インティマシー・コーディネーターのパイオニアであるイタ・オブライエンに、フロントロウが3回に分けてインタビュー。第1回目は、LGBTQ+コミュニティを描く作品について。(フロントロウ編集部)

適切なシーンに不可欠なのは、正しい「脚本」と「リサーチ」

 イタ・オブライアンはこれまでに、80年代のゲイコミュニティの解放と混乱を描いたドラマ『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』や、実在したレズビアンの人生を描いたドラマ『ジェントルマン・ジャック 紳士と呼ばれたレディ』、様々なセクシャリティのキャラクターが登場する『セックス・エデュケーション』など、多くのLGBTQ+作品でインティマシー・コーディネーターを務めてきた。そんな彼女は、物語を形作るのは、まず何よりも脚本だと話す。

画像: ドラマ『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』© RED Production Company & all3media international

ドラマ『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』© RED Production Company & all3media international

 「まず初めに、最近ではより良い脚本が増えていることは本当に素晴らしいですね。すべては脚本から始まります。例えば『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』では、ラッセル・T・デイヴィスの素晴らしい脚本から始まりました。制作陣は、(セックスを)楽しむことへの恥を取り除き、喜びを解放し、愛する喜びを描きました」

 『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』が題材としている80年代は、エイズ危機がゲイコミュニティを襲った暗い時代であると同時に、ゲイの青年たちが隠れて生きるのをやめてロンドンのパーティーなどで自由を謳歌し始めた明るい時代でもある。セックスは彼らの解放の物語における一部であり、主人公のリッチーも多くの男性とのセックスを通して成長していく。本作は、ゲイ男性たちのセックスをタブーとして描かずに楽しいこととして描いた点でも評価された。

 「第1話のセックスシーンでは、リッチーが自身の性に対する意識や、性的パートナーたち、性的快楽に対してオープンになり、シーンを通して自分を成長させます。そのため、それぞれの付き合いを通した成長の旅がそこには明確にあります。そしてそれらのシーンは、それぞれが小さな作品のようでしょう。全体像を見れば、それぞれが全体の一部です。

 それこそが、私たちが見ているものです。それぞれの付き合いのなかで、リッチーとは誰なのか?最終的に彼が友人の1人である性的パートナーに心を開き、最後の輝かしい瞬間が起こるまでに、リッチーと関わりがあった人々は誰なのか?つまり、物語を伝えるなかでの流れは何なのかということに注目するんです」

画像: ドラマ『ジェントルマン・ジャック 紳士と呼ばれたレディ』© 2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

ドラマ『ジェントルマン・ジャック 紳士と呼ばれたレディ』© 2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

 良い脚本があり、そのなかで描かれるそれぞれのキャラクターを分析する。そして、キャラクターを分析したり、インティマシー・コーディネーターの仕事である親密なシーンの振りつけを考えたりするうえでは、リサーチが非常に重要だという。

 「(シーンには)ゲイ男性の愛がある。身体的なディティールも、振りつけのディティールも、当事者に敬意を払わなければいけません。なので私はリサーチをしました。『ジェントルマン・ジャック』をやった時には女性を知るための本を読みましたし、男性のゲイの愛や、体型、異なる身体的な動きについての非常に良い本を持っています。リサーチは重要です

 インティマシー・コーディネーターとして10年近いキャリアがあってでも、想像に頼ったり、自分の知識を過信したりするのではなく、きちんとリサーチして一つひとつのプロジェクトに取り組んでいることを明かした。

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