『ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド』のシーズン2で、監督が全員女性となった。(フロントロウ編集部)

『TWD』スピンオフ制作陣の判断

 10年以上にわたって続くドラマ『ウォーキング・デッド』は、スピンオフドラマに『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』と『ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド』があり、映画版も制作中。

 ショーランナーをアンジェラ・カンとスコット・M・ギンプルが務めるオリジナルシリーズでは様々な人種、性別のキャラクターが登場することも魅力の1つで、そのスピリットは、スピンオフにも受け継がれている。

 『ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド』のショーランナーであるマット・ネグレテは、シーズン2で各話の監督を全て女性監督に任せたという!

 米EWのインタビューでマットは、最終的な目標は、様々なバックグラウンドを持った才能ある監督たちを候補にすることだとしたうえで、2020年に放送されたシーズン1では、半分を女性監督に、半分を男性監督に任せたかったと明かす。しかし制作スケジュールの変更によって、その目標は達成できなかったという。

 そしてシーズン2の監督を決める時に、男性監督とも女性監督とも面談をしたというマット。そのうえで、ベストだと感じて採用した監督は、女性たちだったそう。

 「過去数年間、ほとんどが男性、もしくは女性より男性のほうが断然多い部署会議などに、かなりの数参加してきました。だから最終的に、私の判断は様々な面から正しかったと感じています。それに、才能ある監督たちはその個性を各話に持ち込み、成功させてくれましたし」

女性が増えることで全体の環境も変わる

 映像作品の監督という立場から女性が排除されてきたことは、業界で長年問題となっていることで、例えば『ゲーム・オブ・スローンズ』では、全73話のうち女性監督はたった1人、女性脚本家はたった2人だった。

 しかしマットは、監督が全員女性になったことで、作品だけでなく、撮影における労働環境にも良い影響があったと話す。

 シーズン2では、監督だけでなくプロデューサーや監督助手、アートディレクターといった重要なポジションにも女性が多数いたそうで、それを見た他のスタッフたちが、スタッフたちにとってそれがどれだけ意味のあることかと、マットに伝えてきたそう。

 「これは言わなくてはいけません。多くの人々が、これがどれだけ価値があるのかと話してくれたことは、とても価値のあることです。私のなかにある多様性、公平、包括性の価値を強化してくれました。そしてそれは映画業界だけの話でなく、すべての仕事においてです」

 ハリウッドで長年活躍する俳優のシャロン・ストーンケイト・ブランシェットなどは、過去には撮影現場に女性が自分1人しかいなかったという経験を振り返り、現在、女性が増えていることを嬉しく思っていると話してきた。そのことからも、職場では女性を1人起用すれば良いという話ではなく、女性の比率を考えることも、環境づくりとして大事であることが分かる。

 ちなみに、かつて『ウォーキング・デッド』でプロデューサー兼脚本家を務めたグレン・マザラは、その前に手掛けた作品で、脚本家チームの男女比を変えること自体が困難だったうえ、チームに女性が加わっても、男性が女性の話を遮ることなどが頻発し、対策を取ったと明かしている。

 『ウォーキング・デッド』ユニバースの大ヒットには、問題意識を持ち、行動を起こしてきた制作陣の能力が隠されていた。

(フロントロウ編集部)

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