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映画『ハリー・ポッター』シリーズで“名前を言ってはいけないあの人”ことヴォルデモート卿を演じた俳優のレイフ・ファインズが、同作の原作小説の著者J.K.ローリングの「トランスフォビア発言」をめぐる世間の反応に関して、自身の率直な考えを語った。(フロントロウ編集部)

ヴォルデモート役俳優が『ハリポタ』作者の“炎上発言”騒動に言及

 映画『ハリー・ポッター』(以下『ハリポタ』)シリーズの原作小説の著者で、同作のスピンオフである映画『ファンタスティック・ビースト』(以下『ファンタビ』)シリーズでは脚本も手がけるイギリスの作家J.K.ローリングは、数年前からトランスジェンダー・コミュニティから反感を買う言動が世間で物議を醸していたが、2020年6月初めにツイッターに投稿したトランスフォビア(※)的ととれる発言が大炎上。

※トランスジェンダー/トランセクシュアルに対するネガティブな感情・思想・行動

画像1: ヴォルデモート役俳優が『ハリポタ』作者の“炎上発言”騒動に言及

 複数の『ハリポタ』や『ファンタビ』の出演者たちが「賛同できない」とコメントを出すまでの事態に発展したが、ローリング氏は、2万字にもおよぶエッセイなどを通じて、トランスジェンダーに対して誤解を招くような持論を後押しするなど、断固として考えを曲げることはしなかった。

 一時は、ローリング氏の「キャリアはもう終わった」という意味で「#RIPJKRowling(J.K.ローリングよ安らかに眠れ」というハッシュタグがツイッターでトレンド入りしたり、『ハリポタ』にまつわるタトゥーを除去するファンが続出するなど、“ファン離れ”が深刻化。「ローリング氏にはもう一銭も印税を与えたくない」と不買運動を呼びかける元ファンまで現れた。

画像2: ヴォルデモート役俳優が『ハリポタ』作者の“炎上発言”騒動に言及

 世の中から集中砲火を受けることとなったローリング氏のトランスフォビア的発言から1年近くが経ち、『ハリポタ』シリーズで悪役のヴォルデモート卿を演じた俳優のレイフ・ファインズが騒動に関して個人的な意見を口にした。


ローリング氏に対する批判は「理解できない」

 トランスフォビア発言がきっかけで、殺害予告やレイプをほのめかす脅迫まで受けたとを明かしているローリング氏。

 英The Telegraphとのインタビューでローリング氏の炎上騒動に言及したレイフは、「彼女に向けられる辛らつな批判は私には理解できない」と、ローリング氏に対する世間の烈火のごとき怒りは理解しかねるとコメント。

画像: ローリング氏に対する批判は「理解できない」

 「議論が白熱するのは理解できるが、誰かを非難したり、糾弾しなくては気が済まないという今の時代は非合理的だと感じる。自分たちとは異なる視点を持つ人に対して、人々が放つ憎悪の度合いや、浴びせる言葉の暴力には心をかき乱される」と続け、自身はローリング氏の視点に共感するわけではないものの、俗にいう、キャンセル・カルチャーの悪しき部分には賛同できないと苦言した。

キャンセル・カルチャーとは?

不適切な言動を行なった個人や企業などに対し、SNSなどを通じて責任を追及し、「抹殺(キャンセル)」しようと呼びかける行為。

これまで暗黙の了解として解決されずにきた問題に焦点を当て、当事者に責任を負わせたり、社会の風潮に変化をもたらすことができる方法の1つである一方で、問題提起や解決の域を超え、そもそもの論点からはズレが生じてしまったり、集団の力での団体や個人に対して誹謗中傷を行なう事態にまで発展するケースが増え、昨今、問題視されている。


世間には“必要悪”

 さらにレイフは、「私たちには、攻撃的であることを恐れない意見も必要だ」、「景観を揺さぶり、私たちの内側に入り込み、怒りを呼び起こし、焚きつけるようなね」と、ローリング氏のように世間の批評に臆せず、たとえそれが白い目で見られようとも、自分の考えを口にする人物は言ってみれば“必要悪”のようなものであるとも示唆。

 「そういった意見が鎮圧されるような世界は私は嫌いだ」と、言論の自由についても言及した。

画像1: 世間には“必要悪”

 ローリング氏のトランスフォビア発言の内容や、それを擁護するかしないかというよりも、不適切とみなされる発言をした人物に対する世間の反応を憂いていると述べたレイフ。

 『ファンタビ』シリーズでニュート・スキャマンダーを演じる俳優のエディ・レッドメインも、ローリング氏のトランスフォビア的発言には「同意しない」と明言したうえで、彼女に対する誹謗中傷は「本当におぞましい」と指摘。

画像2: 世間には“必要悪”

 「同様に、オンラインでも実社会でも、トランスジェンダーの人々へ向けた酷く激しい攻撃が続いており、それはおそろしいことです」と、ターゲットにかかわらず、誹謗中傷となる発言は不適切だと考えているという立場を明確にしている。(フロントロウ編集部)

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