まれたときに割り当てられた性別と性自認が一致している人)の男性連続殺人犯”とされている。

 ローリング氏といえば、6月初めにツイッターに投稿した「トランスフォビア(※)的」とされる発言が物議を醸し、LGBTQ+コミュニティから反感を買ったほか、『ハリーポッター』や『ファンタスティック・ビースト』の映画出演者たちからも「賛同できない」とコメントを出すほどの大騒動に発展。

--※トランスジェンダー/トランセクシュアルに対するネガティブな感情・思想・行動

J.K.ローリングの「トランスフォビア的」発言とは?

 ローリング氏は、ツイッターを通じて米メディアDevexの『意見:新型コロナウイルス以降の世界を月経がある人々にとってより公平なものにするために』というタイトルの記事をシェア。

 新型コロナウイルスというパンデミックによって得た教訓をもとに、月経にまつわる健康への意識を高め、さまざまな理由により生理用品を入手するのが困難な人々をサポートするシステムを整えるべきだと論じたこの記事では、トランスジェンダー(※1)の男性(生まれ持った体は女性)やノンバイナリー(※2)の人たちも考慮に入れ、「月経がある=必ずしも女性ではない」ということを強調するため、タイトルでも「月経がある人々」という書き方が採用されたが、この表現にひっかかるものを感じた様子のローリング氏は、「“月経がある人”ね。以前はこの人たちを表す言葉があったと思うんだけど。なんだったっけ、誰か教えてくれない?ウンベン?ウィンパンド? それとも、ウーマッド?」と、あえて「女性(ウィメン)」と記載しなかったことに疑問を投じた。

※1:生まれ持った体と心の性が一致しない人。※2:自分の性認識が男女という性別のどちらにもはっきりと当てはまらないという考え

 少し茶化したようにも聞こえるローリング氏のこの発言は、トランスジェンダーに対して差別的だと批判の的に。

画像: 「ハリポタ作者死亡」匂わせるハッシュタグがトレンド入りの理由とは?【#RIPJKRowling】

 ローリング氏は、「もし性別がリアルではないなら、同性同士が引かれることだってない。もし性別がリアルじゃないなら、これまで世界中の女性たちが生きてきた現実が消し去られてしまう。私はトランスジェンダーの人たちのことも知っているし、大好きだけど、性別の概念を取り除いてしまうのは、多くの人たちが自分の人生について有意義に議論をする可能性を奪ってしまう。真実を語るのは悪意ではない」と持論を展開し、トランスジェンダーを嫌悪しているわけではないと説明したが、非難の声は鳴りやまず、一般ユーザーからはもちろん、セレブたちからも異論を唱えるコメントが続出した。

 その後、状況を重く見たローリング氏が、問題視されている発言の真意を説明するべく自身の公式ウェブサイトで2万字に及ぶ長文エッセイを公開。しかし、反省の言葉や自分の意見を取り下げるような記述が一切なかったことから、さらに批判の声が高まっている。

 彼女の作品を愛し、尊敬してきた多くのファンたちが次々に落胆や悲しみ、裏切られたと口にするなか、ローリング氏は、自身のトランスフォビア的な発言を顧みるどころか、持論にさらに上乗せ。“トランスジェンダーの中には危険な人物がまぎれ込んでいる可能性がある”、“性別適合手術を安易に行って後悔している人がたくさんいる”など、根拠のない主張をしたことで、たくさんの人々に背を向けられている。

 そんななかで、ローリング氏が、新作『Troubled Blood』でトランスジェンダーに対する偏見を助長したり、トランスジェンダー嫌悪を呼び起こしかねないキャラクターを“悪役”に設定したことに、ツイッターで多くの人が反発。ローリング氏の「キャリアは死んだ」「作家としては、もう終わっている」、もしくは、「もう、黙っていてくれ(安静にしておいてくれ)」という意味合いで「#RIPJKRowling」というハッシュタグを使用しているというわけ。

 8月中旬以降、ツイッターの更新をストップしているローリング氏は、自身の死を匂わせるようなハッシュタグがトレンド入りしている件については、現時点では反応を示していない。(フロントロウ編集部)

※記事内でシスジェンダー=異性愛者と誤って表記していたため訂正しました。正しくは、生まれた時に割り当てられた性別と性自認が一致している人です。また、この記事ではtransphobiaという言葉を当初「反トランスジェンダー」と記載していましたが、より適切な「トランスフォビア(※トランスジェンダー/トランセクシュアルに対するネガティブな感情・思想・行動)」に修正しました。

This article is a sponsored article by
''.