キーラ・ナイトレイ、女性たちが直面する日常を語る
映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『イミテーション・ゲーム』などで知られるキーラ・ナイトレイは、フェミニストとして声をあげてきた。そんな彼女が、社会に存在する女性差別を意識することになったきっかけは、幼少期の経験にあるという。
「私はとてもスポーツ好きな子供だったけど、サッカー選手とかになるというのは私の選択肢にはなかった。彼ら(大人)の頭の中では、それは男の子たちのためのものだったから。それは、すごく幼い時から私の中で引っかかってる」と、英Harper’s Bazaarのインタビュアーと散歩をしながら振り返ったキーラ。
そんな彼女が、サッカーに熱中する少女たちを描いた『ベッカムに恋して』で、世の中のスポーツ少女たちに希望を与えたことには感動を覚えるが、まだまだ世界で女性たちは自由に生きられてはいない。
キーラは、「女性たちが家へ帰る際に、安全のために注意しなければならないことをリスト化している時のこと。私もそのリストのすべてのことをやっていると思ったし、それについて考えたこともなかった。それって死ぬほど気が塞ぐことだよ」と、日常生活のなかで女性たちに課せられていることが、いかに普通のことだとされているかを指摘。
そして、2021年3月に、ロンドンの街を帰宅途中だったサラ・エヴァラードが殺害された事件を受けて、緑の党のジェニー・ジョーンズ議員が、男性に午後6時の門限を提案したことや、ロンドン警視庁が女性たちに夜間の外出を控えるよう勧めていたことについてコメントした。
「あの政治家が、男性には門限があるべきだと言って、男性たちが怒り狂ったのって面白かったよね。だって考えてみると、女性には今も門限があって、そしていつの時代だってそうだった」
女性であれば嫌がらせを経験する社会
さらに、こんな会話を話している時に、道端で男性に話かけられて後を追われたというキーラとインタビュアー。そのなかで、これまでに嫌がらせを受けた経験があるかと聞かれたキーラは、自分だけでなく女性であれば全員その経験はあるとした。
「イエス!というか、(女性なら)みんなあるよね。本当に。(嫌がらせを)受けたことのない人を知らない。露出狂だったり、触られたり、男に首を切るって言われたり、顔を殴るって言われたり、形がなんであろうと、みんな経験がある」
さすがにすべての女性というのは言い過ぎだと疑う声もあるかもしれない。しかし例えば、2021年にキーラの母国イギリスのUN Women UKによって発表されたデータだと、5人中4人の若い女性(18~24歳)が公共の場でセクシャル・ハラスメントを受けたことがあると回答。そしてこのデータはあくまでセクシャル・ハラスメント限定のもので、ほかのハラスメントを含めたら女性が公共の場で受ける被害がさらに大きいことが分かる。
女性に対する嫌がらせはあまりに日常生活のなかに溢れすぎていて、それは普通のことだと思ってしまいがち。しかしよく考えると、すべての女性が性別に基づいた嫌がらせを経験しているというのは異常。
一方で、ここ数年で、多くの女性たちが声をあげられるようになり、その連帯は俳優たちの間にも生まれている。例えば、『ゲーム・オブ・スローンズ』のナタリー・エマニュエルや『スキンズ』のカヤ・スコデラリオは撮影におけるヌードの強要について、『ザ・クラウン』のジリアン・アンダーソンは賃金格差について声をあげ、企業ではHuluが、女性の偉人の功績を称える銅像が著しく少ないことについて取り組み、様々な問題に改善が見られる。
あまりに偏った社会を改善していくことは簡単ではないが、女性たちの連帯が社会を改善している。
(フロントロウ編集部)