あらゆる社会的な“標準“に囚われることを嫌い、徹底して自分らしさを貫くその姿勢が、同世代の多くの男性ファンたちを含む“ありのままの自分でいたい“と願うあらゆる人たちを惹きつけてきたヤングブラッド。彼が来日したタイミングでインタビューを実施し、メンタルヘルスをめぐるスティグマ(汚名)や、“男は強くあるべき“などという社会的な男らしさが男性たちを苦しめるトキシック・マスキュリニティ(男らしさの呪縛)などについてトーク。社会の呪縛を拒みながら、無防備なありのままの自分でいることの大切さを力強く語ってくれた。(フロントロウ編集部)

トキシック・マスキュリティは「嘘」で「フェイク」

そして、メンタルヘルスをめぐるスティグマというのは、“男性は強くあるべき”などという社会通念的な“男らしさ”が男性たちを苦しめる、トキシック・マスキュリニティ(男らしさの呪縛)と切り離せないものだと思います。あなたのことは世の中のあらゆるステレオタイプを打ち破ってくれる今の世代のロックスターだと思っていますが、「The Boy In The Black Dress」もそのような曲の1つです。この曲を聴いたとき、男性として自分は救われた気持ちになりました。ファッションやネイルなどにも言及しながら、“男性はこうあるべき”というジェンダー規範に苦しんできた体験を取り上げたこの曲に、救われる男性は多いと思います。

ありがとう。この曲は、俺にとってものすごく大切な曲なんだ。これまでの人生、俺はヘイトを向けられたり失望したりするたびに、自分を傷つけていた。顔面を初めて殴られたり、ネイルを塗っていると言う理由で教師からこっぴどく怒られたときなんかにね。人生におけるそういう経験たちが俺を形成していった。“黒いドレスを着た少年(The Boy In The Black Dress)”というのは、この世の中にとっては奇妙に映る存在のレプリゼンテーション(表象)なんだ。でも、俺がそれを奇妙じゃないものにしてやったのさ。 俺は黒いドレスを着てステージに立ち、2万人がそれに大歓声をあげてくれたんだからね。

黒いドレスを着た少年
あいつのことが本当に憎いよ 大嫌いだ 死んだらいいのに
黒いドレスを着た少年
あいつのことが本当に憎いよ 大嫌いだ 友だち全員に伝えよう
あいつに惨めな思いをさせようぜって

あいつは24歳までに自分を消そうとした
扉から出ることができないから

ああ、忘れられたらいいのに
その黒いドレスを着た少年は俺だということを

「The Boy In The Black Dress」歌詞抜粋

でも、俺が10歳のときに同じことをやっていたときは、誰からも好かれなかった。だからこれは、そういう世の中に改めて「ファック・ユー」を突きつけているような曲なんだよ。「これが俺だ」っていうね。相応しい人を見つければ、ありのままを愛してもらえるということを見せつけているんだ。

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「The Boy In The Black Dress」には、「男らしさにはかなりの傷を伴うようだ(Masculinity seems to hurt a lot)」という歌詞も含まれています。トキシック・マスキュリニティを真正面から扱っている楽曲だと思うのですが、こうやって男性アーティストがトキシック・マスキュリニティをテーマにすることは、なかなかなかったことだと思います。

ああ、完全に同意するよ。

ここまでの人生で、トキシック・マスキュリニティにはどのように対処してきましたか?

最初はうまく対処できなかった。すごく困惑していたよ。きっと君も同じだよね。俺たちを縛りつけるトキシック・マスキュリニティというのは罠なんだよ。プレッシャーであり、重荷であり、鎖でもある。でも、それに立ち向かう方法を見つけたんだ。もし君が「The Boy In The Black Dress」を聴いてそう感じてくれたのだとしたら、俺も同じだよ。俺の場合は、テレビ番組でボーイ・ジョージやジョン・ライドン、フレディ・マーキュリー、ミック・ジャガーを観たのがそうだった。俺にトキシック・マスキュリニティなんて無意味だということを教えてくれのは、彼らやデヴィッド・ボウイのような人たちだったんだ。

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トキシック・マスキュリニティは嘘だ。詐欺なんだよ。あんなのはフェイク。思想のようなものだね。マンメイド(※)の思想なんだよ、ややこしい言葉遣いは許してほしいんだけどさ。自分たちが作り出した、俺たちを箱の中に閉じ込めておくための思想なんだ。恐怖から生まれた思想なんだよ。怖がる必要なんてないよ。どうか君も自由であってくれ。
※“人”や“男性”を意味する“man”という言葉を使ったことで、“man-made”という“人類が作り出した”とも“男性が作り出した”とも言える言葉遣いになったことを指している。

黒いドレスというところにちなんで、ファッションについても改めてお訊きしたいのですが、ファッションでも自由に自分らしさを表現されていますよね。ファッションにおいて一番重視しているのはどんなところですか?

“真実”だね。一番クールなファッションというのは、その人がその人らしくいられているときなんだ。君が何を着ていようと俺は構わないよ。着たいと思って着ているならね。言っていること分かるかい? それこそが大事なんだ。好きなものを着ればいい。着たいと思っているものを着ているのが、最高にクールな人たちだからね。誰かの考えについていったり、トレンドの奴隷になったりしているのだとしたら、そいつは俺にとってはクールなヤツじゃない。君が着たいものを着ているのなら、それだけで最高にクールなんだよ。

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