スティーヴン・スピルバーグ、自伝映画の製作を恐れていた
自伝的映画『フェイブルマンズ』で作品賞(ドラマ部門)と監督賞を受賞したスティーヴン・スピルバーグは、「スピーチを用意すると負けるというジンクスがあるからスピーチは用意してきませんでした」と緊張気味に監督賞の受賞スピーチをスタート。
「17歳のころから、この話を伝えることから隠れていました」と明かすと、パンデミックと妻からの後押しを経て『フェイブルマンズ』を製作したことについて、「誰もが私をサクセスストーリーだと思っています。誰もがそれぞれで得た情報をもとにお互いのことを判断します。しかし、勇気を出して自分のことを皆に話すまでは、誰も本当のあなたを知らない。私は、いつその話をするのかをずっと考えていました。そして74歳くらいになったとき、『そろそろした方がいい』と思ったのです」とスピーチ。
さらに作品賞のスピーチでは、「私はジョン・カサヴェテスの映画でプロダクション・アシスタントをやったことがあります。だから私はプロダクション・アシスタントにはとても親切にします。なぜならそれがどんな気持ちかわかるからです」という教訓を共有にした。
ミシェル・ヨー、“シャット・アップ”と喝して伝えた60歳女優の物語
3分を超えるロングスピーチをしているときに“巻いてください”という音楽が流れると、それを弾いていたピアニストに「シャット・アップ。私ならあなたをボコボコにできちゃいますから。本当です」と言って笑いを集めたミシェル・ヨー。
「私は去年、60歳になりました。女性ならば分かると思いますが、月日が経ち、(年齢という)数字が大きくなるうちに、機会は少なくなっていきます。その当時私は自分に『あなたはよくやったじゃない。スティーヴン・スピルバーグ、ジェームズ・キャメロン、ダニー・ボイルといった素晴らしい人たちと働けたんだから』と言い聞かせていました。そんな時、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』という映画に出会えたのです」と語り、キャリア初のゴールデン・グローブ賞となる主演女優賞(コメディ/ミュージカル部門)をもたらした映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に感謝した。
エディ・マーフィー、成功の法則を教えてくれると思ったら...
長年の功績が称えられてセシル・B・デミル賞を受賞したコメディアンのエディ・マーフィー。
「成功、繁栄、長生き、そして平和を得るために従っていける計画というのがあることを知ってほしい。私はキャリアの間ずっとそれに従ってきました。これら3つのことをしてください。税金を払うこと。他人の問題に首をつっこまないこと。そして、ウィル・スミスの妻の名前を口に出すんじゃねえ!」
成功の法則を語ると見せて、ウィル・スミスのオスカービンタ事件についてのジョーク(ウィルは「俺の妻の名前を口に出すんじゃねぇ!」と激怒していた)だったというオチでスピーチを締めて、やはり最後までコメディアンだった。
オースティン・バトラー、エルヴィスネタで笑わせる
映画『エルヴィス』でキャリア初のゴールデン・グローブ賞となる主演俳優(ドラマ部門)を受賞したオースティン・バトラー。ステージからブラッド・ピットやクエンティン・タランティーノといった憧れの先輩に挨拶すると、会場にいたエルヴィス・プレスリーの遺族に「あなたたちのハート、思い出、家に私を迎え入れてくれてありがとうございます」に感謝。
このあたりで“巻いてください”を伝える音楽が流れはじめると、「せめて、(エルヴィスの曲)『サスピシャス・マインド』を奏でてくださいよ」というジョークを炸裂。そして最後に、エルヴィス・プレスリー本人に向けて「あなたはアイコンであり、反抗者。あなたを愛しています」とメッセージを送った。
ジェニファー・クーリッジ、ブラピも噴き出す爆笑スピーチ
61歳でキャリア初のゴールデン・グローブ賞となる助演女優賞(リミテッド&アンソロジー、テレビ映画)を受賞したジェニファー・クーリッジは、「小さな役で私を生きながらえさせてくれた人たち」としてライアン・マーフィーやマイケル・パトリック・キング、さらに『キューティ・ブロンド』のリース・ウィザースプーンに感謝。
そういった人たちが数話や数作で起用してくれたことでキャリアが続いたと語ると、映画『アメリカン・パイ』の続編に出演を続けたことにも触れて、「あれは搾れるだけ搾り取った」とコメント。これには客席のブラッド・ピットも思わず吹き出していた。
アンジェラ・バセット、亡き共演者を追悼して黒人の誇りを語る
映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で助演女優賞を受賞したアンジェラ・バセットは、亡き主演俳優チャドウィック・ボーズマンに触れると、「私たちは喪に服した。私たちは愛した。そして私たちは毎日、チャドウィック・ボーズマンの光と魂に包まれていたのです」と語り、「私たちは、黒人の団結、リーダーシップ、愛が、カメラの向こう側、後ろ側、そして前側でどのように見えるかを世界に示しました」と、作品への誇りを述べた。
サンティアゴ・ミトレ、民主主義に対して強い訴え
非英語作品賞は、1985年にアルゼンチンで起きた軍事独裁政権に対する裁判をもとにした映画『アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~』が受賞。
サンティアゴ・ミトレ監督は、「独裁政権以来、アルゼンチンでより良い民主主義を築くために戦ってきたすべての人々と、この賞を共有したい」と述べると、最後に、「私たちは民主主義のために戦い続けなければいけないと思います」とした。
ライアン・マーフィー、アンダードッグたちをヒーローに
特別賞キャロル・バーネット賞を受賞したライアン・マーフィー。プロデュースしたドラマ『POSE/ポーズ』の俳優ビリー・ポーターから、「私が映画とテレビ業界というもので成功できるか探るためにハリウッドにやってきたとき、ハリウッドはまだ、この喜びにあふれた黒人ボーイを受け入れるつもりはないと初日に分かりました」と振り返ったうえで、そんななかで自分を発掘してくれたライアンに感謝。
紹介を受けてステージにあがったライアンは、ビリーをはじめ、自分が愛した俳優たちへの感謝を並べると、「ハリウッドにおける私の使命は、私が憧れながらもポップカルチャーの中で見ることができなかった、見えない人や愛されない人たちをヒーローにすることでした」とスピーチした。
ジャスティン・ハーウィッツ、より平等な機会を求める
映画『バビロン』で最優秀作曲賞を受賞したジャスティン・ハーウィッツは、「自分は、音楽こそ自分の進むべき道だと幼いころに気づく機会があったことに感謝しています。親と、音楽のクラスがあった公立学校に感謝しています。非常に才能があるのに、それを見極める機会を得られないたくさんの人たちのことをよく考えます。だから、みんなに機会が拡大されることは非常に重要だと考えています」と、機会の平等性について訴えた。
マイク・ホワイト、とりあえず酔っぱらっています
リミテッド&アンソロジーシリーズ、テレビ映画部門の作品賞はドラマ『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』シーズン2が受賞。クリエイターのひとりであるマイク・ホワイトは、シーズン2の舞台にかけてイタリア語でスピーチを用意していたそうだが、「イタリア語でスピーチしようと思っていましたが、酔いすぎているので(やめます)。だって、食事がなかったんですよ! 着いたら『もう食事は終わりです。お出しできるものはありません。飲み物はいかがですか?』という感じだったので」と、本当に酔っている様子のスピーチで笑いを集めた。
ギレルモ・デル・トロ、アニメ論を展開
映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』でアニメ賞を受賞して、「何よりも、みなさんと対面でここにいられることが嬉しい。私たちは戻ってきた!」とコロナ禍を経た通常開催を喜んだギレルモ・デル・トロ監督。「今年はシネマにとって良い一年でした。さまざまな規模の作品、野心のある作品、大胆な挑戦をした作品、親密な映画がありました。それはつまり、アニメーションにとっても良い一年だったことも表します。なぜなら、アニメーションはシネマだからです」と言うと、会場から声援があがった。
キー・ホイ・クァン、30年も抱えた恐怖を明かす
映画『グーニーズ』や『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の子役として1980年代に活躍した後、ハリウッドからは距離を置いていたキー・ホイ・クァン(ジョナサン・キー)。俳優復帰映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で助演男優賞を受賞すると、子役時代にお世話になったスピルバーグ監督に感謝。
そして、「年を重ねるうちに、(子役時代の)あれで終わりだったのかと疑問を持つようになりました。あれはたまたま運が良かっただけなのかと。私はこれまで何年も、自分にはもう何もできないのではないか、何をしても子どもの頃の栄光を超えることはないのではないだろうかという思いに怯えていました。ありがたいことに、それから30年以上が経ったときに、2人の男性たちが僕のことを考えてくれたのです」と語り、映画の監督であるダニエル・クワンとダニエル・シャイナートに感謝を伝えた。
M・M・キーラヴァーニ、伝統をしないつもりが伝統を繰り返す
日本でも大ヒットした映画『RRR』で最優秀主題歌賞を受賞したM・M・キーラヴァーニは、「この賞を他の誰かに捧げますと言うのは定番なので、このような賞をもらうときはそのような言葉は使わないつもりでしたが、今回は残念ながら伝統を繰り返させてください。なぜなら、私の言葉は本気ですから」という言い回しをして、『RRR』のチームに感謝を述べた。
(フロントロウ編集部)