アルバムの曲をルエルが解説! コロナ禍の経験も明かす
―最新シングル「アイ・ドント・ワナ・ビー・ライク・ユー」は、とてもアップビートで軽快な“F-You(くそくらえ)”ソングですよね。
ルエル:ええ、その通りです。これは私なりのF-Youソングというか、何もわかっていないのにこうした方が良いと言っている人に対する曲です。この曲は、コンサートでパフォーマンスしたら面白いなと思ったんです。純粋に、ライブで歌ったら楽しそうだから作った。観客が僕に向かって“F-You!”って感じで歌ってくれたら最高に面白いですよね?
―気候変動についての「レット・ザ・グラス・グロウ」のようなダークな曲もありますね。
ルエル:これはコロナ禍のなか、世界はどこに向かっているのか?と考えて作りました。このテーマについて言える、最も正直なことは何か? と考えました。“世界を救おう、木を植えよう、持続可能であろう”という曲にすることもできましたが、僕らの世代とってそれは聞きなれたメッセージです。もちろんメッセージとしては正しいけど、深く切り込めないと思いました。結果的に、地球を救うには自分自身を捧げるしかないというテーマに至ったのです。コロナのなかで落ち込んでいた気持ちが原点になった曲ですね。
―人生においてロストになってしまってもオッケーだと歌う「セット・ユアセルフ・オン・ファイア」は、コロナ禍を経験した全員が共感できる曲です。コロナ中はどのようにして過ごされていたのですか?
ルエル:オーストラリアは国境を開けたり閉じたりを繰り返していて、変な状態でした。コロナが始まってオーストラリアに帰国したときは、1日に1時間のエクササイズが許可されていました。だから、私は毎日、5人の親友とサーフィンに行っていました。それが私の人生でした。音楽は一切やらなかったし、曲も書かなかった。みんな宙ぶらりんの状態だったんです。僕としては、3年ぶりにやっと故郷に帰ってきたようなものだから、今は曲を書くなんて考えられないって感じでした。いつまたツアーでいなくなるか分からないから音楽活動はストップしたのですが、その期間がどんどん長くなっていき、そろそろ制作に戻らないとやばいかな~と思い始めた(笑)。そこで、家に小さなスタジオを作り、Zoomでライティング・セッションをして、2020年末にEP『ブライト・ライツ、レッド・アイズ』をリリースしたんです。
―15歳だった2018年に来日した際のインタビューで、EP『レディ』にかけて、苦手な辛いものに挑戦する準備(レディ)ができたと言っていましたが、有言実行となりましたか?
ルエル:なりました! やはり辛いものを楽しむ準備はできていたのです。あの頃はまだ子どもでしたが、僕も大人になりました(笑)。マネージャーのジョエルが辛いもの好きで、つねに最も辛い食べ物を探しているのもあるかもしれませんね。今は…これから辛いラーメンを食べに行きたい!
―20歳になった今、経験してみたいことはありますか?
ルエル:ウィスキーへの愛を覚醒させたいです。このアルバムには、「ジャパニーズ・ウィスキー」という曲があります。曲名は、日本のウィスキーが大好きなプロデューサーのPJが提案したもので、名前の響きがかっこよくて好きだったが、僕はウィスキーがあまり好きじゃないという問題があった。ウィスキー好きだったらなあと思っているなか、数日後にスタジオで、「何かを好きでありたいと願うが、実際にはまだそのために十分に成熟していない、あるいはその準備ができていない、という比喩として書いたらクールじゃないか」という考えをPJが提案しました。そうやって、恋愛をしていて成熟していない、準備が整っていないことを歌う「ジャパニーズ・ウィスキー」が完成しました。僕自身は、普段はマルガリータやメスカル、それにビールを飲んでいますが、心はウィスキーを好きになる準備ができています。
―今回のツアーでは、訪問国の一部でアルバムの楽曲の映像を撮っていますよね?
ルエル:シンガポールではカラフルな色合いの道で「ライ」の映像を撮影して、バンコクでは、「イフ・アンド・オア・ウェン」の「鉛筆で書くのは飽きた 君をインクで記したい」という歌詞に合わせてタトゥーパーラーで撮影をしました。マニラは渋滞で有名なので、「シッティング・イン・トラフィック(※渋滞にはまっているという意味)」を撮り、明日(※取材は来日公演前日)は東京のバーで、日本のウィスキーを飲みながら「ジャパニーズ・ウィスキー」を撮る予定なんです。