海外のSNSで盛り上がる「フィルター・ドロップ・キャンペーン」
SNSに写真を投稿することが当たり前になっている今、欠かせないものになりつつあるのが、顔や肌を加工するフィルター。
フィルターは、メイクを楽しむような感覚で使えることも多い一方で、フィルターで加工した姿に慣れすぎると、実際の顔に不満を感じて自信を失いやすくなり、整形への強い願望を抱くことや身体醜形障がいに繋がることがあるなど、近年メンタルヘルスへの影響が懸念されている。
※身体醜形障がいとは、自分の容姿を酷いと感じ、自分の身体や美に極度にこだわるようになること。
実際に英慈善団体のGirlguidingが行なった調査では、11~21歳の回答者のうち39%もの人が、実際の顔と加工した顔に差があることにストレスを感じているというデータが出ている。そんななか海外のインスタグラムを中心に注目を集めているのが、フィルターを外そうと呼びかけるムーブメント「フィルター・ドロップ・キャンペーン(#FilterDrop campaign)」。
フィルター・ドロップ・キャンペーンは、フィルターを使わずに撮ったセルフィーや、フィルターのありなし両方のセルフィーをコラージュした写真を、「#FilterDrop」というハッシュタグをつけてSNSにアップするというもの。昨年あるユーザーが1人で始めたこのムーブメントが徐々に広まり、大きな変化を呼んでいる。
ムーブメントが広告のガイドラインまで動かした!
フィルター・ドロップ・キャンペーンをスタートさせたのは、イギリスに住むメイクアップアーティストでありモデルのサーシャ・パラリ。サーシャは、「大きく分けて3つの目標を達成するために、加工フィルターをやめようと呼びかけるこのムーブメントを発足させた」と英Stylistに説明。
サーシャが掲げた目標とは、SNSのユーザーにフィルターを使うことによるメンタルヘルスへの影響の大きさを知ってもらい、ありのままの美しさに気づいてもらうこと、SNSの運営側に対してもフィルターに依存する人が増えないように措置をとってもらうこと、そして美容ブランドやインフルエンサーに対しては、製品をプロモーションする画像にフィルターを使わないよう改善してもらうこと。なかでもサーシャが注力したのが、美容製品を広告する画像について。
サーシャは、「世界的なコスメブランドの製品を有名なインフルエンサーがSNSで宣伝していて、その写真はフィルターで加工されたものだった。さらにその写真を企業がリポストしているのを見て、これはよくないと感じた」と自身のインスタグラムでコメント。使うことであたかも加工後の写真のような効果が得られると思われかねないだけでなく、フィルターで過度に補正された美容広告があふれることで、自身とのギャップに悩んだりメイクやスキンケアに依存したりする恐れがあるからだという。
そう感じたサーシャは、フィルター・ドロップ・キャンペーンに賛同したユーザーの増加や「#FilterDrop」のハッシュタグの広がりもアピールしながら、英広告基準協議会(ASA)やブランドにメッセージを送って改善を依頼。その努力の末、一部のブランドは依頼を受け入れてくれたほか、なんとASAが定める広告のガイドラインまでも改善されることに。
新たなガイドラインでは、ブランドや影響力の大きいインフルエンサーの美容製品に関する広告投稿では、効果を誇張するようなフィルター加工をしないことを推奨し、仮に加工する場合にはその旨を記載することを求めるようになった。
1人のメイクアップアーティストがスタートさせて、大きな影響力を持つようになった「フィルター・ドロップ・キャンペーン(#FilterDrop campaign)」。それでもサーシャは、「これはまだ始まりにすぎない」と語り、より多くの人にありのままの美しさに気づいてほしいと話している。(フロントロウ編集部)