音楽ストリーミングに異変!再生される曲の約6割が5年以上前


毎日10万曲以上の新曲が音楽配信サービスに登場する時代。それにもかかわらず、私たちが繰り返し聴いているのは、昔の曲だった。英BBCが、ストリーミングサービスで進む過去のヒット曲への回帰と、その背景を伝えている。(フロントロウ編集部)
聴かれている曲の約6割が「5年以上前」
英BBCによると、音楽や映画、テレビなどの消費データを分析する米ルミネイトの集計では、2026年上半期にストリーミングで再生された楽曲の約60%が、リリースから5年以上経過した曲だった。発売から18か月未満の新曲は、英国でも米国でも過去の楽曲に再生数で大きく差をつけられているという。
なかでも顕著なのが英国だ。2026年の年間売上ランキングでは、上位20曲のうち18曲がリリースから1年以上経過した楽曲で占められている。8位にランクインしているのは、2015年6月に発表されたザラ・ラーソンの「Lush Life」。さらに、マイケル・ジャクソンの「Billie Jean」(1983年)が22位、フリートウッド・マックの「Dreams」(1977年)が30位につけている。米国でも、人気の高いR&Bとヒップホップの2ジャンルでは、ストリーミング再生の約60%を過去の楽曲が占めている。
ほぼすべての楽曲をボタンひとつで聴ける現在、音楽業界で「ディープ・カタログ」と呼ばれる過去の楽曲を、リスナーが積極的に探すようになっているという。
新曲がヒットしても「同じ曲が長期間チャートを独占」
新曲がヒットしなくなったわけではない。ただし、一度ヒットすると、長期間にわたってチャートの上位にとどまる傾向が強まっている。英国では、サム・フェンダーとオリヴィア・ディーンのデュエット曲「Rein Me In」が、通算23週にわたって1位を獲得する記録を打ち立てた。米国でも、エラ・ラングレーの「Choosin’ Texas」が、全米チャートで歴代最長の首位記録を樹立している。
英国の競争・市場庁によると、ストリーミング再生の約3分の2は、上位わずか0.4%のアーティストの楽曲が占めている。TikTokのようなSNSは、特定の楽曲を爆発的にヒットさせることには適しているものの、アーティスト自身の長期的な成長を支える仕組みにはなっていないという指摘もある。
Apple Musicの幹部を務めるオリバー・シュッサー氏は、BBCに対し、「スーパーボウルのハーフタイムショーを手がける私たちは、10年後、20年後、30年後にも出演できるアーティストがいるようにしなければならない」と語り、次世代のアーティストを後押しするため、楽曲の選定や紹介に力を入れていると明かした。
AIのおすすめが「いつもの曲」を繰り返し聴かせる?
背景のひとつとして指摘されているのが、AIによるプレイリストの作成だ。音楽学者のアンナ=カイサ・カイラ氏は、商業的に主流ではないジャンルはAIの学習データが少なく、楽曲が推薦されにくくなる可能性があるとして、「偏りが生まれる可能性は間違いなくある」と話している。ロンドンのDJ、ティム・ガルシア氏も、「利用者の再生履歴をもとにしているため、現在聴いているアーティストによく似た音楽がすすめられることになる」と指摘している。
さらに、ロンドンを拠点に活動するミュージシャンのチミンヨ氏は、37万回以上保存されているSpotifyのリラックス系ジャズピアノのプレイリストについて、上位に並ぶアーティストの多くが認証されていないアカウントで、インターネット上にもほとんど情報がないことに気づいたという。
チミンヨ氏は「ピアノの音質も、マイクの位置も、テープマシンも、すべての曲で同じ」と指摘し、AIによって大量生成された楽曲ではないかと疑っている。これに対しSpotifyは、なりすましを禁止するルールを導入するなど、AIに関する問題への対策を強化しているとコメントした。
日本では、「Lush Life」を歌うザラ・ラーソンが2026年10月に東京・恵比寿で初の単独来日公演を開催したばかり。10年以上前のヒット曲が再びチャートを駆け上がる現象は、新しい音楽との出会い方が変わりつつあることを映し出しているのかもしれない。


















