ニューアルバム『+11 Hours』は遠距離恋愛の末の破局がインスピレーションに
ーインディペンデントになってからは初のアルバムとなる、6月9日にリリースするニューアルバム『+11 Hours』について訊かせてください。この作品は11時間の時差があるシドニー出身の元恋人との別れにインスピレーションを得たアルバムだそうですね。
アルバムや同作からのシングルはすべて、去年の終わりに経験した失恋から生まれたものです。8ヶ月間の遠距離恋愛をしていたのですが、すごく大変で。別れたときは受け入れるのも忘れるのも難しかったのですが、音楽でそれを乗り越えることができました。僕にとっては、音楽がその状況を乗り越えるためのセラピーのような役割を果たしてくれたんです。そのときに多くの楽曲を書きました。6月9日にリリースするアルバムは、僕が失恋と折り合いをつけようとしていたなかで感じた感情や気持ちをベースにして作ったものです。たくさんの人たちに共感してもらえたら嬉しいですね。
ー搭乗券とパスポートを握りしめながら、黒いインクを流しているというアートワークはとても印象的ですよね。
アルバムと同作からのシングルのアートワークはすべて、美しくて、素晴らしいものになる可能性があったのに、ある意味ではそれが台無しになってしまったものにインスピレーションを得ています。
オーストラリア行きの航空券とパスポートを持っているアートワークは、オーストラリアに行く予定があったのに、それが台無しになってしまったことを表現しています。どこか汚れていて、僕の手から黒いインクが流れているように見えるのはそういう理由です。初めはとても美しくて素晴らしいものだと思っていたのに、破局によってそれが台無しになってしまったということを表現しようとしました。
ー今は奇しくも、ツアーでそのオーストラリアにいるところなんですよね。 オーストラリアからこのインタビューに応じてくれていると伺いました。
そうなんですよ(笑)。このアルバムはオーストラリア出身の女の子について書いたものなので、今ここにいるのはすごく違和感がありますね。オーストラリアに来るのは初めてなのですが、すごく奇妙な感じがします。これから彼女の出身地でもライブをやるのですが、興味深いものになりそうです(笑)。僕が正気を保って、ステージの上で崩壊してしまわないことを願うばかりです(笑)。
ー初めに取り掛かったのはどの楽曲だったのですか? どのようにアルバムのトラックリストを組み立てていったのでしょう?
ブレンダン・バックリーという友人と作ったアルバムなのですが、彼と正式に一緒に仕事をするのは今回が初めてだったので、まずは足並みを揃える必要がありました。どういう方向性で進めていきたいのかを、明白にする必要があったんです。たしか最初に完成したのは「Dark Side」だったと思いますが、この曲ができたときに、「いいね。気に入った。アルバムの方向性が決まった気がする」という風になったんです。取り組むべきことが決まったっていう。
とはいえ、それですべてが決まったわけではありませんでした。すべての楽曲を同じようなサウンドにはしたくはありませんしたし、多彩な楽曲を収録したいと思ったので、僕らはあらゆる楽曲を作りました。トラックリストに関しては、失恋したあとで僕がどういう思考回路を経験したかということに基づいています。あらゆる感情を経験するわけで、「彼女が恋しい。会いたい」って思う日もあれば、「もう二度と会いたくない」と思う日もありますよね。そういうわけで、このアルバムではそうした感情の行ったり来たりが表現されています。
ー「Storage」には「メッセージ」や「電話」という歌詞が登場していて、特に遠距離恋愛を想起させる1曲です。
「Storage」 は最も書くのが難しかった曲でした。歌詞の面でも最も凝った楽曲だと思います。どういう曲にしたいか、どういうことを伝えたいかということを特に意識したので。相応しいメッセージを持たせて、自分たちの交際についてのパーソナルな内容を含ませたいと思っていたので、完成した楽曲にはとても満足しています。歌詞で言えば、これまでに僕が作ってきた楽曲のなかでも最もお気に入りの歌詞ですね。僕が楽曲を通して伝えたいことを的確に、忠実に伝えられているので。