彼氏になりすまして女性とセックスした男がレイプ容疑で起訴されるも、裁判で無罪を勝ち取った事件で、被害者の女子大生が「顔出し」をしてテレビのインタビューに応じた。(フロントロウ編集部)
ある理由で声を上げることを決意
彼氏に「なりすまし」をした男性からレイプされた米インディアナ州在住の女子大生アビゲイル・フィニーが、裁判で加害者が「無罪」になったことをうけて米ABCのニュース番組『Nightline(ナイトライン)』のインタビューに応じ、決意の「顔出し」をした。
事件が起きたのは今から約2年前の2017年。当時、大学の寮の彼氏の部屋にあるベッドで彼氏と一緒にくつろいでいた際に眠りに落ちてしまったアビゲイルは、その後、背後から誰かに体を触られて目を覚ましたという。
眠りにつく前に隣にいたのは彼氏だったため、自分の体を触っているのは彼氏だと思いこんでいたアビゲイルは、手の持ち主の顔を確認することなく、背を向けたままの状態で、されるがままに性行為に及んだ。
自分が性行為をした相手が彼氏ではなかったと気づいたのは、トイレに行って戻ってきた時のことだった。ベッドに横たわり、自分のことを笑顔で見つめている男性が彼氏ではなく、彼氏の友人のグラントだと気づいたアビゲイルが急いで寮の自分の部屋に戻ると、そこに"本物の"彼氏の姿が...。
その後、アビゲイルから一連の出来事を聞かされた彼氏がグラントを問いつめたが、らちがあかなかったため、アビゲイルは彼氏と一緒に警察に出向いて被害届を提出。グラントはレイプ容疑で警察に逮捕され、起訴されたが、何十年も前に制定された理不尽な法律によってグラントは罪を免れることとなった。
アビゲイルが暮らすインディアナ州をふくむアメリカの40の州では、レイプは「①暴力や脅迫で性行為を強要した」「②被害者が性行為の同意をできない状況にあった」「③酩酊状態や昏睡状態など、被害者が気づかないあいだに性行為に及んだ」場合でないと、法律上はレイプと見なされないことになっている。アビゲイルは性行為に同意はしていないが、意識もあり、意思表示をすることが可能な状況にあったことから、今回の裁判では「レイプにはあたらない」と判断されてしまったのだ。
しかし、卑劣な行為によって心も体も深く傷つけられた被害者のアビゲイルにとって、この裁判の結果は納得できるものではなかった。そんななか、彼女に舞い込んできたのがテレビのインタビューのオファーだった。
性犯罪の被害者のほとんどが顔どころか実名すら公開しないところを、「理不尽な法律をなんとかしたい…!」という思いを成し遂げるための第一歩として、顔出しでのインタビューに応じることにしたアビゲイル。インタビューのなかで、「弁護士といった法律家ですら性犯罪に関する法律の大部分がとても閉鎖的で、現代の風潮に合ってないことを知らない」と憤りの言葉を口にすると、続けて「私の最終的な目標は、『同意のない性行為は性的暴行にあたる』ということを世界中の人たちに理解してもらうこと」と話した。
また、顔出しを決意した具体的な理由については、「レイプ被害者を“1人の人間”として見てほしかったから、私の身に起きた出来事を話すことにしたの。性犯罪事件について報じられる時、被害者は匿名なことが多いでしょ。もちろん理由は理解できるけど、そのことが被害者の人間らしさを薄れさせているように感じたの。相手(被害者)が名前も顔もない人物だと、SNSで悪口を言いやすいと思ったから」と語った。(フロントロウ編集部)