なぜ彼女は生まれた日に“死亡”とされたのか。亡き姉と瓜二つの女性が現れた実話『グルスポングの奇跡』


スウェーデン・アカデミー賞〈グルドバッゲ賞〉最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した『グルスポングの奇跡』が、9月4日から日本で公開される。家の売主が亡き姉と瓜二つだった。その偶然の再会から、家族が封印してきた真実が転がり出てくる実話だ。(フロントロウ編集部)
遊園地の事故から、その家探しは始まった
スウェーデン在住の妹カーリを訪ねていたマイは、遊園地の乗り物で事故に遭ってしまう。怪我の療養中、気分転換にと2人が始めたのが、スウェーデンの小さな町グルスポングでの家探しだった。

ようやく理想の家を見つけた2人は、売主の女性オーウラグと対面した瞬間、息を呑む。目の前に立っていたのは、何年も前に自ら命を絶った姉リータと瓜二つの顔だった。ノルウェー人であるこの姉妹は、家探しの途中で“神の啓示”のような絵画にも行き当たっていた。偶然は、そこで終わらなかった。
誕生時に「死亡」と偽られた、もうひとりの双子
やがて明らかになるのは、偶然では片づけられない事実だ。オーウラグはマイとカーリの異母姉妹であり、しかもリータの双子の姉だった。

背景には、戦時下の北欧が抱えた事情がある。1940年代、ナチス・ドイツ占領下のノルウェーでは双子が人体実験の対象として狙われる危険があり、オーウラグはその運命から逃れるために誕生時に“死亡”と偽られ、別の家族に託されたのだという。ひとりの人間の存在が、家族の記録から消されていたことになる。
だが、奇跡の再会に酔いしれたのも束の間だった。家族の間にはやがて軋みが生まれ、封印されてきた痛ましい真実が少しずつ表に出てくる。この出会いは3人の人生だけでなく、亡きリータの死の真相までも揺るがしていく。
「映画にしてほしい」と頼んだのは、当事者だった
本作が特異なのは、企画の出どころだ。あまりに奇跡的な偶然が重なったことに驚いた姉妹自身が、この出来事を記録に残すためマリア・フレデリクソン監督に「映画にしてほしい」と依頼し、そこから制作が始まっている。撮る側が見つけてきた題材ではなく、撮られる側が持ち込んだ物語なのだ。
監督のフレデリクソンは、これまで女性の視点から社会や人間関係を見つめる作品を数多く手がけてきた人物で、本作が待望の長編デビュー作となる。スウェーデンとノルウェーの国境を越えて紡がれる再会の記録は、やがて信仰と血縁、そして「真実とは何か」という根源的な問いへと発展していく。ドキュメンタリーでありながらスリラーのように緻密で、痛切に人間的。偶然の出会いが“奇跡”へ、そして“混乱”へと変わっていくにつれ、見る者は現実と虚構の境界を見失っていく。
作品公式サイトによると、『グルスポングの奇跡』は9月4日(金)より池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿ほかにて全国順次公開。日本版メインビジュアルと特報も解禁された。
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