2020年版「世界で最も影響力のある100人」が発表に
米TIME誌が毎年選出している「世界で最も影響力のある100人」のリストが今年も発表された。
パイオニア、アーティスト、リーダー、アイコン、タイタン(重要人物)の5部門に分けて選出された今年のリストは、世界的なパンデミックが現在も進行中の新型コロナウイルスの対策にあたる人物や、人種差別の撤廃を訴える「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)」運動の発起人など、社会問題に積極的に働きかけてきた人たちの選出が特に顕著となっている。
それぞれの部門のトップに選出された人々は以下の通り。
メーガン・ジー・スタリオン<パイオニア部門>
パイオニア部門のトップに選出されたのは、ビヨンセがリミックスに参加した今年5月発表のシングル「Savage(サヴェージ)」と、今年8月にリリースしたカーディ・Bとのコラボ「WAP」の2曲で全米シングルチャートの首位を獲得したメーガン・ジー・スタリオン。
アーティスト活動と並行して大学で勉学に励んでいる彼女は今年7月、ラッパーでシンガーのトリー・レーンズに銃で撃たれるという事件を経験しながらも、気丈に振る舞い続け、現在の音楽シーンを代表するアイコンの1人として君臨し続けている。
メーガンを推薦した俳優のタラジ・P・ヘンソンは、米TIME誌に次のようにメッセージを寄せている。「私たちの人間性を失わせると思っているので、黒人女性に対して“強い”という言葉の汚名を着せたくはないのですが、彼女には強さがあります。繊細の中にある強さです。母親や父親、祖母といった多くの家族を亡くしていながらも、自分の力で成し遂げてみせる彼女は、粘り強さの象徴のような存在です」。
ザ・ウィークエンド <アーティスト部門>
アーティスト部門のトップに選出されたのは、今年3月に通算4作目となる最新作『アフター・アワーズ』をリリースし、8月に開催されたMTVビデオ・ミュージック・アワード(以下VMA)にて、最優秀ビデオ賞と最優秀R&B・ビデオ賞の2部門を受賞したザ・ウィークエンド。
ミュージシャンのエルトン・ジョンは、ザ・ウィークエンドが様々な音楽ジャンルを組み合わせて独自の音楽を創り出していることを称賛した上で、「彼は商業目的としての商業性には関心を持っていませんが、スポティファイにおいて最もストリーミングされているアーティストの1人です。プリンスのように、彼は自分のビートに乗って行進しています。まさにアーティストたちの模範なのです」と賛辞を寄せた。
アーティスト部門には他に、セレーナ・ゴメスやマイケル・B・ジョーダン、ホールジーらが選出されている。
アンソニー・ファウチ <リーダー部門>
リーダー部門からは、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長が選出。
1984年からNIAIDの所長を務めてきたファウチ氏は、36年にわたって通算6人の大統領に疫病などについて助言してきた人物で、新型コロナウイルスによるパンデミック禍でも重要な役割を担ってきた。
アメリカの人気トーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』で司会を務めるジミー・キンメルはファウチ氏について、次のように賛辞を寄せた。「ファウチ医師は、上辺だけの言葉を口にすることはしませんし、政治家たちからの重圧も押し除けてみせます。彼は真実を運ぶのです。それは困難を伴うことですが、命を救うという一つの目標に向かって、誠実に取り組んでいます。彼はその勇気と率直さをもって、私たちの信頼を獲得しました。知恵や経験、誠実さを持った、この困難な状況のなかで私たちを導いてくれる彼のような存在がいてくれることは、とても幸運なことです」
ガブリエル・ユニオン&ドウェイン・ウェイド <タイタン部門>
その分野や国における重鎮、重要人物、偉大な人物と称されるタイタン部門からは、俳優のガブリエル・ユニオンと元NBA選手のドウェイン・ウェイド夫妻が選出。
2019年に現役を引退した元NBA選手であるドウェインと、ガブリエルは2019年、トランスジェンダーであることをカミングアウトした娘ザヤのことを全力でサポートしていく姿勢を表明。
ミュージシャンのジョン・レジェンドは、そんな2人について、「2人はザヤを愛し、彼女という人を祝福し、彼女を受け入れています。ドウェインは、両親としていかに自分たちの子供たちのことを守り、子供たちのために闘い、子供たちが素晴らしい大人になるための手助けをすべきかという模範を示してるのです。とても素敵なことだと思います」と祝福。
一方、人気オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』の現場で経験した差別を告発し、番組を降板になってしまったことでも知られるガブリエルに対しては、「彼女は単に『影響を与えている』だけではありません。彼女は意図的に自身の注目度や影響力、リソースを操作して、黒人女性や少女、クィア、トランスジェンダーをはじめとした最も疎外されてしまっている人々を祝福するためのアジェンダを、意識的に推し進めようとしているのです」とMeTooムーブメントの発起人であるタラナ・バークが称賛の言葉を寄せた。
アリシア・ガーザ、パトリス・カラーズ、オパル・トメティ <アイコン部門>
そして、アイコン部門からは、人種差別の撤廃を訴える「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)」運動の発起人である、アリシア・ガーザ、パトリス・カラーズ、オパル・トメティの3人が選出。
今年5月に黒人男性のジョージ・フロイドが警察官に首を抑えられて亡くなった事件を皮切りに、「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)」運動が全米各地で活性化。その動きは今も広がり続けており、世界各地にまで波及している。
彼女ら3人を推薦したのは、2012年2月26日に、非武装で無実にもかかわらず射殺されて17歳で短い生涯を終えた、トレイボン・マーティンの母親であるシブリナ・フルトン。
「彼女たちはたったの3人に過ぎませんが、彼女たちは至るところにいます」とシブリナは記し、次のように続けた。「彼女たちは人々に考えることを促しています。『もしも自分に、パーカーを着た17歳の息子がいたとして、武器など持っておらず、キャンディと飲み物しか持っていないのに、地面に横たわって亡くなってしまったとしたら?』と。『自分の娘がベッドに寝ていた時、警察に倒されて、殺されてしまったとしたら?』と。あなたはどう思いますか? それこそが、『ブラック・ライヴズ・マター』です」。
日本からも2人が選出
ここ日本からも、先日、テニスの全米オープンを制したばかりの大坂なおみ選手と、ジャーナリストの伊藤詩織氏が選出された。
バスケットボール選手であるマヤ・ムーアが、大坂選手が全米オープンで警察官に殺害された黒人の名前が描かれたマスクを着用して試合に臨んだことに触れて、「彼女は、愛を与えることを拒む口実に誰もが抵抗できるということを私たちに思い出させてくれました」と称賛。
一方、実名で性的暴行を受けた相手を告発し、日本で「#MeToo」運動を促進させた伊藤氏には、社会学者の上野千鶴子氏が「自分が受けた性的暴行を勇敢に告発したことで、日本人女性たちに大きな変化をもたらした」と賛辞を寄せた。
米TIME誌が選出した2020年版「世界で最も影響力のある100人」のリストはこちら。(フロントロウ編集部)