米企業マース インコーポレイテッドがM&M'Sのアイコニックなキャラクターであるスポークスキャンディの使用を無期限で停止することを発表。その背景には、カルチャー・ウォーというアメリカが抱える問題があった。経緯を解説。(フロントロウ編集部)

女性キャンディの靴が世論を二分した経緯

 今アメリカでは、2大政党である共和党(保守派)と民主党(進歩派)の支持者の溝が過去にないほど深まっており、なんでもカルチャー・ウォーに発展してしまっている。カルチャー・ウォーとは、保守主義と進歩主義の価値観がぶつかり合い争いが起こる文化戦争のこと。例えば最近では、健康被害を減らすためにガスストーブからIHヒーターに移行したらどうか、というテーマさえ保守と進歩派を二分するカルチャー・ウォーになってしまっている。

 そして、そんなカルチャー・ウォーの真っただ中にいるのがマーズ社のM&M’sのキャラクターたち。

画像1: 女性キャンディの靴が世論を二分した経緯

 元々は、1990年代に初めて登場したスポークスキャンディ。当時は、レッドとブルー、イエローという男性キャラクターと、グリーンという唯一の女性キャラクターというラインナップがあった。男性キャラが3種いるなか女性キャラが1人であることと、唯一の女性キャラが女性のステレオタイプを具現化したような性格とルックスだったことには、以前から変更を求める指摘があった。

 その後、2012年になってラインナップにもう1人の女性キャラクターとなるブラウンが追加。さらに、昨年1月にはグリーンもそのデザインを見直されて、靴がヒールつきのロングブーツからスニーカーに変わったほか、ブラウンもハイヒールからローカットのヒールへと履く靴が変わった。

 「靴が世論を二分」という文章が指しているのはこの時のこと。多様性を求める進歩派からはこの決断が歓迎された一方、グリーンやブラウンの靴が変わったことが保守派の怒りを買うことに。米保守派メディアのFOX Newsの人気司会者で、ワクチンに関する不誠実な情報を語り続けて強く批判を浴びているタッカー・カールソンは、「M&M'Sはすべてのカートゥーン・キャラクターが非常に魅力的ではなく、完全にアンドロジナス(※俗に言われる男らしさや女らしさに当てはまらない特徴のこと)であるまで満足しない」と激怒し、「完全に魅力を感じなくなったとき、私たちは(男女)平等を達成するのです」とコメント。カールソン氏は普段、差別や偏見に声を挙げる人に対して“snowflake(※過度に気分を害しやすいという意味のスラング。蔑称)”と呼んでいるが、この時はカールソン氏が「靴ごときに怒ってsnowflakeだな」と失笑を浴びた。

画像2: 女性キャンディの靴が世論を二分した経緯

 さらに、2022年9月には、「受容と包括性をレプリゼンテーション」する新たな女性キャラクターとして、パープルもラインナップに追加。今年に入ってからは、3月8日の国際女性デーに向けて、グリーン、ブラウン、パープルという3人の女性キャラクターからなる、史上初の“女性キャラクターのみを起用したパッケージ”が販売されることも発表された。

 これは、現状を打破しているあらゆる女性たちを祝福する目的で作られたもので、購入することで寄付することもできるという取り組み。この限定パッケージ商品は売上1個につき1ドル、合計50万ドル(約6,500万円)が、音楽界での女性の活躍を支援している団体She Is The MusicとWe Are Moving the Needleとの戦略的パートナーシップを通じて、女性支援に役立てられる予定だという。マース社ではそれに加え、総額30万ドル(約4,000万円)を、Female Founder CollectiveとGeena Davis Institute On Gender In Mediaと、現状を打破している女性たちに寄付するという。

 M&M'Sを買うごとに社会貢献ができるという取り組みになっているのだが、保守派からはこの取り組みにも批判が。靴が変わった際に“セクシーなままがよかった”と批判したタッカー・カールソンは、国際女性デーに向けたパッケージについて「ウォーク」だと批判。。保守派のテレビ局FOXではコメンテーターをスタジオに呼び議論が繰り返され、『Gutfeld!』という番組ではグリーンを「ビッチ」と呼ぶ保守派コメンテーターも現れ、再び左派からの失笑を誘った。

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