ディズニーランドのキャストは「隠語」を使うことがある
“夢の国”として、ひとりでも多くの人に魔法のような時間を過ごしてもらうため、アメリカのディズニーランドおよびディズニーワールドでは様々な思考を凝らしゲストと呼ばれるお客さんをもてなしており、なかでもゲストと直接接するキャストは言葉の使い方だけでなく、口にする言葉そのものまで徹底している。
たとえば、キャストはゲストに何か聞かれた場合は絶対に「わかりません」と答えてはいけないという決まりがあるほか、園内で緊急事態が発生したときは、ゲストにそのことを悟られないように「隠語」を使ってほかのキャストとコミュニケーションをはかるようにしている。
「コードV(Code V」
ゲストが乗り物酔いや体調不良から吐き気を催してしまった場合、キャストは「Code V」という“隠語”を使ってほかのキャストにそのことを知らせている。「Code V」の「V」は、「嘔吐する(Vomit)」という単語の頭文字を取ったもので、「誰かが吐いた」と聞いてほかのお客さんが嫌な思いをすることのないよう配慮して「吐く」という言葉を伏せている。ちなみに、ゲストが園内またはアトラクションでお漏らしをしてしまったときに使われるのが「Code P」。「Code V」と同じく「P」は「小便(Pee)」という単語の頭文字を取ったものである。
「シグナル70(Signal 70)」
聞いただけではまったく意味がわからない「Signal 70」は、 園内で迷子になってしまった子供がいることを知らせる際に使用される。理由は迷子を保護した際に、「迷う(Lost)」という言葉を使って子供たちの不安をあおることを避けるため。Codeと同じく、Signalにもいくつか種類があり、「Signal 25」は園内で火災が発生した場合にほかのキャストにそのことを知らせる際に使われる。
「白い粉警報(White Powder Alert)」
日本語に訳すと「白い粉警報」という意味になる「White Powder Alert」。夢の国っぽい感じでいうと、魔法の粉? それとも薬物か何かだろうか? 正解は魔法の粉でもなければ薬物でもなく、遺灰。説明するまでもないが、遺灰とは亡くなった人を火葬にしたあとに残る遺骨が粉末化したものである。じつはディズニーランドを愛してやまない人のなかには、「ディズニーランドに骨をうずめたい」「死んだあともディズニーランドにいたい」といった願望を抱く人も少なくない。ディズニーランドでは、そんなディズニー愛にあふれた人たちの遺族が園内で遺灰をまくという事例が後を絶たず、米Wall Street Journalによると、大体月に1回の頻度で発生しているという。
その気持ちはわからなくもないが、ほかのゲストからすればあまり気分の良いものではないので、自分のまわりでそういった出来事があったと知って気分を害する人が出ないよう、キャストは「遺灰がまかれた」と言うかわりに「White Powder Alert」という隠語を使って情報を共有しているそう。
「大切なお客様(Treasured Guests)
本来、「Treasured Guests」は本当に大切なゲストあるいはVIPのゲストのことを指す言葉だが、元キャストが米掲示板のReddit で明かした話によると、いわゆる「ウザイ客」の情報をキャスト同士でシェアする際に使われる言葉なのだとか。相手がどんなに失礼で厄介な客であっても、キャストはつねに「お客様第一」の姿勢を貫くことを優先しなければならず、ゲストの前で悪態をつくことは決して許されない。もちろんそういった迷惑客がいることを、ほかのキャストに知らせる際も言葉選びには注意が必要だ。実際とは真逆の意味だが、これなら誰かに会話を聞かれたとしてもなんの問題もない。
ちなみに、どうしても怒りが抑えられず、“何か言いたい!”という衝動を抑えられないときは、「Have a Magical Disney Day!(魔法のような1日を過ごしてね!)」という魔法の言葉を口にしているそう。言葉そのものはポジティブな意味だが、キャストのなかでこの言葉はイラっとした相手に使う、いわゆる「Fワード(禁止用語)」的な意味で使われる定番の文句だという。
(フロントロウ編集部)