『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督とティモシー・シャラメがふたたびタッグを組んだ最新作『Bones and All』は“カニバリズム”がテーマ。アーミー・ハマーが“食人願望”で業界を干されたことについて、監督が遂に口を開いた。(フロントロウ編集部)

アーミー・ハマーの騒動と『Bones and All』に偶然の関連性

 2017年に公開され、低予算で制作されたにもかかわらず世界的大ヒットを記録した映画『君の名前で僕を呼んで』は、ルカ・グァダニーノ監督がメガホンを取り、ティモシー・シャラメアーミー・ハマーが恋に落ちる青年たちを演じた。

 そして、監督とティモシーがふたたびタッグを組んだ作品『Bones and All』は、ヴェネチア国際映画祭でのプレミアを控えている。本作には、『君の名前で僕を呼んで』のティモシーの父を演じたマイケル・スタールバーグも出演している。

 本来であれば、監督とティモシーの再タッグということで注目を集めるはずだった本作だが、本作のテーマと、発表されたタイミングが悪かったため、“別の問題”との関連性でも注目を集めることになってしまった。『Bones and All』は、人が人を食べる“カニバリズム”とラブストーリーが入り混じるホラー・ラブストーリーで、制作が発表されたのは2021年1月の終わり。

 しかし、このたった数週間前の2021年1月上旬に、『君の名前で僕を呼んで』のメイン俳優であるアーミーが“食人願望”を綴ったダイレクトメッセージが流出し、大問題となっていた。その後もアーミーの危険な性的願望と、女性に関する様々な問題が発覚し、彼は出演予定だった作品をすべて降板し、所属エージェントとも契約を解除した。

画像: アーミー・ハマーの騒動と『Bones and All』に偶然の関連性

 アーミーのこの騒動の直後だったため、カニバリズムがテーマの『Bones and All』を『君の名前で僕を呼んで』の監督がティモシーをメインで制作するというニュースには、“なぜ?”“タイミングがすごい”といったような反応を示すファンも多かった。また、アーミーの騒動に口を閉ざしていた彼の元妻であるエリザベス・チェンバースも、本作のニュースについては「言葉が出ない」とコメントしていた。

ルカ・グァダニーノ監督、アーミーは新作に関係ない

 もちろん、2015年に発表された同名小説を基とする『Bones and All』が、アーミーの騒動を意識したわけではない。米Deadlineのインタビューでアーミーの騒動について遂に口を開いたグァダニーノ監督も、ファンからの反応は「理解できませんでした。SNSで皮肉を言われ始めて気づいたんです」と明かす。そして、アーミーの騒動によって映画が伝えようとしているメッセージが無視されていることに苦言を呈した。

 「このプロジェクトは元々は有名な小説で、2020年に(脚本家の)デヴィッド・カイガニックが私に持ちかけるまで数年もの間進められてきたものです。権利をはく奪され、社会の隅で生きているキャラクターたちによってすぐに心が動かされました。それ以外との関連は、私が関与していないSNSのなかにだけ存在している。デジタルなスキャンダルと、この映画を作りたいという私たちの願いの間に関係はなく、呆れるばかりです。私は、この映画とまったく関係のないことについてよりも、映画が何を伝えているのかについて話したい」

 『Bones and All』の予告編。主演は映画『WAVES/ウェイブス』のテイラー・ラッセルが務める。

監督、アーミーの騒動自体にも苛立ち

 また、監督は、アーミーの騒動自体についても眉をひそめた。

 「これは、私たちが共に働き、お互いに関わっていく方法への新しい態度における根本的必要性に対する茶番でもあるでしょう。女性は歴史的に家父長的な権利によって低い立場に置かれてきました。その不公平に建設的に取り組み、真の変化をもたらすことが重要です。SNSにおけるスキャンダルは、建設的に取り組むことをしない。この非常に重要な平等のための戦いが誤った方向に引っ張られるということに、大きな苛立ちを覚えます。最も重要なことを、スキャンダルによって低下させてはいけない」

 監督はこう話すが、社会的に弱い立場にいる人々は声をあげるのが難しく、SNSによって連帯できたり、声をあげたりしてきたのは事実。一方で、ただのスキャンダルで終わってしまうのは残念なことでもある。『君の名前で僕を呼んで』は続編も考えられていたが、実際に制作されるのは厳しそう。

(フロントロウ編集部)

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