水原希子など、日本でも撮影現場における性暴力に声をあげる俳優が増えている。セックスシーンやヌードシーン、キスシーンなどで俳優を守るインティマシー・コーディネーターが、映画やドラマの撮影で「俳優たちはおぞましいほどに虐待され、暴行され、力を奪われてきました」と話した。(フロントロウ編集部)

性暴力から俳優を守るインティマシー・コーディネーター

 映像というものが開発され、映画やドラマが制作され始めてから100年以上が経った。これまでに多くの作品が制作されてきたが、制作現場における人権問題はたびたび問題になってきた。セクハラ、パワハラ、女性差別、人種差別、障がい者差別などは映像の撮影時にも問題になること。

 俳優たちが衣服で身体を守れないベッドシーンや、相手と触れ合ったりキスしたりしなければならない親密なシーン、そして性暴力のシーンなどは、とくに女性俳優が我慢を強いられたり、したくないことをさせられたりする危険性をはらむ。また、男性であっても親密なシーンを嫌がる俳優は少なくない。

 しかし親密なシーンの撮影については、最近の若手俳優の間では“守られている”と感じられている俳優が多い。その理由には、親密なシーンの専門家であり、俳優を守るために現場に立ち会うインティマシー・コーディネーターの存在がある。

画像: 性暴力から俳優を守るインティマシー・コーディネーター

 性暴力が起こりかねない状況で、なぜ俳優たちは守られてこなかったのか。良質な作品を多く制作してきたテレビ局のHBOは、2018年10月に、全作品の全親密シーンでインティマシー・コーディネーターを雇うことを発表。その他の作品でも、多くの現場でインティマシー・コーディネーターが起用されている。

 アメリカのブロードウェイミュージカル作品で初めてインティマシー・コーディネーターとして現場を支えたクレア・ワーデンは、2019年に米Nylonのインタビューで、「人々は、俳優たちも人間であると忘れてしまうのです」と話す。そして俳優たちが直面してきた現実を強く批判した。

 「何十年も、何十年も、何十年も、俳優たちはおぞましいほどに虐待され、暴行され、力を奪われてきました。そしてそれを私たちは変えようとしています」

 また、インティマシー・コーディネーターであり、米Intimacy Directors Internationalの創設者の1人であるアリシア・ロディスは、「レイプシーンの振り付けをすることが続いたのですが、私たちはそれを他の暴力的なシーンと同様に扱い、そのシーンに参加する人々の精神的なケアをまったくしていないことに気づかされました」と話す。

 そこでIntimacy Directors International は2015年に、インティマシー・コーディネーターになるためのトレーニングプログラムを作りだした。Intimacy Directors Internationalで資格を得たインティマシー・コーディネーターは振付師であり、現場で俳優を守り、メンタルヘルスの専門家でもある。

 インティマシー・コーディネーターが広く起用されることになったきっかけは、2017年に世界中で多くの女性たちが性暴力に声をあげたMeToo運動。それから5年で、今ではドラマ『THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』のエル・ファニングや『セックス・エデュケーション』のエイサ・バターフィールド、『ブリジャートン家』のフィービー・ディネヴァーなど、多くの若手俳優たちが彼女たちの存在に称賛を送っている。

 また、映画『ブックスマート』のオリヴィア・ワイルド監督や、『ハスラーズ』のローリーン・スカファリア監督といった多くの女性監督は、親密なシーンでは可能なかぎりスタッフを減らしたり、女性俳優を卑猥な目で見たエキストラを見つけたら何人でも即刻クビにしたりと、撮影環境を良いものに保つために行動を起こしている。

(フロントロウ編集部)

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