同性婚を認めると「社会が変わってしまう」。岸田文雄首相の言葉が波紋を広げている。では、同性同士の結婚を認めた他の国では、合法化後に社会はどう変わったのか? 調べてみた。(フロントロウ編集部)

同性婚の合法化と偏見・差別の減少はリンクしている

 同性婚を認めるということは、LGBTQ+の人々の基本的人権を国家が尊重していることを意味する。そしてアメリカの事例からは、同性婚の合法化と社会における偏見の減少には強いリンクがあることが分かっている。

 アメリカでは同性婚の合法化が各州で始まる前からLGBTQ+に対する偏見は減少傾向にあったが、同性婚が合法化された後、その偏見は2倍のスピードで減少していたことがマギル大学心理学部の教授が行なった調査で分かり、公共政策が社会規範を形成して個人の態度を変えることができる、ということが明確となった。

画像: 同性婚の合法化と偏見・差別の減少はリンクしている

 そして、社会が寛容になることは多くの良い影響を生み出す。例えば、ハーバード公衆衛生大学院とジョンズ・ホプキンズ大学が2017年に発表した研究では、同性婚が合法化された州に住む若者は、合法化されていない州に住む人に比べて自殺を試みる可能性が著しく低いことが分かった。

移住は?税収は? 同性婚の経済的効果

 さらに他国では、同性婚の合法化は大きな経済効果にも繋がっている。

 日本では、「結婚するカップルが一組増えることによる経済波及効果は658万円(リクルートブライダル総研)」というデータがあるが、同性同士の結婚でも経済効果が見込めることが、アメリカの例から見て取れる。

 アメリカでは2004年に米国議会予算局が、“連邦政府が同性婚を認めた場合は年間約4億5000万ドルの財政赤字が削減される”と試算したが、2011年に同性婚を州で許可したニューヨーク州の最大の都市ニューヨーク市のマイケル・ブルームバーグ市長(当時)は、「結婚の平等な権利は、私たちの街をよりオープンで包容力のある自由なものにするとともに、雇用の創出や経済の支援にも役立っています」と語り、わずか1年でニューヨーク市だけで2億5900万ドル(約200億円)の経済効果があったことを発表した。

画像: 移住は?税収は? 同性婚の経済的効果

 結婚による経済効果でいうと、まずは結婚イベント関連があるが、アメリカでは2015年に全州で同性婚が合法化されてからの5年で結婚関連イベントだけで38億ドル(約4兆5600万円)の経済効果があったと、UCLA法科大学院のウィリアムス・インスティチュートは推定。1年間で推定4万5,000人の雇用を支えたという。

 そして同性婚は、移住という変化もアメリカでもたらした。州ごとにルールが異なるアメリカでは2003年のマサチューセッツ州を皮切りに同性婚が各州で認められはじめ、2015年に最高裁の判断で全州にて合法化されるまでに37州で認められていた。同性婚の合法化と州間の移住を調べた研究では、同性婚を合法化した州へ移動する同性愛者の移動が恒久的に増加したという結果に。法整備がLGBQ+の人々が居住しやすいエリアを拡大し、それが雇用機会の拡大にもつながる、という連鎖を起こしたのだ。

※ドル為替は当時のレートで計算。

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