同性婚を認めると「社会が変わってしまう」。岸田文雄首相の言葉が波紋を広げている。では、同性同士の結婚を認めた他の国では、合法化後に社会はどう変わったのか? 調べてみた。(フロントロウ編集部)

スウェーデンでは法整備後に出産数が増加

 同性愛者のための法整備が進められた国では、子どもを持つLGBTQ+が増えている。

画像: スウェーデンでは法整備後に出産数が増加

 同性カップルを法的に認めてから長い歴史を持つスウェーデン。1995年に同性カップル向けの登録パートナーシップ制度が始まり、2009年に同性婚を法制化。2003年に登録パートナーが共同で養子縁組を出来るようになり、2005年には同性と同棲関係にある女性も医療補助人工授精が可能になった。パートナーシップや結婚の権利が認められたことに合わせて生殖関係の支援も進んだ結果、スウェーデンでは、2000年の法整備後に結婚後5年以内に子どもを産んだ同性愛者の女性の数が急増した。

 日本では現時点で、提供精子を用いた人工授精は「法的に婚姻している夫婦」と日本産科婦人科学会が限定しているため、同性愛者の女性が人工授精により子どもを持つことにはハードルが設けられている。同性婚が認められてこのルールが変われば、ドナーからの提供をもとに子どもを持つLGBTQ+は増えるだろう。さらに、合法化が社会での偏見を減らすことにより、養子縁組や里親などの制度の利用ももっと開けてくるのではないだろうか。

LGBTQ+の親を持つ子どもは不幸せ? 世界のデータがそれを否定

LGBTQ+と子どもの議論になると、“子どもには男親と女親が必要”という声が出ることが多いが、世界中のデータがそれを否定している。

 オーストラリアでは30年にわたる研究をもとに、同性の親を持つ家庭で育った子どもたちは、感情面、社会面、教育面で同世代の子どもたちと同様に良好であるという結果が2017年に発表された。また、メルボルン大学の研究では、同性カップルを親に持つ子どもの方がそうでない子どもに比べて健康全般と家族との結束力が約6%高いという結果が出た。研究者いわく、家庭内の結束力は、同性カップル家庭の方が家庭内でジェンダーロールがなく平等に役割分担をする傾向にあるからではないかと見ている。さらに最近では、アメリカで「生まれたときから同性の親に育てられた子どもは、異性の親に育てられた子どもよりも高校を卒業する確率が4.8ポイント高い」(Mazrekaj, De Witte, and Cabus)という研究結果が発表されるなど、同性カップルは親として不適合だという差別を覆すデータが各国で確認されている。

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