ハリー・スタイルズが来日公演で証明したこと
ソロアーティストとして、ポップミュージックのシーンにおいて特にここ数年で収めた巨大な成功を考えれば、ハリーはとっくに、“ワン・ダイレクションのメンバーである〜”という枕詞が不要と言える地位を築き上げている。そんな今のハリーのライブにおいては、会場に集まった誰もが歌うことのできる「What Makes You Beautiful」ですら、数あるハイライトの1つに過ぎない。
続けて披露された「Late Night Talking」も、彼にワン・ダイレクションのメンバーとして初めて初めてのグラミー賞をもたらした「Watermelon Sugar」も、同じように大歓声に迎えられたことが、ハリーがいかにソロでも名曲を生み出し続けてきたかを証明していた。本編を締めくくったのは「Love of My Life」で、これはアルバム『ハリーズ・ハウス』のラスト曲でもある。「Watermelon Sugar」とはまたテイストの違う1曲だが、すぐにモードを切り替えられるのもハリーのすごいところ。ハリーは「ごちそうさまでした」というユニークな日本語でお別れの挨拶をして、ステージを後にした。
ここからショーはクライマックスへ。ステージへと戻ってきたハリーがアンコールの1曲目に選んだのは、ソロとしてのデビューシングル「Sign of the Times」。当然、アンコールの2曲目に披露された2022年の音楽シーンを代表する大ヒット曲「As It Was」はイントロから会場が大きく沸いたが、ライブを締め括ったのは、こちらもデビュー作からの「Kiwi」だった。
いかに大ヒットしたかという点で選べば、「As It Was」をラストの曲に持っていくのが自然だろう。けれど、ハリーが選んだのは、ソロとしてツアーを回り始めたときからずっとライブのハイライトを生み出し続けてきた「Kiwi」。そう、ここまでずっと自分の好きな音楽を信じ、それを探究し続けてきたのがハリーであり、世界的な大ヒットはあくまでその結果でしかないなのだ。
日本への愛に満ちたMCで、これまで生み出してきた名曲間を彩りながら、“人に優しく”をモットーに掲げてポップで温かい空間を創り出してみせたハリー。ソロとしてデビューして以来、シアター規模の会場からコツコツと歩み続けてきたハリーが、チケット即完で集めた約1万4,000人のオーディエンスの前で披露した「Kiwi」は、約5年ぶりとなる来日公演のフィナーレにふさわしい、ソロアーティストとしての勝利宣言のようだった。
この日のセットリストはSpotifyにてプレイリストとして公開されているので、チェックしてみて。
(フロントロウ編集部)