2023年に創立100周年を迎えるウォルト・ディズニー・カンパニー。世界一有名なキャラクターであるミッキーマウスを筆頭に、ディズニー社が100年という長きにわたって世界中の人々から愛され続けている多くのキャラクターを生み出し続けてこられた理由とは? 『ライオン・キング』のシンバや『リトル・マーメイド』のアリエル、『美女と野獣』のベル、『アラジン』のジャスミン、『プリンセスと魔法のキス』のティアナなど、ディズニーを代表するキャラクターを生み出し続けてきた伝説のアニメーター、マーク・ヘン氏が来日したタイミングで貴重なインタビューを行うことができたので、ディズニー社の歴史の半分近くをアニメーターとして支えてきたマーク氏に、ディズニー・アニメーションの極意を訊いた。(フロントロウ編集部)

テクノロジーの発展と共に歩んできたディズニー・アニメーション

 ディズニー100年の歴史は、アニメーション技術の発展と共に歩んできた歴史でもある。例えば、1989年に公開(日本では1991年に公開)された、マーク氏が手がけた最初のプリンセスにして、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオにとって実に30年ぶりのプリンセス映画となった『リトル・マーメイド』は、スタジオが初めてコンピューターソフトを使用して制作した長編アニメーション作品だった。

 手描き=2Dのアニメーターとして入社したマーク氏は、近年も『シュガー・ラッシュ』とその続編『シュガー・ラッシュ:オンライン』、そして『アナと雪の女王』とその続編『アナと雪の女王2』などにリード2Dアニメーターとして参加したり、後進の3Dアニメーターたちの指導にあたったりと、スタジオで3Dアニメーションが主流になってきたなかでも、経験豊富な2Dアニメーターとして重要な役割を担い続けている。

画像1: ©️フロントロウ編集部
©️フロントロウ編集部

 2018年には、ミッキーマウスのスクリーンデビュー90周年を記念して、ミッキーマウスの公式肖像画家を務めるという名誉にあずかったマーク氏は、発展するテクノロジーは「フィルムメーカーたちが創りたいと願う物語を支えてくれるもの」と語る。

 「手描きアニメーションとコンピューター・アニメーションの大きな違いは、ツールという部分に過ぎません。ツールが変わったということなのです。紙とペンから、マウスを動かす作業へと変わったわけですが、その根底にある哲学に関して、つまり、アニメーションや、キャラクターにどう命を吹き込むかというところの哲学は変わっていないと思っています」

 マーク氏が語るこの「哲学」 の部分こそ、“誰もが共感できるキャラクターになっているか”という考えである。「それこそが私がCGアニメーターたちに伝えていることです」とマーク氏は続けて語る。

 「“ポーズはわかりやすいものになっている?”、“シーンに必要な感情を伝えられている?”、“きちんと意思疎通ができている?”、“アニメーションが過度になっていない? 不足していない?” などといったことです。つまり、私が確認するポイントというのは同じなのです。手描きアニメーションと同じことをコンピューター・アニメーションにも当てはめることができます。ツールが違うというだけなのです。なので、私がキャリアの初期の頃に2Dアニメーションで学んだのと同じ原則を、3Dアニメーターたちが学んでくれたら嬉しいですね」

画像1: © Disney
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 アニメーションを創るテクノロジーは時代を経て発展してきたが、手描きとCGのどちらが良いということはないとマーク氏。「芸術面で2Dのほうが少しだけコンピューター・アニメーションよりも優れている面もあれば、反対に、コンピューター・アニメーションが手描きでは不可能なことができるという面もあります。なので、どちらにも良い面があるのです」

 「私が手描きアニメーターとして学んだ原則はCGアニメーターたちの作業にも直接当てはまります。それがCGアニメーターたちにきちんと伝わっていることを願っていますし、スタジオのベテランアニメーター『ナイン・オールド・メン』など前の世代から受け継いだレガシーを、彼らにはまたそれを次の世代へと伝えていってほしいですね」と続けて、手描きの頃から引き継ぎ続けてきた「原則」の部分はこれから先の世代にも繋いでいってほしいと語った。

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