NYセントラル・パークの観光馬車、2028年に廃止へ――背景に18歳観光客の死亡事故


ニューヨークのセントラル・パークを走る観光馬車が、2028年に姿を消すことになった。160年以上続いてきた街の名物に、市議会が幕を引く決断を下した背景には、今年6月に起きた死亡事故がある。(フロントロウ編集部)
2028年6月から禁止に
英BBCによると、ニューヨーク市議会は現地時間10月22日、セントラル・パークの観光馬車を禁止する法案を可決した。禁止措置は2028年6月から施行される。ゾーラン・マムダニ市長もこの法案を支持しており、職を失う御者らの転職支援を含む移行計画の策定に関わるという。
馬車の料金は20分間で72.22ドル、以降10分ごとに28.89ドルが加算され、観光客に人気のアクティビティとして定着してきた。公園内で働く御者は約200人。ニューヨークを旅行した際に乗ったことがある、あるいは乗ってみたかったという人もいるかもしれない。
きっかけはインドから訪れた18歳の観光客の死
法案は「ロマンチ法」と名付けられている。その名前は、今年6月に家族とともにインドから観光に訪れ、事故で亡くなった18歳のロマンチ・マハジャンさんに由来する。米NBCニューヨークによると、御者が写真を撮るために席を離れた際、馬が突然走り出し、マハジャンさんは馬車から投げ出されて頭を打ち、亡くなった。
事故はこれだけではない。公園を管理する非営利団体セントラル・パーク・コンサーバンシーによると、直近13か月間で馬が関係するトラブルは7件発生している。今年1月には馬が車道に飛び出し、複数台の車が絡む事故が発生。5月には驚いた馬が別の馬車に衝突して馬車が横転し、御者が病院に搬送された。マンハッタン区長室によると、1982年以降、公園で働く馬40頭が死んでおり、死因には熱中症や衝突事故などが含まれる。今年も1頭が有毒植物を食べて死んだという。
「馬は働く動物」と御者は反発
一方、御者たちは強く反発している。6年間にわたって御者として働いてきた28歳の女性は、BBCに対し、「愛馬とはもう働けないと言われて、どうやってこの子の健康を守ればいいの?」と訴え、「馬は働く動物」だと語った。12年間働いてきた男性御者も「妻や子どもより馬と過ごす時間のほうが長い。それなのに虐待していると言うのか」と怒りをあらわにしている。
御者を代表する運輸労組は、十分な補償が保証されないまま仕事を奪われると批判している。法案では馬を食肉処理場に売却することを禁じる一方、所有者が引き続き馬を飼育することは認めている。しかし、引退した馬の受け入れ先を支援する資金が不足しているとの懸念も出ている。
ニューヨークの馬車をめぐる動物愛護の議論は、19世紀にまでさかのぼる。1866年、馬車を引く馬が激しく殴られる光景を目撃したヘンリー・バーグが、米国動物虐待防止協会(ASPCA)を設立したことは、同市における動物愛護運動の歴史を象徴する出来事のひとつだ。観光客の間でも「ニューヨークの文化の一部。残してほしい」「騒がしい公園で一日中立たされるのはかわいそう」と意見が分かれるなか、長年親しまれてきた街の名物は、約2年後にその歴史に幕を下ろすことになる。

















