グッドヒュー監督、若い世代の「いいね!」への執着について語る
マシュー・グッドヒュー監督は、彼のホラーコメディ『Slotherhouse(スローサーハウス)』で、ソーシャルメディアへの執着が引き起こす危険性を、面白おかしくオーバーに描くことを意図したという。
大虐殺が起こる場所という意味の「Slaughterhouse(スローターハウス)」と、ナマケモノを指す「Sloth(スロス)」をかけたおやじギャグタイトルの本作は、大学4年生のエミリー・ヤング(リサ・アンバラバナー)が、女子学生社交クラブの会長に選ばれるために人気を集めようと、違法に入手した“アルファ”という可愛らしいナマケモノをペットにする姿を描いている。8月30日に全米で公開された。
やがてエミリーは、女子学生クラブのライバルたちがキャンパス中で死んでいるのを目撃し、おそらく映画史上最もありえない連続殺人犯であるアルファとの血みどろの対決へと導かれていく。
「この映画は、ソーシャルメディアへの執着、好かれたいという願望、誰からも受け入れられたいという願望も扱っているのです。エミリーは現実よりも、ソーシャルメディアを通じて人々に見せる、入念にキュレーションされた生活に関心がある。彼女は“いいね!”の数やメッセージの数ばかりを気にしているのです」とグッドヒュー監督はUPIとのインタビューで語っている。
日本で行われた調査(memedays)によると、2021年のなりたい職業第1位には「インフルエンサー」が選ばれており、また同年、英国の子どもを対象にした調査(Play Like Mom)のなりたい職業ランキングではユーチューバーがトップとなった。本作はホラーであると同時に、SNSに夢中になりすぎる世代に向けた映画でもあるよう。
「いいね稼ぎ」が引き起こす一つの問題
この映画は、ネット上の投稿で野生動物を小道具のように扱う人がいることについても警鐘を鳴らしている。
「ナマケモノがある種のオンライン現象であることは知っていたし、ミームや言及を目にした。最初にこのプロジェクトを知ったとき、これらのものを密漁して安く売っている人たちがいることも知りました」と同メディアに明かしたグッドヒュー監督。
これは、購入者がナマケモノが好きで世話をしたいからではない、と彼は付け加えた。エミリーと同じように、愛らしいナマケモノと一緒に写った写真を投稿することで、自分のソーシャルメディア・アカウントへのトラフィックを増やしたいからなのだ。
「かわいい写真かもしれないが、生き物をどんな危険にさらしているのかわかっているのですか?」。グッドヒュー監督はレトリカルに尋ねた。
「深刻なジレンマを、軽快でおバカな映画の中で表現しようとしたんです。ジャンル映画は、より深刻な社会問題に取り組むことを可能にすると思う。もし誰かがこの映画を見て、"そうだ、モテるために密猟動物を買うのはやめよう"と思ってくれたら、成功ですね」
YouTubeなどでも人気の、動物やペットというジャンル。ペットの様子を紹介するYouTubeチャンネルは、人気が出ると数千万円から数億円の収益があるという。日本では顔出しせずに収益が出せるコンテンツとして、副業として始める人もいる。大切にしているペットを紹介することよりも、どんな動物が注目を浴びやすいかと、収益目的で珍しい動物に手を出すという人も残念ながら存在するのが現状だ。日本ではカワウソやサルの密輸が問題になっており、税関では必至の水際作戦が続けられている。
この映画は日本での公開は未定。ぜひ日本でも”アルファ旋風”を巻き起こし、ソーシャルメディアとの付き合い方や密猟問題を考えるきっかけにしてほしい。