世界中を悩ませる「コロナ鬱」
誰もが言いようのない不安を抱えている新型コロナウイルス禍。日本を含む一部の国では、感染者数の減少が著しいことを考慮し、ようやく徐々にロックダウンの緩和や解除が進められているが、パンデミック以前の“もとの生活”に戻れる日が、一体いつやって来るのかという見通しは、依然として立っていない。
国連(UN)が5月14日に発表した医療従事者へのメンタルヘルスにまつわる聞き取り調査では、カナダ国内で医療従事者として働く人々のうち47%が精神的サポートを必要としていると回答したほか、中国では50%の医療従事者がうつに悩まされていると報告。パキスタンでは、精神的やや不調を訴えた医療従事者が42%、ひどい不調を訴えた人が26%と、世界各国の新型コロナウイルス感染症の最前線で戦う人々の多くが精神的苦痛を経験しているという結果が浮き彫りになった。
精神的苦痛に悩まされているのは、医療従事者たちだけではない。同調査によると、イギリスでは、以前から心の問題を抱えていたという若者たちの32%がパンデミックが引き金となりメンタルの状態が悪化したと回答。
イタリアとスペインの一般家庭の両親たちを対象に行なわれたパンデミック禍での子供たちの精神状態に関するアンケートでは、子供たちが「普段よりも集中力を維持できない」との回答が77%、「情緒不安定で怒りっぽくなったと感じる」が39%、「神経質になった」が38%「孤独を感じている」が31%となった。
感染者数、死者ともに世界最多となっているアメリカにおいては、じつに半数近い45%の人々がパンデミックにより、いわゆる“コロナ鬱”と呼ばれる、精神的苦痛を経験していると訴えている。
「心のセルフケア」が必須に
まだまだ未知な部分が多いウイルスへの感染の不安や恐怖はもちろん、外出自粛により家に籠りがちになるストレスや、友人や家族、恋人などと思うように交流できない寂しさや孤独、仕事や学業への取り組み方の変化、経済面での不安、連日のように伝えられる悲報など、今回のパンデミックが私1人1人にもたらす精神的なダメージは計り知れない。
そんなか、これまでは、とくに、うつ(鬱)や不安障害といったメンタルの問題を意識してこなかったという人でも、真剣に向き合っていかなければならないのが、自分自身の心のケア。
「メンタルケア」と言うと、何だか難しいもののような気がしてしまうけれど、うつや不安が深刻化する前ならば、精神科医やカウンセラーといった専門家の助けを得なくても、自分で自宅できるセルフケア方法もある。
セレブたちの「自己流メンタルケア」
不安を緩和して精神のバランスをとり、ほんの少しだけでも沈みがちな心を軽くするといった意味合いで、セレブたちが実践している自己流のメンタルケアの方法を紹介。
セレーナ・ゴメス
以前からメンタルヘルスの問題を抱えていることを公言しているシンガー兼俳優のセレーナ・ゴメスは、新型コロナ禍でリモート出演した友人シンガーのマイリー・サイラスのポッドキャスト番組で、双極性障害(別名「躁うつ病」)(※)と専門の医師から診断を受けたことを告白。
※双極性障害とは、気分が高揚する「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」が繰り返される精神疾患のこと。つねに症状が現れるわけではなく、躁状態でもうつ状態でもない、いわゆる普通の状態があることが特徴。
新型コロナ禍では、「他の誰しもがそうであるように、私も不安定な気持ちを抱えている」と語っているセレーナが、自分を励ますために実践しているのが、付箋に自分へのポジティブなメッセージを書き、鏡に貼るというもの。
セレーナが監修を手がけるコスメブランド「レア・ビューティー(Rare Beauty)の公式インスタグラムでは、「私が今日1日をどんな気分で過ごすかを決めるのは私自身。私は幸せを選ぶ」、「あなたを定義するのは過去じゃない。過去があるから準備が整う」、「私は充分」などと書かれた付箋が貼られた鏡越しのセルフィーが続々と公開されている。
セレーナは、これ以外にも、音楽鑑賞や映画鑑賞、読書といったお気に入りの趣味に没頭したり、ずっと興味があった料理に打ち込むといった方法でも自己流メンタルケアを行なっている。
ショーン・メンデス
恋人で同じくシンガーのカミラ・カベロとその家族とともに新型コロナ禍の隔離生活を送っているショーン・メンデスは米TIMEにコロナ鬱を予防するための5つの方法を紹介。
その中でも、注目すべきなのが、とっつきにくい印象が強い瞑想のハードルをぐっと下げてくれるスマホアプリを使った瞑想。
カミラとそろって瞑想にハマっているというショーンは、「Calm(カーム)」というアプリを使って毎日瞑想を行なっており、ほかにも「How to Meditate: Asimple 30-day program for everyone」と「10% Happier」という瞑想アプリもオススメしている。
不安症を抱えていることを公言しているショーンは、お気に入りドラマの“イッキ見”や、家族や友人とのビデオチャット、屋外での軽い運動のほかにも、ストレスが溜まった時は、一度、深呼吸をして、続けて同じように深呼吸を10回するという方法を実践している。ショーンはこの呼吸法を「魔法」と呼んでセルフケアの要にしているよう。
エマ・ストーン
不安症やパニック障害を公表している映画『ラ・ラ・ランド』の俳優エマ・ストーンは、悩みや不安をひたすら文字にして書き出すという方法で頭の中をすっきりさせているそう。
子供たちのメンタルヘルスを支援するチャリティ団体、ザ・チャイルド・マインド・インスティテュートが主導する新型コロナ禍のメンタルヘルス啓発キャンペーン「#WeThriveInside(ウィー・スライヴ・インサイド)」に参加したエマは、この方法を「ブレイン・ダンプ(脳のゴミ捨て)」と呼び、「不安に苦しんでいる時は、心配事をひたすら書き出してる。何を書くかは考えずに、そして、後から読み返したりもしない。紙の上に気持ちを吐き出すのは、私にとってはすごくすごく効果的」と紹介した。
マーゴット・ロビー
映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』のマーゴット・ロビーも、エマと同じキャンペーンに参加。エマと少し似た方法ながら、マーゴットの場合は、やるべき事などのリストを作りまくるという、じつは、あまりじっとしてはいられない性格の彼女らしい方法で心の整理をしているそう。
「とにかく、いろんなリストを作るの。自分の考えを落ち着かせてくれることに集中して、(ネガティブな事から)気を逸らすのは効果的だと思う」と語っている。
ジョシュ・ギャッド
ディズニー映画『美女と野獣』のル・フウ役やアニメ『アナと雪の女王』の英語版でオラフの声を担当していることでも知られるジョシュ・ギャッドは、「泣く」ことで胸のつかえを取り去っているそう。
自身が涙する様子を撮影した動画を公開したジョシュは、「少しくらい泣いたってOKなんだ。本当は1人で泣こうと思ってたけど…」と、時には、思いきり涙を流すことがメンタルヘルスの不調を改善することつながることを伝えるために、あえて自分が泣く様子を映した映像を全世界に公開することに決めたと明かし、「僕らはきっと乗り越えられる」とフォロワーたちにメッセージを送った。
エヴァ・メンデス
2012年公開の映画『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』で共演した俳優のライアン・ゴズリングとの間に2人の子供を持つママでもある俳優のエヴァ・メンデスは、特別な理由がなくてもドレスアップしてみるという方法で、沈みがちな気分をアップ。
家の外にごみ出しに行くだけなのにもかかわらず、エヴァは、お気に入りのワンピースを着てヘア&メイクもバッチリ。さらにハイヒールまで履いて、外出自粛中のわずかな外出チャンスとなっているごみ出しに気合い充分な装いで臨んだ。
これは、外出もしない、他人と会う予定もないという理由からオシャレの機会が無く、それによりテンションが下がっているという人にとっては効果があるセルフケア法で、海外では、エヴァのようにめいっぱいのドレスアップをしてごみ出し行く人が続出している。
ミネソタ大学感染症研究政策センターの専門家グループによる研究報告によれば、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は世界人口の約3分の2が免疫を獲得するまでは抑制できず、最長2年間続く可能性が高いと指摘されている。“コロナストレス”や“コロナ鬱”との闘いは、今後もしばらく続きそうなので、今回紹介したセレブたちのように、自分なりの対処法を研究して、上手にガス抜きをすることが大切。(フロントロウ編集部)