2022年の第79回ゴールデン・グローブ賞は、テレビ放送無し、無観客、レッドカーペットやプレゼンターなしで開催される。正式な理由は新型コロナウイルスの感染対策とされているが、実際は業界からのボイコットが原因。騒動のいきさつを詳しく解説。(フロントロウ編集部)

2022年の映画祭「ゴールデン・グローブ賞」が異例の事態

 アカデミー賞に並ぶ主要映画祭の一つとして知られるゴールデン・グローブ賞。79年の歴史を持つその授賞式は年始の賞レースを幕開ける一大イベントとして毎年多くのセレブが集まり、華やかな式典になることで知られているが、2022年は、テレビ放送無し、無観客、有名セレブのプレゼンターもレッドカーペットも無しという異例の事態となった。

画像: 第77回ゴールデングローブ賞でのスカーレット・ヨハンソン

第77回ゴールデングローブ賞でのスカーレット・ヨハンソン

 映画部門ではケネス・ブラナー監督の『ベルファスト』と、ジェーン・カンピオン監督の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が最多7ノミネート。スタジオ別では、Netflixが映画部門、テレビ部門合わせて最多17ノミネートを獲得しているが、各候補者は無反応を貫いており、例年ゴールデン・グローブ賞を生放送している米NBCも2022年は放送を見送ると発表。

 フロントロウ編集部ではその理由を詳しく解説。主催団体であるハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)の抱える問題や、業界での反応などを紹介していく。

ゴールデン・グローブ賞、崩壊の危機を解説

ゴールデン・グローブ賞は誰が主催している?

 ゴールデン・グローブ賞を主催しているのは、アメリカ国外の記者からなるハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)。2021年に21名の新規会員が増やされるまでは長年90名以下という少ない会員数で運営されており、彼らがゴールデン・グローブ賞の結果を決めてきた。

 投票する資格を持つ会員数が9,000人以上のアカデミー賞、2万人以上のエミー賞と比較しても、ごく少人数が権限を持っていることがわかる。

問題のポイントは接待や人種差別

画像: 問題のポイントは接待や人種差別

 第78回ゴールデン・グローブ賞の開催を1週間後に控えていた2021年2月21日に、Los Angeles TimesがHFPAの腐敗した実態を報道。

 同紙は、「適格な志願者を締め出し、会員の収入を不適切に担保しながら、重要な報道へのアクセスを独占している」と訴えを起こしたノルウェー人記者Kjersti Flaa氏の主張をもとに調査を行ない、団体が“公然の秘密”として映画スタジオなどから高額の接待を受けている事実を告発。

画像: ドラマ『エミリー、パリへ行く』の撮影現場より

ドラマ『エミリー、パリへ行く』の撮影現場より

 調査のなかでは、第78回ゴールデン・グローブ賞で2部門にノミネートされていたドラマ『エミリー、パリへ行く』の制作を行なったパラマウント・ネットワークが、2019年に30名以上のHFPA会員をフランスで行なわれていた撮影現場に招待し、贅の限りを尽くしたおもてなしを行なっていたという報告もあった。本作のノミネートは報道前から“意外”とされていたため、報道を受けて、“HFPAはノミネートをお金で売っている”という疑惑が濃厚視された。

 さらに記事では、約90名からなるHFPAに黒人会員が一人もいないこともスクープされた。ゴールデン・グローブ賞では白人男性に偏った選考が問題視されてきたが、団体内の人種差別的で偏った体勢が記事によって事細かに暴露される形となった。

業界の反応は早かった!テレビ局やスタジオがボイコットを発表

 スクープを受け、多くのハリウッドセレブは『#TimesUpGlobes』というハッシュタグと共にHFPAに変化を求めるメッセージを発信。さらに、ワーナー・メディアやAmazonスタジオ、Netflixを含む100以上の業界団体は、HFPAが抜本的な改革を行わない限り「一緒に仕事はしない」と、ボイコットを表明。

 また、本アワードを毎年放送するために数百万ドルを支払っている米NBCも、2022年度の授賞式は放送しないと発表し、2023年までに改革が行なわれることを期待していると付け加えた。

画像: 映画『レインマン』で第46回ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)を受賞した際のトム・クルーズ

映画『レインマン』で第46回ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)を受賞した際のトム・クルーズ

 さらに、トム・クルーズは今までに受賞したゴールデン・グローブ賞のトロフィーを3つ全て返却し、スカーレット・ヨハンソンはHFPAを「性差別的」だとはっきり言い切るなど、厳しい対応や告発が相次いだ。

HFPAが団体の体質を改善したと主張するも…

 問題を受け、HFPAは組織改革を宣言。前回のゴールデン・グローブ賞から約9か月で改革をしたと主張しており、6人の黒人ジャーナリストを含む21人の多様性に富んだ新会員を増やしたり、ダイバーシティ・アドバイザーを起用したりと、新たな試みを行なっていると声明を出した。

 そして授賞式開催の約1週間前には「抜本的な変化」があったと主張。「この8ヶ月の間に、HFPAは規約を全面的に見直し、倫理と行動規範、多様性、公平性と包括性、ガバナンス、メンバーシップなどに対応した、上から下までの抜本的な変更を実施しました。HFPAは最近、これまでで最大数かつ最も多様な21名の新会員を入会させ、その全員がゴールデン・グローブ賞の初投票者です」と、改めて声明を発表した。

 しかし映画スタジオやセレブ、放送局のNBCからは一切反応がなく、「抜本的な改革」があったとはみなされていない様子。

画像: HFPAが団体の体質を改善したと主張するも…

 例年12月に行なわれるノミネート発表では通常様々なセレブがかわるがわる登壇しノミネート作品を発表するが、2021年12月に行なわれた第79回ゴールデン・グローブ賞のノミネート発表では、ラッパーのスヌープ・ドッグが1人で淡々とノミネーションを読み上げる形になった。しかもスヌープは候補者の名前の読み間違えを連発。視聴者やセレブたちの失笑を買った。

 また、例年ノミネーションの発表直後は各映画スタジオが嬉々としてSNSで自社作品がノミネートしたことを祝うが、今年は最多ノミネートとなったNetflixをはじめ、各社がスルー。映画『ハウス・オブ・グッチ』で主演女優賞(ドラマ部門)にノミネートされたレディー・ガガをはじめ、俳優賞にノミネートされた俳優たちも全く反応を示さなかった。

ナイナイ尽くしの授賞式が開催、HFPAは新型コロナを理由に

 そんな混沌とした状況の中での開催となった第79回ゴールデン・グローブ賞。

 通常であれば年明けは豪華なセレブプレゼンターが発表されるのだが、今年は、観客もレッドカーペットも無しで開催するという異例の発表がHFPAから行なわれた。HFPAは「パンデミックにおける(感染)急増のなか、健康と安全こそHFPAにとって最優先事項である」と、新型コロナウイルスの流行が理由であるとしたが、米Varietyによると、プレゼンターを依頼されたセレブは全員がその申し出を拒否したそうなので、出席したがる者がそもそもいないことが背景にあるよう。

画像: ナイナイ尽くしの授賞式が開催、HFPAは新型コロナを理由に

 放送も参加者もないとなると、社会的な関心もなくなり授賞式の価値は落ちるため、HFPAの収入源は絶たれ、団体に所属するジャーナリストたちの業界での影響力やその立場は危うくなる。

 今やゴールデン・グローブ賞のトロフィーのモチーフになっている地球儀をからかって“地球儀はもういらない”とまで囁かれており、今度から賞レースの幕開け役は同じく1月に開催されるクリティックス・チョイス・アワード(今年はパンデミックのため延期)にしようという声まであがっている。

 果たして2023年のゴールデン・グローブ賞はどのような展開を迎えるのだろうか。本当に「抜本的な改革」を見せないと業界が納得しないことは明白だ。(フロントロウ編集部)

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