伝説的試合の時にもすでに摂食障がいだった
イギリスのクリケット代表チームで活躍し、キャプテンも務めたアンドリュー・フリントフが、自身が抱える摂食障がいの過食症について語った。
アンドリューは、1998年から2009年にかけてプロのクリケット選手として活躍。2005年には、1882年から続くクリケットの伝統的なテストマッチシリーズのジ・アッシズで18年ぶりにイングランド代表を勝利に導き、BBCによるその年の最優秀スポーツ選手に選ばれたほど。しかし当時すでに、何かを口にした後には吐くようになっていたという。
英BBCによるドキュメンタリー番組『Freddie Flintoff: Living With Bulimia(原題)』で彼は、選手として体型を批判されたことが、過食症になった原因だと明かす。
「私は、太ったクリケット選手として知られるようになりました。ひどいものでした。それが、私がそれ(吐くこと)を始めた時期ですね。食事の後に具合が悪くなるようになった。同じ時期に、選手としていろいろ上手くいくようになった。みんなは喜んでくれた。体重は落ちていったし、『自分はこれをコントロールしてる』って感じでしたよ。それは続いて、いつもするようになっていた」
アンドリューは2005年の試合の4年後に、31歳で引退を決断した。自身の引退に摂食障がいが関係したかということについては考えてこなかったそうだけれど、現在42歳となった彼は、「考えたことはなかったけど、それ(摂食障がい)はすべてに影響するんじゃないでしょうか?関節や骨に。だから、たぶんね」と言い、メンタルヘルスだけでなく身体的にも、摂食障がいの影響があったのではないかと分析する。
摂食障がいを明かせなかった過去
アンドリューは、摂食障がいを抱えていることを、引退後に初告白。しかし、引退から11年が経った現在でも過食症と闘っているという。『Freddie Flintoff:Living With Bulimia』の放送にあたって、イギリスの朝の情報番組である『GoodMorning Britain(原題)』でもその苦悩について話した彼は、男性スポーツ選手として、誰かに相談することはできなかったと振り返った。
「20代前半には、助けを求めようとしたこともあったんです。チームに栄養士の方がいたので。問題を抱えてると言おうとしたことがあったんですが、彼女は話の最後に、多くの女性と関わってきたと言っていて…、その部屋にいる誰かが摂食障がいを抱えているなんて思えないと言った。私たちは明らかに、若い男たちの集団だからって。何かを話したり、言ったりすることができる気がしなかった。プレストン出身の195cm(6ft 4)の野郎としては、私は摂食障がいを持つタイプではないでしょう。だから隠し続けて、それについて話したくなかった」
過食症や拒食症などを含む摂食障がいは、女性が患うイメージがある。女性のほうがかかる割合が多いのは事実だけれど、専門家は、イギリスにおける摂食障がいの患者数は150万人程度であり、そのうちの約25%が男性だとしている。また、アメリカでも似た報告がされており、Mirasol Eating Disorder Recovery Centerは、拒食症や過食症の人々のうち、10~15%が男性であると見ている。また、カリフォルニア大学サンフランシスコ校が10代の男女14,891名に対して行なった調査では、筋肉に関しての意識から問題のある食行動を取った対象者は、男性のうち22%だったという。
男性セレブでも、ワン・ダイレクションの元メンバーでシンガーのゼイン・マリクや大御所シンガーのエルトン・ジョン、俳優のデニス・クエイドが過去の摂食障がいについて告白しており、また、ラッパーのエミネムは運動をしてカロリーを消費しなくてはいけないという強迫観念があったと明かしている。
摂食障がいを抱える男性は、助けを求めづらいと言われている。しかし米NEDAは、一旦サポートを得られれば、男性患者も女性患者と同様の改善が見られるとしている。男性として摂食障がいについて語ることで、他にも苦しんでいる男性に勇気を与えたアンドリュー。ドキュメンタリー放送後には、彼に対して多くの称賛の声があがった。(フロントロウ編集部)