ディズニー最大のファンイベント「D23 Expo 2022」にて、新作の実写映画『リトル・マーメイド』より初の歌唱映像が解禁された。黒人であるハリー・ベイリーの起用にはアンチから疑問を呈する声もあったが、映像解禁時の会場の様子を、現地で取材中のフロントロウ編集部がレポート。

『リトル・マーメイド』よりハリー・ベイリー演じるアリエルの歌唱映像が初解禁

 カリフォルニア州アナハイムにて行なわれているディズニー最大のファンイベント「D23 Expo 2022」にて、2日目となった現地時間9月9日、既に発表されていたディズニーの新作実写映画『リトル・マーメイド』より、ハリー・ベイリー演じる“新アリエル”が歌唱するシーンを含む、トレイラー映像が初めて解禁された。

 1989年に公開されたアイコニックなアニメ映画『リトル・マーメイド』の初の実写版となる本作の主役に抜擢されたのは、姉妹デュオとしてシンガーとしても活動している、クロイ&ハリーのハリー・ベイリー。黒人であるハリーの起用が発表された当時は、歓迎する声が多くあがった一方で、ツイッターで「Not My Ariel(私のアリエルじゃない)」というハッシュタグが一時ワールドトレンド入りするなど、白人ではないハリーがキャスティングされたことに反発する声も一定数寄せられてきた。

 今回、ついにハリーが演じるアリエルの姿や歌声がベールを脱いだが、「D23 Expo 2022」に世界中から集まったディズニーファンたちはどう受け止めたのか? 会場では限定で、ハリーが歌う主題歌「パート・オブ・ユア・ワールド」の歌唱シーンの全編が贅沢にも公開されたのだが、映像の放映が終わった時には、会場が割れんばかりの拍手で包まれた。

 シンガーとしてはビヨンセも認める実力の持ち主であるハリーは、「パート・オブ・ユア・ワールド」で綴られる歌詞の感情を見事に表現して演技力の高さも示していたし、「あなたの世界に行きたい」と切実に歌い上げるその姿は、世界中で愛されてきたアリエルそのものだった。「パート・オブ・ユア・ワールド」が放映された後には、サプライズでハリーも会場に登場したが、その時にはさらに大きな拍手と、悲鳴にも近い大歓声が響いた。

 ちなみに、D23 Expoの会場には思い思いのコスプレに身を包んだファンが多く訪れていて、もちろんアリエルのコスチュームを着ていたファンも大勢いたが、白人のファンだけでなく、多様なファンがアリエルに扮していた。今回ハリーがアリエルを演じて黒人のレプリゼンテーションを高めることは、既にあるこうした光景を映画にも反映するということに過ぎない。

 初公開された「パート・オブ・ユア・ワールド」と、初めてアリエルとして登場したハリーに寄せられた万雷の歓声と拍手は、歌唱力や演技力に対してだけではなく、彼女がレプリゼンテーションを高めてくれることを祝福し、感謝する意味も込められていたはず。

 これまでには製作者たちもハリーのアリエル役を擁護してきており、ディズニー傘下のABCテレビジョン・グループの子会社が展開するケーブルTVチャンネル「フリーフォーム(Freeform)」は以前、そもそもアリエルは人間ではなく人魚なので、白人や黒人という概念がないと指摘。その上で、仮に原作者と同じデンマーク人であったとしても、白人のデンマーク人もいれば黒人のデンマーク人もいるので「アリエルが黒人でもおかしいことはない」と持論を展開し、黒人の血を引くハリーがアリエル役の座を手入れたことに異論を唱える人たちを一蹴した。

 そして、こうした前向きな反応は、こちらもD23 Expoの会場で映像が初解禁された、実写版『白雪姫』のセクションの際にサプライズで登場した主演のレイチェル・ゼグラーに寄せられた、大きな拍手にも同じことが言えると思う。ラテン系であるレイチェルが白雪姫役に抜擢された際にも、人種を理由にキャスティングに意見を唱える声が少なくなかったが、D23 Expoの会場であるアナハイム・コンベンション・センターを包んでいたのは、ハリーのアリエルと、レイチェルの白雪姫を心から歓迎する前向きな空気だった。(フロントロウ編集部)

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