誰もが共感できるキャラクターを描く上で大切なこと
自身がこれまでに手がけてきたキャラクターは全て特別なので、特に思い入れのあるキャラクターは選べないとしつつも、「シンバは本当に特別でしたね。シンバに取り組むのは本当に楽しかったです」と、1994年公開の映画『ライオン・キング』で担当した主人公のシンバは特に印象に残っていると語ったマーク氏。「それから私が取り組んだすべてのプリンセスについても、彼女たちをスクリーンに登場させる作業はすごく楽しかったですね」と続けた。
アイコニックなキャラクターたちを何人も生み出してきたマーク氏だが、キャラクターを創る上で最も難しいのは、それぞれのキャラクターを個性的に描くことだという。
「それぞれのキャラクターが持つユニークな個性を皆さんに伝わるように表現することは、いつだってチャレンジでした」と明かしたマーク氏は、「プリンセスたちの個性や、物語のなかでどんなことをしたかということで、彼女たちの魅力が伝わっていたら嬉しいですね」と続けた。
誰もが共感できるキャラクターを創る上で大切なのは、「リアリティ(真実味)のある存在にすること」だとマーク氏は語る。「皆さんの夢を壊したくないのですが」とファンを思いやりつつも、「シンバは実在するライオンではありませんが、彼はリアリティのあるライオンです」と、自身が生み出したシンバについて語ったマーク氏は、そうした描き方は自身が入社するより遥か前に誕生した、1942年公開の『バンビ』に登場する動物たちから一貫しているものだと強調する。
「バンビは実在する鹿ではありません。しかしながら、バンビはリアリティのある鹿ですよね。私たちがディズニー作品で創り出してきたすべてのキャラクターについても、同じことが言えるのです」。
そして、キャラクターのリアリティを反映するために何より重要なのは、キャラクターたちにシーンごとでどう「演技」させるかだとマーク氏は語る。「彼らは絵であり、セル画であり、コンピューター上のイメージですが、アニメーションになる過程で、ストーリーのなかで起きる様々な状況に対する反応の仕方によって、オーディエンスの皆さんにとって共感してもらえるような存在になるのです」とマーク氏。人間の俳優が映画に向けて役作りをするのと同様に、アニメーターにとってキャラクターを創ることは「パフォーマンスを創る」のと同じだと続けた。
「私がアニメーターとして仕事する上で目標としているのは、私が創るキャラクターをユニークで、個性的で、人々を惹きつける存在にすること。そして、その動き方や演技の仕方、それからキャラクターたちの思考回路についても、オーディエンスの皆さんが共感できるような、リアリティのあるものにするということです」。