『ドニー・ダーコ』公開から20年
『ロッキー・ホラー・ショー』、『未来世紀ブラジル』、『ファイト・クラブ』…。熱狂的なファンを持つカルト映画は数多くある。そして2021年1月は、あの作品が公開されてから20年の節目。
ジェイク・ギレンホールが主演を務めた『ドニー・ダーコ』は、2001年1月19日にサンダンス映画祭で初公開された。1度見ただけでは理解できない複雑なストーリーラインでリバースムービーと呼ばれた今作は、銀色のうさぎがドニーに、世界が終わるまであと28日6時間42分12秒だと告げることから始まる。
1度見たら忘れられない独特な世界観の本作だけれど、じつは、映画祭の後も数ヵ月間、配給を担当してくれる会社が見つからなかったという逸話がある。さらにその過程で、リチャード・ケリー監督は映画を30分短くしろと言われたことも。
そこでケリー監督が頼ったのが…、クリストファー・ノーラン監督!
クリストファー・ノーラン監督、鶴の一声
映画ファンであればこの時点で察したかもしれないけれど、ノーラン監督の名前を一気に有名にした映画『メメント』は、『ドニー・ダーコ』の数ヵ月前にベネチア国際映画祭で初公開され、興行成績も製作費を大幅に上回るものとなった。
そこでケリー監督は、『メメント』の配給を担当したニューマーケット・フィルムズの上層部を招待してスクリーニングを行なう際に、ノーラン監督と、ノーラン監督の妻であり映画プロデューサーのエマ・トーマスも呼び、意見をもらうことに。当時の様子を、ケリー監督は米The Ringerのなかでこう振り返っている。
「(映画が終わって)明かりがついた時、クリスと彼の妻は、ニューマーケットのエグゼクティブであるクリス・ボールとウィル・タイラーのほうを向いて、うなずいた。『あなたたちはこれの配給をしたほうが良い』ってね」
『メメント』のノーラン監督とエマにそう言われれば、ニューマーケット・フィルムズも前向きに考えるしかない。もちろん『ドニー・ダーコ』が評価される作品でなければこの展開は望めなかったけれど、スクリーニングに2人も一緒に呼んだケリー監督の判断もナイスなものだったよう。
また、2人は作品の演出にもアドバイスをくれたそうで、「2人は僕にいくつか提案もしてくれた。(映画の途中で表示される)タイトル・カードの下に説明文を入れるというのは2人のアイディアなんだ」とし、作品の雰囲気を邪魔することなく難解なストーリーラインに少しの道案内をする方法は、ノーラン監督とエマのアドバイスによるものだったと明かした。(フロントロウ編集部)