日本時間1月11日に行なわれた第80回ゴールデン・グローブ賞授賞式の受賞結果が出揃った。ボイコット騒動でレッドカーペットなし、テレビ放送もなしという異例の形で開催された昨年の授賞式を経て、久しぶりに例年通りの形で開催された今年の受賞傾向は?(フロントロウ編集部)

映画部門の作品賞は劇場公開作品に戴冠

 現地時間1月10日に米カルフォルニア州ロサンゼルスの第80回ゴールデン・グローブ賞授賞式が行なわれて、『フェイブルマンズ』が作品賞(ドラマ部門)とスティーヴン・スピルバーグの監督賞の2部門を受賞したほか、『イニシェリン島の精霊』が作品賞(コメディ&ミュージカル部門)とコリン・ファレルの主演男優賞(コメディ&ミュージカル部門)、脚本賞の3部門を受賞して、今年の目玉となった。

画像1: 映画部門の作品賞は劇場公開作品に戴冠

 3月3日に全国公開される『フェイブルマンズ』も、1月27日に全国公開される『イニシェリン島の精霊』もいずれも劇場公開作品となっていて、今年は劇場公開が大賞を受賞することに。映画部門では配給作品としてはNetflixの『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』が作品賞(アニメ部門)を受賞したのに留まり、明暗が分かれた。

 一方、テレビ部門では日本ではU-NEXTで独占配信されている『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が作品賞(ドラマ部門)を、テレビ部門で最多となる5部門にノミネートされていたディズニープラスのスターで独占配信中の『アボット エレメンタリー』が作品賞(コメディ&ミュージカル部門)を含む3部門を、U-NEXTで独占配信中の「ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル」が作品賞(リミテッド&アンソロジーシリーズ、テレビ映画部門)を含む2部門を受賞する結果となった。

画像2: 映画部門の作品賞は劇場公開作品に戴冠

個人賞部門の受賞者は多様な面々

 ゴールデン・グローブ賞をめぐっては、2021年に受賞者を選ぶ会員に黒人がひとりもいないことが発覚してハリウッド外国人記者協会(HFPA)の体制が問題視されることに。さらには、さらには、作品側から接待を受けてノミネートを不正に決めていたという疑惑も噴出し、昨年の第79回授賞式を企業が軒並みボイコット。テレビ放送もレッドカーペットもなしという異例の形式で開催された。

 HFPAは6人の黒人ジャーナリストを含む21人の新会員を増やしたり、ダイバーシティ・アドバイザーを起用したりといった対策を進めて、組織の改革を図ったが、蓋を開けてみれば今年の監督賞候補に女性は1人もノミネートされず、ドラマ部門とミュージカル/コメディ部門をあわせた作品賞候補の10作品に女性監督による作品が1作もないというノミネーションに。構造的差別があるのではないかと批判された。

 そうしたなかで、“HFPAの体質は改善しつつある”と判断されたのかテレビ放送やレッドカーペットありの形では2年ぶりの開催で、ボイコット後最初の授賞式となった第80回授賞式では、個人賞の部門で多様な受賞が目立つ結果となった。

画像: 個人賞部門の受賞者は多様な面々

 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に主演したミシェル・ヨーが主演女優賞(コメディ&ミュージカル部門)を受賞したほか、同作からはもう1人、キー・ホイ・クァンも助演男優賞を受賞。さらには、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のアンジェラ・バセットが助演女優賞を受賞して、マーベル映画としては初めて主要映画賞の俳優賞を受賞するという快挙を達成した。

 ミシェルはその受賞スピーチのなかで「この賞は私が立っているすべての肩のためでもあります。私よりも以前の、私と見た目が似たすべての人たちと、これからのこの旅路を私と共に進んでくれるすべての人たちのための賞です」と述べて、アジア系俳優として受賞することの意義を語った。

 加えて、『アボット エレメンタリー』よりキンタ・ブランソンが主演女優賞(コメディ&ミュージカル部門)を、タイラー・ジェームズ・ウィリアムズが助演男優賞(リミテッド&アンソロジー、テレビ映画部門)を受賞した。

 また、アジア発作品としては、インド映画『RRR』の楽曲「Naatu Naatu」がテイラー・スウィフトやリアーナらをしのいで映画部門の最優秀主題歌賞を受賞したことも注目を集めた。

受賞者の欠席が目立った今年の授賞式

 レッドカーペットもテレビ放送も復活した今年のゴールデン・グローブ賞だが、俳優たちの間では、スケジュールをやりくりしてまで“最優先で出席すべき名誉ある賞”とはまだ見なされてはいないのかもしれない。今年は個人賞を受賞した俳優たちが出席していないということも散見された。

 出席していたら間違いなくレッド・カーペットの主役の1人となっていたであろうゼンデイヤは、『ユーフォリア/EUPHORIA』で主演女優賞(ドラマ部門)を受賞して、エミー賞とのW受賞を成し遂げたものの、授賞式を欠席。彼女の代わりにトロフィーを受け取ったジェイ・エリスは、「彼女は忙しいんですよ」と語った。

画像: ゼンデイヤは受賞を受けてインスタグラムを更新して、「今夜参加することができず申し訳ありませんが、ゴールデン・グローブ賞にこの素晴らしい名誉への感謝を伝えたいと思います。私と一緒にノミネートされた方々へ、皆さんと一緒に名前が載ったことは特権ですし、皆さんを心から敬愛しています。(中略)正直、この文章を書きながら言葉を失っていますし、私が言えるのは、ありがとうという言葉だけです」と感謝を綴った。 ©️Zendaya/Instagram

ゼンデイヤは受賞を受けてインスタグラムを更新して、「今夜参加することができず申し訳ありませんが、ゴールデン・グローブ賞にこの素晴らしい名誉への感謝を伝えたいと思います。私と一緒にノミネートされた方々へ、皆さんと一緒に名前が載ったことは特権ですし、皆さんを心から敬愛しています。(中略)正直、この文章を書きながら言葉を失っていますし、私が言えるのは、ありがとうという言葉だけです」と感謝を綴った。

©️Zendaya/Instagram

 加えて、『TÁR(原題)』で主演女優賞(ドラマ)を受賞したケイト・ブランシェットがイギリスでのプロダクションを理由に欠席したほか、『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』で主演女優賞(リミテッド&アンソロジーシリーズ、テレビ映画部門)を受賞したアマンダ・サイフリッドは新作ミュージカルに取り組んでいることを理由に欠席した。

 もちろん、俳優にとって最も重要な仕事は撮影や演技なのでそちらを優先するというのは納得のいく理由ではあるが、今年は過去の開催に比べてビッグセレブの欠席が目立った。少なくとも、ゴールデン・グローブ賞は是が非でも他のスケジュールを蹴ってまで優先すべきという、名誉ある賞ではないのだろう。

 ちなみに、『イエローストーン』で主演男優賞(ドラマ部門)を受賞したケヴィン・コスナーも授賞式を欠席した1人だが、こちらについてはカリフォルニア州を襲った記録的豪雨で避難しているためだと説明された。

 2年ぶりにテレビ放送もされて、豪華なセレブたちも出席を決めたゴールデン・グローブ賞。まだ改善の余地は残されているが、少なくとも前進していることは確か。アワード・シーズンの主役に堂々と返り咲けるかは、今後の数年にかかっているだろう。(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.