ハリー・スタイルズ、1人で会場の全員を泣かせる
映画『ブックスマート』で世界中の映画好きを夢中にさせたオリヴィア・ワイルド監督の最新作『ドント・ウォーリー・ダーリン』は、11月11日に日本公開。
フローレンス・ピューが主演を務めた本作は、1950年代を生きるアリスが主人公。彼女が、夫ジャックや街に住む男性たちの“仕事”について疑問を持ち始めた時に事態は急転する…。経営者兼ライフコーチであり、男性たちの支持を集めるフランクが進める「世界を変える」ことが目的の“ヴィクトリー・プロジェクト”とは何なのか？ ジャックをハリー・スタイルズが、フランクをクリス・パインが演じる。
予告編では、中身がない卵、浴室の鏡に映る“動かない”自分、迫りくる窓と壁に挟まれるアリス、ラップにくるまれたアリスの顔や引きずられる人の足といった不気味な映像が映し出され、オリヴィア監督が、前作の青春コメディとはまったく異なる作品を制作したことが理解できる。
あらすじからはフランクが悪夢の原因であると予想されるが、あるシーンの撮影では、現場にいた人全員を泣かせたほどの狂気に満ちた演技をしていた人物がいるという。それは、ハリー！ 監督が米Rolling Stoneのインタビューで振り返った。
「それは変なシーンでした。ファシストについての引用がいっぱいで、動揺させるほどの男性の怒りがありました。彼はフランクとともにステージ上にあがり、『この世界は誰のものだ？俺たちのものだ！』という気味の悪いスローガンを何度も何度も復唱するというシーンでした。かなり暗いものです。でもハリーはそれをさらに上のレベルにまで持っていった。彼はその瞬間に入り込んでおり、そのセリフを群衆に向かって叫び始め、雄たけびをあげていた。私たちがそのシーンに期待していたものなんかよりも、かなり激しかった」
たった1人で、現場にいた人全員を泣かせる気迫というのはどれほどのものだったのだろうか。ハリーとともにステージ上にいたクリスも、ハリーの演技に押されて、彼に舞台を譲ったという。監督は、「彼が野性動物のようにステージ上を歩き回ったので、カメラオペレーターはそれを追いました。私たちはモニター越しに驚きを隠せませんでした。ハリーすらも驚いたと思います。あれこそ俳優にとって最高の瞬間です。完全に自己がからだの外に出ていくというね」と、彼の演技を絶賛した。
ハリーの演技力のエピソードからは、本作の主演であるフローレンスが代表作の『ミッドサマー』の号泣シーンで2時間を費やし、あの鬼気迫るシーンを作り出したことを思い起こさせる。『ドント・ウォーリー・ダーリン』の予告編から、『ミッドサマー』と似た雰囲気を感じ取っているファンは少なくないため、本作の内容と仕上がりに期待が高まる。
クリストファー・ノーラン監督による2017年の映画『ダンケルク』で俳優としてデビューした彼は、その後MCU作品にカメオ出演するなど、俳優としてのキャリアも築き始めている。しかしまだまだ出演本数は多くないにもかかわらず、そこまでの演技を見せたというのには才能を感じさせる。
2022年に公開される彼の出演作は、11月にAmazonプライム・ビデオで配信される映画『僕の巡査』と本作。しかしハリーによると、今後は当分音楽業に専念したいそうで、俳優業は一旦休憩するつもりだという。残念だが、まずは『ドント・ウォーリー・ダーリン』の公開を待ちたい。
（フロントロウ編集部）
