ドレイクが21サヴェージと共同でリリースした楽曲「Circo Loco」のなかで、トリー・レーンズがメーガン・ジー・スタリオンを銃撃した事件を揶揄したとして物議に。ヒップホップ界の重鎮であるジェイ・Zも巻き込むこととなった騒動を解説。(フロントロウ編集部)

ドレイクが「Circo Loco」でメーガン・ジー・スタリオンの銃撃事件を揶揄

 ラッパーのドレイクと21サヴェージが共同プロジェクトとなるニューアルバム『Her Loss(ハー・ロス)』をリリース。これまでに何度もコラボしてきた2人がついに共同でアルバムをリリースしたとして大きな注目を集めるなか、収録曲「Circo Loco」の歌詞が物議を醸している。

 議論の的となっているのは、「Circo Loco」でドレイクがラップしている、「この女は撃たれたって嘘ついてるけど、まだスタリオン(stalion)のまま/彼女はジョークすら理解しないくせに笑ってやがるんだ」という歌詞で、この歌詞がラッパーのメーガン・ジー・スタリオンに対する揶揄ではないかとして批判が寄せられることとなった。

 ご存知の方も多いと思うが、メーガンは2020年7月にラッパーのトリー・レーンズから銃撃されるという悲劇に見舞われた。

画像: トリー・レーンズとメーガン・ジー・スタリオン

トリー・レーンズとメーガン・ジー・スタリオン

 銃撃を受けてメーガンは搬送先の病院で検査を受け、両脚の足首に弾丸の破片が撃ち込まれていたのが見つかり、摘出手術を受けることに。手術は無事に成功して、大部分は取り除けたものの、一部摘出できなかった破片もあり、それらは今も脚に残っているままだとメーガンは明かしている。

 黒人女性であるメーガンは当時、黒人男性のジョージ・フロイド氏が警察官によって窒息死されられた事件があって間もない時期だったこともあり、怖くて最初は本当のことを打ち明けられなかったとして、警察には当初「ガラスを踏んでしまいました」と証言したことを明かしていた。

 また、トリーは半自動式小火器を用いた暴行罪と、車両に装填された銃を隠し持っていた罪で起訴されているが、一貫して無罪を主張している。

メーガン・ジー・スタリオンがドレイクに反論

 「Circo Loco」がリリースされるや否や、多くのファンがドレイクのラップをメーガンに結びつけたが、メーガン本人もこの曲のリリース当初、「ラップのなかでみじめな陰謀論と私を結び付けないで」とツイートして反応。「stalionっていうのは、背の高いガッシリとした女性を意味するスラングだよ」ともツイートして、“stalion”という言葉が持つ意味を強調した。

 しかしながら、当初はドレイクの楽曲と少し距離を置いていたメーガンだったが、その後、「注目集めのために私の銃撃事件を持ち出すのはやめて! 一体いつから女性への銃撃をジョークにすることがクールになったの? 特にアンタたちみたいなラッパーたちはダサすぎる! 靴や服はボイコットするくせに、仲間の男が黒人女性を虐待したときには、一緒になって女性を侮辱する」とツイートして、仲間の男性ラッパーたちによる女性への暴力には甘い姿勢を批判した。

ジェイ・Zはメーガン・ジー・スタリオンの味方か

 ヒップホップにおいては銃撃事件のような悲劇がこれまでに何度も起きているが、メーガンが指摘しているように、メーガンがトリーに銃撃されたと報じられた時には、男性ラッパーが銃撃された時のようなリアクションは、男性ラッパーたちのコミュニティからはほとんどなかったと言える。現地時間11月1日にはミーゴスのテイクオフが銃殺されるという悲劇が起きたが、この時には多くの男性ラッパーたちが追悼。ドレイクも、テイクオフの葬儀に出席して彼を追悼するために自身の公演を延期することを発表した。

 死とケガではレベルが違うと思うかもしれないが、家庭内暴力や親密なパートナーからの暴力は黒人コミュニティでは大きな社会問題のひとつ。全米反家庭内暴力連合によると、この類の暴力は被害者の85%が女性で、黒人女性は白人女性に比べてこのような暴力によって死亡する可能性が約3倍も高いという。黒人男性も当事者となって解決に取り組む問題なのだ。

 今回の騒動を受けて、黒人コミュニティのエンターテイメントを扱う米BET Newsでホストを務めるマーク・ラモント・ヒルは「もしドレイクが、男性ラッパーが撃たれたことか、もしくは男性が誰か撃たれたことを揶揄する“クレバー”な言葉遊びを使った楽曲をリリースしていたら、彼を擁護している人たちも激怒していただろうね。まあ、もちろん、彼がそんな曲をリリースするわけないのだけど」とツイート。男性ラッパーと女性ラッパーに対するダブルスタンダードを皮肉った。

 ヒップホップのコミュニティにおけるそうした状況があるなかで、メーガンが所属するマネージメント会社ロック・ネイションの代表を務める、重鎮ラッパーであるジェイ・Zが見せたとされる行動が話題に。

画像: ジェイ・Zはメーガン・ジー・スタリオンの味方か

 複数のユーザーによれば、ジェイはマークがドレイクを揶揄し、ヒップホップのコミュニティにおける男性優位な状況を指摘した先述のツイートをいいね(直後にいいねを解除)したという。現在はジェイのいいねの欄に当該の投稿はないが、実際にいいねしたのが事実であれば、ジェイのような大物の男性ラッパーがメーガンを支持したことが持つ意味は大きい。

 銃撃事件をめぐる次の審問は12月に予定されており、メーガンの弁護士を務めるアレックス・スピロ氏は米TMZに対して次のようにコメントしている。「この事件での被害者は彼女なのです。(メーガンを嘘つき呼ばわりする)人々は真実が明るみになった時に恥をかくことになるでしょう。それも大恥を。それは彼らを悩ます種になり、汚点として彼らに刻まれるでしょう」。(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.