ブレット・モーゲン監督にインタビュー
『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』が生まれることになった経緯について教えていただけますか?
「2015年にカート・コバーンについての『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』という映画を公開したのですが、この映画を終えた後で、伝記としてのドキュメンタリーでできることはやり尽くしたという気がしたのと同時に、シネマという形式で音楽を提示することをものすごく楽しめたように感じました。それで、新しいジャンルを創り出したいと思ったのです。基盤を伝記とは違うところに置きつつ、私たちを惹きつけるロックやアートのミステリーを包括するような、音楽ドキュメンタリーに対する新しいアプローチを試したいと思ったのです。アートやアーティストを解剖したり、説明したりするのでなく、むしろそれらをシネマ体験として反映させるものを創りたいと思うようになりました」
2007年にデヴィッド・ボウイと直接会って、映画化の構想について話し合われていたそうですが、彼との対面を振り返ったときに、特に印象に残っているエピソードなどはありますか?
「私がデヴィッドと直接会ったのは、ごくわずかな時間でした。7年もの間、デヴィッド・ボウイについて探求してきた私ですが、彼と同じ部屋の中で一緒に過ごしたのは30分か40分ほどでした。とは言いつつも、彼についてのあらゆる素材に目を通した今、彼との対面を改めて振り返ると、(印象的だったのは)その“存在感”でしょうか。デヴィッドはあらゆる瞬間に存在していました。彼は人生におけるあらゆる瞬間を、交流や成長のための機会として捉えようとしていたのです。彼はものすごく若い頃から、この地球上で過ごす時間は限られているということを心の底で認識し、理解していたように思います。彼の存在からは、そうしたことが感じられました。一瞬たりとも無駄にはしないという姿勢を」
『ムーンエイジ・デイドリーム』というタイトルに決めたのはなぜですか?
「元々は、『ボウイ・クオテーション(※Quotation=“引用”や“発言”という意味)』というタイトルにするつもりでした。ずっとそれを仮のタイトルとして進めていたのですが、作品のコンセプトを表すには重すぎるのではと思うようになりました。この作品とは何たるかを、表していないのではないかと。この作品について考えてみたときに、それを表す最も適切な表現として思いついたのが、『ムーンエイジ・デイドリーム』でした。実際のところ、それが何なのかは私には分かりません。いまだにそれはミステリーなのですが、この映画が伝えようとしている色彩やエネルギーを感じることができるのです」