スロバキア出身のシンガー・ソングライター、アデラが、デビュー・アルバム『PRIMA』を9月4日にリリースすると発表した。同時に届いた新曲は、母親が18歳だった頃の一枚の写真から生まれている。(フロントロウ編集部)
母の写真の背後にあった、密輸されたポスター
ユニバーサル ミュージックによると、アルバムの発表に合わせて公開された新曲は「Ain’t In LA」。重低音の808サウンドに、グリッチーなドラムと、チョップド&スクリュードされたボーカルが重なる。歌っているのは、ポップスターになるためにスロバキアを離れて以来、めまぐるしく動いてきた自分の歩みと、そこで巡ってきた機会への感謝だ。
この曲の出発点は、故郷を訪れた際に見つけた一枚の古い写真だった。写っていたのは18歳の母親。背後の壁は、アメリカのポップカルチャーのイメージで埋め尽くされている。
「祖父がドイツからこっそり持ち込んだポスターだったんです。それを見て、『私の母のように、夢を抱きながらも、その価値を認めてもらえない美しい女の子たちが、世の中にはたくさんいる』と思いました」とアデラは振り返り、こう続けている。「この曲は母や、世界中にいる何十億人もの、きっと私よりもクールな女の子たちのために書きました」
ミュージック・ビデオはFred Gervaisが監督し、撮影地には母の写真が撮られた国、スロバキアの首都ブラチスラバが選ばれた。生まれた場所を離れる歌を、生まれた場所で撮っている。
オーディションに落ちた彼女が、自分の名前でアルバムを出す
アデラの経歴は、いわゆるポップスターの王道からはかなり外れている。幼い頃からバレエの訓練を受け、11歳でプロの道へ。14歳でウィーンやロンドンの名門アカデミーに渡ったが、音楽への熱が抑えられず、そこでバレエを降りる決断をしている。
英語はYouTubeのメイク動画やインタビューを教材に独学で覚えた。さらに、オリヴィア・ロドリゴのボーカル・コーチに自分から連絡を取っている。2020年にロサンゼルスへ移住し、挑んだのが、のちにKATSEYEを輩出することになるオーディション『The Debut: Dream Academy』だった。結果は脱落。
そこで終わらなかったのが今につながる。2025年8月、キャピトル・レコードからデビューEP『The Provocateur』を発表。不倫と裏切りを歌う「Homewrecked」、権力や搾取に抗う「Superscar」が並び、グライムスがプロデュースした「MachineGirl」では、女性同士の対立を”見世物”にする社会への風刺を込めた。EPはVogueやRolling Stone、NYLONといった媒体に取り上げられ、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスの公演をソールドアウトさせる。2026年4月からは、デミ・ロヴァートの北米ツアーでオープニング・アクトを務めた。
FRONTROWでも失恋バラード「Red Bottoms」を紹介したばかり。「KGB」と合わせ、アルバムからはすでに2曲が世に出ている。
「ポップ界のプリマ・バレリーナになる」
『PRIMA』のエグゼクティブ・プロデュースを手がけたのは、ディラン・ブレイディとブレイク・スラットキン。愛、喪失、アイデンティティ、自己決定、友情といった、女性として生きるなかで通る主題を、不安や有害な関係と向き合いながら描いた作品になっているという。
「このアルバムは、22歳の女の子そのものの音が鳴るアルバムにしたいと思いました」とアデラ。「ハードさとソフトさ、脆さとすべてを貫く覚悟、マスキュリンなビートとフェミニンなエネルギーを混ぜ合わせて。やりたかったことを、まさに全てやりました」

タイトルの由来を語る言葉に、降りたはずのバレエが顔を出す。「『PRIMA』には『最初』という意味があって、デビュー作にはまさにぴったりなものです。プリマ・バレリーナと言えば、そのバレエ団のトップ、つまり最高のバレリーナのこと。バレエ界では親しみを込めて使われる言葉でもあります」
「私はポップ界のプリマ・バレリーナになることを目指していて、これはその夢を叶えるための第一歩なのです」
9月からは初のヘッドライン・ツアーが始まる。チケットはすでに即完売した。オーディションで選ばれなかった22歳が、自分の名前でホールを埋める場所まで来た。
















