ジャスティン・ビーバーが2021年12月31日までにリリースした約290曲の著作権を2億ドルで売却したことが話題になっている。ミュージシャンたちが近年、積極的に著作権を売却している背景とは? ジャスティン以上に高額で著作権を売却したミュージシャンたちも。(フロントロウ編集部)

著作権を売却するアーティストが増えている背景

 アーティストたちが最近になってこぞって著作権の売却を始めた背景には、とりわけアメリカにおいてはまず大きな理由の1つとして税対策という側面がある。米モルガン・スタンレーは次のように解説している。「楽曲の権利を売却することで得られる利益はキャピタル・ゲイン(資産などの売却で得られる収益)として扱われ、つまり、その収益に対して課せられる税率は最高で20%です。一方、ロイヤリティは経常利益として扱われるため、収入に応じて最高で37%の税率が課せられるのです」。

 人気ミュージシャンの多くは高額所得者であるため、経常利益に最高の37%という税率が課される人たちばかり。要するに、楽曲が再生されたり利用されたりするたびにロイヤリティから37%を税金として納めるよりは、一度に売却して20%を税金として納めるほうが安く済むということ。ジャスティン・ビーバーのケースで考えれば、今回の2億ドルという売却で課される税金は20%の4,000万ドル(約51億円)だが、仮にロイヤリティとして2億ドルを稼いでいたとすれば、課される税金は37%の7,400万ドル(約95億円)。同じだけ稼ぐことを見込めば、一度に売却することで3,400万ドル(約44億円)の節税ができるという計算になる。

画像: 著作権を売却するアーティストが増えている背景

 加えて、ここ数年はパンデミックによってツアーができないアーティストが多く、大きな収入源がなくなってしまったことも売却の背景にあるという。

 また、比較的高齢に差し掛かっているアーティストにとっては、著作権を現金に換えることで、自分が亡くなった時に子どもや家族が相続しやすくなるという側面もあるという。ピンク・フロイドのドラマーであるニック・メイスンは米Loudwireに次のように語っている。「亡くなるということを考えれば、カタログを売ることで、多くの点で資産を扱いやすくなるという可能性があります。最終的には私も子どもたちにお金を残してあげたいと思っています。(お金にして残してあげたほうが)カタログの扱い方をめぐって20人が口論するよりも、はるかに簡単なのです」。

This article is a sponsored article by
''.