3月24日(金)より全国公開される映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』のブレット・モーゲン監督にインタビュー。“デヴィッド・ボウイ財団が公認した唯一の映画”として、財団から提供された膨大なアーカイブに監督が2年をかけて目を通した末に完成したのは、よくあるドキュメンタリーとは違う、まったく新しい「シネマ体験」。映画についてはもちろん、デヴィッド・ボウイ本人との対面の思い出や、映画を観たU2のボノやショーン・ペンからもらった最高のリアクション、そして現代のハリー・スタイルズにも通ずるようなボウイの先見性などについて訊いた。(フロントロウ編集部)

デヴィッド・ボウイは生まれながらにして東洋文化に惹かれていたと監督

本作には「Chaos(混沌)」という言葉が何度も登場します。この作品におけるメインテーマの1つだと思うのですが、この「Chaos」という言葉をデヴィッド・ボウイはどのように定義していたと思いますか?

「『Chaos』とは人生における自然の摂理だと、彼は信じていたと思います。彼が『Chaos』や、それから『Fragmentation(断片化)』という言葉で示そうとしていたのは、あまりに多くの音や映像、誘惑が繁栄し、メディアやモチーフが絶えず私たちの周囲に渦巻いていたために、そのすべてを追跡するのは不可能に近かった、20世紀という時代における人生のあり方だと思います。今、この瞬間のようなことですよ。向こうのほうで何か音がしていますが、自分はこうしてあなたと会話を続けているわけです。そういうわけで、デヴィッドは『Chaos』を人生における自然の摂理として表現していたと思います」

この作品ではボウイと日本の関係性についても掘り下げられています。監督から見て、ボウイは日本のどのような部分に惹かれたと考えていますか?

「ボウイは生まれたときから、東洋文化に惹かれるところがあったのでしょう。世の中に対する彼の見方は、西洋よりも東洋の哲学や宗教と通ずるところがあったと思います。その中でも、日本や日本の芸術には特に。絵画もそうですし、歌舞伎もそうです。特に歌舞伎についてはその本質の部分で、デヴィッドと通ずるところがあったと考えています。私が作った作品というのは、(本名である)デヴィッド・ジョーンズについての作品ではありません。デヴィッド・ジョーンズがどんな人物だったか私にはまったく分かりませんが、ボウイのことやボウイの発言は知っています。そういう観点から、キャラクターという意味において、通ずるところがあったと思います。彼は仏教について勉強していましたが、言うなれば、それによって東洋的な世の中の見方を学んだわけではなかった。それは、彼が既に備えていた見方を補強したに過ぎないのです」

画像1: デヴィッド・ボウイは生まれながらにして東洋文化に惹かれていたと監督

この映画を最初に観た人たちのなかには、U2のボノや俳優のショーン・ペンといった人たちがいたそうですね。彼らのリアクションはいかがでしたか?

「素晴らしいものでしたよ。自分が作るものであれ、観るものであれ、映画に対するあの時ほど最高のリアクションを今後経験することはないでしょうね。映画としても、アーティストとしても、あの作品には彼らに語りかけるものがあったのでしょう。彼らも(一般の)オーディエンスと同様に、すべての機会を最大限に活かして改革を続けていくという、人生を肯定してくれるようなデヴィッドのメッセージにインスピレーションを受けたのだと思います」

ところで、先ほど『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』が話題にあがりましたが、それ以外にも、これまでにはザ・ローリング・ストーンズを題材とした『クロスファイアー・ハリケーン』なども監督されていますが、次に映画を制作してみたいアーティストの構想は既にありますか?

「大々的には言えるものではないですが、何人かはいます。ジャネール・モネイの大ファンなので、彼女は魅力的ですし、彼女とのコラボレーションには興味がありますね。ただ、今後、誰かに“ついて”の映画を作るつもりはなくて、関心があるのはコラボレーションです。アーティストとコラボレーションをして、彼らの手助けになるようなものを作りたい。いわゆるドキュメンタリーと呼ばれるものを今後私が作るかは分かりません。伝記にはもう関心がありませんから」

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