9月10日は「世界自殺予防デー」
9月10日は「世界自殺予防デー」と制定され、ここ日本では、9月10日から16日が「自殺予防週間」として位置づけられている。
警視庁によれば、2020年に入ってから8月までに1万3,109人が自殺で亡くなっているという。日本では自殺者の数こそ2019年時点で10年連続で減少し続けているものの、自ら死を選ぶ人の数は依然として多い。メンタルヘルスの問題を話題にすることを「タブー視」する社会の風潮こそなくなりつつあるものの、悩みを抱えている当人にとっては、なかなか周囲に打ち明けづらいことかもしれない。
一見すると華やかに見えるショービジネスの世界でも、これまで多くのセレブたちがメンタルヘルスの問題に悩まされ、そして、克服してきた。誰かに相談する、少し休んでみる、考え方を変えてみる、何かから離れてみる。ここに紹介するのは、解決策のうちのほんの一部かもしれないけれど、セレブたちはこうして乗り越えてきた。
自殺願望を克服したセレブたち
ビリー・アイリッシュ
2020年1月に開催された第62回グラミー賞で主要4部門を女性アーティストとして初めて制覇するなど、弱冠18歳にして世界を代表するアーティストの1人となったビリー・アイリッシュも、過去に深刻な“うつ”の症状に悩まされ、自殺願望を抱いた経験のある1人。
ビリーは2019年に収録された米CBSの特別番組『The Gayle King Grammy Special(ザ・ゲイル・キング・グラミー・スペシャル)』のなかで、2018年に「正直言って、自分は17歳まで生きて到達できないと思ってた」と思ってしまうほどに追い込まれていたことを告白。そんなビリーを救ってくれたのは、母親であるマギーと兄や父といった家族や、セラピーだったそう。ビリーは番組のなかで、ファンに次のように呼びかけている。
「ファンの子たちの肩を掴んで、『お願いだから、自分を大事にして。自分にやさしくして。自分に親切にして。』って伝えたい。『どうか、その余計な一歩を踏み出さないで。これ以上、自分自身を傷つけないで』って」
カーラ・デルヴィーニュ
モデルとして成功を収め、現在は2016年公開の映画『スーサイド・スクワッド』への出演をはじめ、俳優としてのキャリアを歩んでいるカーラ・デルヴィーニュ。彼女は2015年に出席した「Women in the World」サミットにて、15歳の頃に“うつ”に悩まされ自殺願望を抱いていたことを告白した。
カーラは両親を喜ばせようと、良い子に振る舞おうとするあまりメンタルヘルスに不調をきたしてしまったそうで、「これ以上生きたくないと思ってた。私は孤独なんだって」と思ってしまうところまで落ち込んでしまったという。
「誰かに『休んだほうがいいよ』って止めてほしかった。『自分のことを気にかけなさい』って」というカーラだけれど、そんな彼女に救いの言葉をかけてくれたのが、先輩モデルのケイト・モスだったという。「ケイト・モスのアドバイス通り、最後は休息をとった。私を救い出してくれたの」と、一度悩まされていることから離れたことで、克服することができたと振り返った。
ソフィー・ターナー
大人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のサンサ役で一躍世界的スターの仲間入りを果たし、2020年7月には夫であるジョー・ジョナスとの間に第1子となる娘のウィラちゃんを出産したソフィー・ターナーも2019年、6年という長い期間にわたってメンタルヘルスに悩まされてきたことを告白した。
「もっと若かったときには、自殺についてよく考えていた。なぜだかはわからないけれど」とソフィー。「10の褒め言葉をもらったとしても、1のネガティブなコメントが私をおかしくさせた。すべてを信じてしまってね。『私は肌が綺麗じゃない、太ってる、最低な女優だ』って」と、SNSでの誹謗中傷に悩まされてきたとして、「ベッドから起きて、家を出て、自分を好きになるということが自分にとって最も難しかった」と、日常生活に支障をきたすほど苦しんでいたと明かした。
ソフィーは現在、メンタルヘルスを向上させるためにセラピーに通いながら、SNSの管理に気をつけたり、インスタグラムやツイッターでは自分に関連するコメントを読まないようにしたりと、自分に悪影響を及ぼすものとは距離を置くようコントロールしているという。
ケイティ・ペリー
2020年8月28日に最新作『スマイル』をリリースしたケイティ・ペリー。長年にわたって第一線で活躍を続け、一見すると順風満帆なキャリアを歩んできたように見えるケイティも、人知れずメンタルヘルスに悩まされていた。
2017年には、前作『ウィットネス』のセールスの不振と、現在の婚約者である俳優のオーランド・ブルームとの破局に悩まされることに。ケイティは2020年6月に出演したカナダの番組『Q on CBC』で、「自分の悲しみに溺れて、飛び降りてしまっていたかもしれない」と、メンタルヘルスの不調が原因で自殺まで考えていたことを告白した。
そんなケイティを救ってくれたのは、「感謝」の気持ちだったという。「私は感謝するという術を見つけたの」とケイティ。「心は折れてしまったけど、私にとっては大切なことだった。違った方法で、自分を満たす方法を見つけられたから」と、感謝の気持ちという前向きなエネルギーに変換することで乗り越えたと明かした。
デミ・ロヴァート
ディズニー・チャンネルのテレビ映画『キャンプ・ロック』でブレイクを果たして以来、摂食障害やアルコール依存症、薬物依存症など、多くのことを乗り越えてきたデミ・ロヴァートは、初めて自殺願望を抱いたのはなんと7歳の頃だったと明かしている。
「死を選べば痛みが消えると思い、7歳で自殺を考えた。(自殺したいと思った理由は)寂しさや孤独、神経的に衰弱していたことが原因だと思う」と、デミは2018年に米人気トーク番組『ドクター・フィル』に出演した際に告白した。
デミの父は昔から精神的な病を抱えており、それが理由で家族と時間を過ごすことができず、結果的にデミに「孤独感」を抱かせることになったのだという。「大人になったことでやっと父の死を悼むことができるようになったし、物事を俯瞰的に見ることができるようになった。父は私を捨てたわけではなく、精神的な病のせいでそうせざるをえなかったんだと納得できるようになったの。そして父の死を乗り越え、何が原因で自分がこうなってしまったのかもわかった」とデミは語り、大人になって相手の気持ちに寄り添い、自分の気持ちと折り合いをつけられるようになったことで、塞ぎがちだった気持ちから解放され始めたと振り返った。
現在では完全復活を遂げたデミは、これまでに抱えてきたメンタルヘルスのトラブルについて赤裸々に打ち明けており、2020年9月にアメリカの朝の情報番組『Good Morning America』に出演した際には「(メンタルヘルスの)認知を高めて、それについて話をすることで、レッテルを取り除くことができるということも分かっている」と語り、抱えている問題を周囲と共有することの大切さを呼びかけた。
レディー・ガガ
一方、うつや不安障害といったメンタルヘルスの問題をはじめ、レイプ被害などの辛い体験によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)などを抱えてきたことを公にしているレディー・ガガは以前、自傷行為に依存してしまっていた時期があることを告白。2019年に米ELLEの企画で大物女性司会者オプラ・フィンフリーと対談したガガは、「私は長い間“カッター(自傷行為をする人)”だった」とカミングアウトした。
「私が自傷行為をやめることができた唯一の理由は、自分がやっていることが、誰かに助けを求める代わりに、自分が痛みを感じているのだと見せつけているだけだということに気づけたからだった」とガガ。「誰かに対して『ねえ、私、自分を傷つけたくて仕方ないんだけど』と伝えることができたとき、その衝動は鎮まった。そして、私のそばで『そんなことをして見せなくていいよ。話してごらん。君はどんな風に感じてるの?』と言ってくれる誰かがいたことで、私は自分の辛さを吐き出すことができた」と語り、自分の悩みを誰かに打ち明けられたことで、ツラさを痛みに変えることを止められたと振り返った。
ガガは対談のなかで、以前の自分と同じ様な苦しみや悩みを抱えている人たちに向けて次のように語りかけている。
「昔は、トラウマから逃れることなんて不可能だと思ってた。当時は、身体的にも精神的にも、感情的にも痛みを感じていた。でも、私は、打ち勝つことができたよ」
悩みを抱えて相談を必要としている方へ
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(フロントロウ編集部)