キアヌ・リーブスを見ていたクエンティン・タランティーノ監督が、突然怒りに震えた? 一体何があったのか。(フロントロウ編集部)

キアヌ・リーブスを見ていたら…、怒り?

 ハリウッドきっての“良い人”として知られる俳優のキアヌ・リーブスだが、彼の存在が、ある有名監督を苛つかせたことがあった。

 映画『パルプ・フィクション』や『イングロリアス・バスターズ』などで知られ、熱狂的なファンを持つクエンティン・タランティーノは、2003年に公開された『キル・ビル Vol.1』のスクリーニングに、キアヌと、『レオン』や『フィフス・エレメント』などで知られるリュック・ベッソン監督を招待したという。そして、キアヌが映画を鑑賞している姿を見て、ふとこんな思いが湧いてきたそう。

 「キアヌが(映画を)見ているのを見て、突然思ったんです。私のキャラクターたちは全員リアルだと。コンピューターはない。私はあのクソみたいなものにうんざりしている。この作品は昔ながらのカメラを使ったものなんだ。もし私がコンピューターゲームのようなバカげたものがしたかったのなら、家に帰ってペニスを任天堂に突っ込んでる。彼のテーマには本当に興奮する。CGIというバカげたものはシネマの破滅の象徴だ。映画は今クソみたいに高すぎて、アートをクソみたいに殺してる。それの成長具合を見ていると、今後10年でシネマは本当に殺されるだろう」

画像: クエンティン・タランティーノ監督

クエンティン・タランティーノ監督

 英Empireのインタビューで、タランティーノ監督が放送禁止用語を使いまくってこの話をしたのは、2003年のこと。そう、キアヌの代表作である『マトリックス』3部作が完結した年。CGIを使った映画作品の台頭は、まったくもってキアヌに原因があるわけではないが、それほどまでに『マトリックス』3部作が世界を席巻したということだろう。

 タランティーノ監督にそんな感情を抱かせたキアヌは、その後も『地球が静止する日』や『コンスタンティン』といったVFXを使った映画に多く出演してきた。そのことからも分かるとおり、キアヌはVFXを使用した作品が好きで、過去にはこのような思いを語っている

 「ファンタジーやサイエンスフィクションを探求することは、なんというか、このような物語のなかで起こるモチーフというのは、多くの場合、僕たちが住む世界をテストしているような感じがします。僕にとって、現実逃避をさせてくれた一方で世界を見る視点や世界への理解を明確にする手助けとなってくれたこういった物語に参加することは、熱意やサポートを意味することなんです」

画像: キアヌ・リーブスを見ていたら…、怒り?

VFXを駆使した映画に拒否感を覚える監督は少なくない

 一方で、VFXを駆使した映像作品に拒否感を覚える監督は、タランティーノ監督だけではない。

 とくに、MCU映画をめぐっては、『タクシードライバー』や『ギャング・オブ・ニューヨーク』などで知られるマーティン・スコセッシ監督が、「上手くできているし、与えられた状況のもとで俳優たちはベストを尽くしているとは思います。しかし、正直言って、一番近いと思うものはテーマパークですかね。あれは人間の感情、心理的な経験をまた別の人間に伝えようとする映画ではない」とコメント

 『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』などで知られるフランシス・フォード・コッポラ監督は、「シネマは私たちに何かを教え、悟りや知識やインスピレーションなど何かを習得させるべき」ものだとし、MCU作品はそれに当たらないとした。

 2人の監督の発言はMCU作品に向けられたものであり、VFXを使用したすべての作品を否定するものではないが、2人もタランティーノ監督のように人間ドラマにフォーカスした作品を多く撮ってきたタイプ。MCU作品以外のSF作品には、すごくポジティブな感情を抱いているとは予想しがたい。

 自分たちが制作したものこそがシネマ作品でアートであるとするのは傲慢だが、物語を作ってしまうほど内側に情熱を持つ監督たちのこだわりこそが各作品の質にも繋がっているため、そのような意見もまた重要だろう。

(フロントロウ編集部)

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