スカーレット・ヨハンソンが、誰しもが意見を寄せることのできるソーシャル・メディアの時代に、俳優として政治的な意見を持つことの難しさについてコメント。一方で、過去に自身のキャスティングが議論の的になったことについては、自分を省みるきっかけになったことを示唆した。(フロントロウ編集部)

政治的な発言は俳優の仕事ではないとスカーレット・ヨハンソン

 誰もがスマートフォンを1人台持っているような時代となり、ソーシャルメディアのアカウントを持って、自由に自分の意見を世間に公表できる時代となった今、1人1人の声は以前にも増して大きなものになって届くようになった。ハリウッドの俳優たちが政治的な発言をするようになったのは、もちろん今に始まったことではないけれど、ソーシャルメディアの時代となり、発言に対する世間のリアクションがより自分たちのもとに届きやすくなったと言えるかもしれない。

 2020年に行なわれたアメリカ大統領選では、多くの俳優たちが投票を呼びかけるなど、俳優たちの発言が政治に果たす役割はソーシャルメディアの時代にも依然として大きなものだけれど、MCU作品でブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフを演じているスカーレット・ヨハンソンは、そうした“誰もが意見を発しやすい時代”において、俳優として政治的な発言を求められることに葛藤を感じているという。

画像: 政治的な発言は俳優の仕事ではないとスカーレット・ヨハンソン

 「社会において公的な役割を果たす義務は俳優たちにないと思う」とスカーレットは今回、英 The Gentlewomanのインタビューで語っている。「そうしたいという人たちもいるけど、世間の目に晒されているからという理由で(役割を果たす)義務があるというのは、フェアじゃないと思う。政治家になることを選んだわけじゃなくて、俳優なの」と、世間の目に晒される職業ではあるものの、自分たちの仕事はあくまで俳優であり、政治家ではないとスカーレット。

 「私たちの仕事は、経験を自分たちに反映させることであって、芸術を通して共感できる体験をしてもらえるように、オーディエンスにとっての鏡になること。私たちの仕事はそういうもの。自分の政治観が何であれ、私が最も成功を感じられるのは、オーディエンスが劇場や自宅で腰を据えて、物語や演技に没入して、その中に彼ら自身を見出してくれた時か、もしくは、演技や物語を観ながら、その経験との繋がりを持ってくれた時、もしくは、彼らが俳優たちとの間に繋がりを感じてくれた時とかだから。影響を受けて、それについて考えて、何かを感じてくれる。感情的な反応を示してくれるわけで。良い、悪い、深い、その通りだなとか、そういう感情をね。それが私の仕事。他のことは私の仕事ではないの」と続けて語り、自分たち俳優の役割は、作品を通じてオーディエンスの感情に訴えかけることだと強調した。

過去に自身の役が議論になったケースも

 スカーレットは以前、過去にキャスティングされた役柄が議論の的になったことがある。2017年には、映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』で原作ではアジア人の設定である主人公を演じてホワイト・ウォッシュだと批判され、2018年には、映画『Rub & Tug(原題)』でトランスジェンダー役にキャスティングされたことが批判されて役を降板した。

 スカーレットは批判を受けて映画『Rub & Tug(原題)』でのトランスジェンダー役を降板した後、米As If誌で騒動について語った発言が炎上。スカーレットは、これを報じた英Daily Mailの記事は「大幅に文脈から切り取られた」ものだと反論し、「アートとポリティカル・コレクトネスは切り離されるべき」と話していただけだとしたものの、“キャスティングにおいてチャンスが多い白人だから言えることで、マイノリティが抱えている問題をまったく理解していない”と、さらなる批判があがった。

※特定のグループ(とくに性別・人種・民族・宗教・性的指向などに基づく)を不快にさせる、そのグループにとって不利益となる言動は避けるべきだという考え。主に差別・偏見をなくすことを目的としている。

画像: 過去に自身の役が議論になったケースも

 “著名人に政治的な発言をする義務はない”という今回の発言の裏には、これまでのこういった経緯が影響している部分はあるよう。騒動を経た今、スカーレットはこう語った。「何かに対して意見を持つこともある。それが私だから」と語った上で、「間違いがあることを認めるにあたって、辛い時間を過ごした経験が誰しもあると思う。それが公の場で行なわれる時には、恥ずかしいものになり得るの。そうした、『私はすごく的外れだった』、『全体像を捉えられていなかった』、『思いやりがなかった』って思える経験になる」と続け、当時、自身の発言が議論になったことで自分を省みるきっかけになったことを示唆した。

お互いにジャッジし合っていると現在の世の中に苦言

 同じインタビューのなかで、スカーレットは「それがポリティカルコレクトであれ、そうでなくとも、何かを言う度に、もしくはその人の生き方そのものについて、人々はそれを問題視する。私たちは常にお互いをジャッジしているの」と、1人1人が意見を伝えやすい世の中になったことについても言及している。

 「私たちは繰り返し、自分たちをジャッジしてる。そういう(他者との)関わり方を、自己認識と一緒くたにしているんじゃないかと私は思う。それは、自己認識とは異なるものなわけで。ここ(携帯電話の中にある世界)から自分に迫ってくる何もかもにリアクションしてしまうの。現実の認識の仕方が完全に歪んでしまっていると思う。こんなにも晒されているのは、普通じゃないよ」と強い言葉で語り、オンラインで展開されている世界で交わされる意見の1つ1つに反応を示すことに反対する気持ちを明かした。

画像: お互いにジャッジし合っていると現在の世の中に苦言

 スカーレットはソーシャルメディアにアカウントを持っておらず、SNSとは離れた生活を送っており、その理由については、「私は既に不安を抱えているし、友人たちに対する罪悪感を感じることだってたくさんある。誰かと繋がり続けることなんてできないの。これ以上、どうやって繋がればいいの?」と、現実でさえ誰かと繋がることが大変なのに、オンラインでも繋がりを持ち続けることは自分にはできないからだと説明している。(フロントロウ編集部)

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