『バービー』画期的な賃金設定
世界中で親しまれているバービー人形からアイディアを得た実写映画『バービー(Barbie)』は、マーゴット・ロビーがバービーを演じ、バービーの恋人であるケンをライアン・ゴズリングが演じる。
本作は、フェミニズム映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のグレタ・ガーウィグが監督を務め、これまで女性が活躍する作品に多く携わってきたマーゴットが製作も務めることから、フェミニズム作品になることは確実。そして本作では制作過程でも公平さが追求されたよう。
米Varietyによると、マーゴットとライアンが本作で得たギャラは、同額の1,250万ドル(約17億円)!
ハリウッドにおける男女の賃金格差、改善せず
主演のマーゴットがライアンより高くないのかという疑問を抱く人もいるかもしれないが、俳優に対するギャラの金額はそこが難しいところ。
ライアンは子役出身でキャリアが長く、これまでに制作された主演映画の数や、アカデミー賞などの映画賞にノミネートされた経験も多い。しかしマーゴットもアカデミー賞などにノミネートされた経験は複数回あり、主演映画も多い。一方で、そういった経歴の数で決めてしまうと、女性が主演の映画が制作されること自体が少ないハリウッドでは、構造的に女性に支払われる金額が少なくなるという問題もある。また、『バービー』においてはマーゴットは製作にも携わっているため、出演料以外での収入もあると予想される。
ハリウッドでは、主演であっても、それが女性であれば助演の男性俳優よりも出演料が少ないことはある。そのため、『バービー』が男女同賃金であることは画期的だと言える。
今回、俳優たちのギャラを発表した米Varietyのランキングは、出演料以外の収入も含んでいるケースもある。1位のトム・クルーズは、他の俳優たちから抜きんでて収入が多く、1億ドル(約138億円)。しかしこれは、『トップガン マーヴェリック』が近年稀にみる大ヒットを記録し、出演料だけでなく、興行収入からの取り分などを合わせた金額であることを考えれば納得。
しかし、そのなかで女性俳優の数が非常に少ないことは指摘すべき。
Varietyのランキングで上位16人は全員が男性。同額17番目としてライアンとマーゴットの名前が入ってくる。ランキングでは26名の俳優の名前が出ているが、そのうち女性俳優は5名だけで、下から1番目から3番目がすべて女性。(下から3番目には、他に3名の男性俳優が同額でランクインしている)。
また、そのなかに有色人種の女性はいない。黒人男性は5名がランクインしている。ちなみに、テレビ作品におけるランキングでは、30名のうち10名が女性。
ここ数年で多くの関係者が声をあげ、労働環境や待遇の改善のために動いてきた。変化が起こっているのは事実だが、まだまだ先は長いと思わざるを得ない。
(フロントロウ編集部)