SNSの普及で著名人の炎上が日常の光景となった現代。ハリウッドでも毎週のようにセレブリティの発言や行動が炎上しており、時には本人からの謝罪につながることもある。ただ、その謝罪がさらなる炎上を招くことも少なくない。騒動後に業界やファンから受け入れてもらえるかどうかは、問題となった言動や騒動後の行ないにもよるが、“火に油を注がない”謝罪とはどんなものなのか? (フロントロウ編集部)

ブラックフェイス騒動で出た、2人の司会者の違い

 炎上しやすい謝罪と炎上しにくい謝罪のポイントを紹介したところで、最後に、2020年にジミー・ファロンジミー・キンメルという2人の司会者に起きたブラックフェイス騒動を紹介する。ブラックフェイスとは、非黒人が黒人に扮するために顔を黒塗りすること。差別的な背景があるため、近年はこれをすることはタブーとされている。

画像: 同時期に過去のブラックフェイス騒動が浮上した、ジミー・ファロン(左)とジミー・キンメル(右)

同時期に過去のブラックフェイス騒動が浮上した、ジミー・ファロン(左)とジミー・キンメル(右)

 夜のトーク番組司会者であり、同じジミーという名前を持つファロンとキンメル。そんな2人がそれぞれブラックフェイスでコントをする昔の様子が、2020年に発掘されて炎上。2人とも謝罪するところまでは同じ道を辿ったのだが、キンメルの謝罪だけがさらなる炎上を招く結果になった。

 キンメルは、「私のメイクや言葉で純粋に傷ついたり、不快な思いをされた方にお詫び申し上げます」という言葉で謝罪し、「これらのスケッチの多くは恥ずかしいものです」と自責の念を伝えた一方で、謝罪声明のおよそ3分の1で、今回のブラックフェイス騒動が自分を嫌う層(トランプ支持者)が焚きつけていると主張し、「この話が持ち出されるのはこれで最後ではないでしょうし、きっと私を黙らせるためにまた利用されるでしょう」「抑圧的で人種差別的な政策を進めるために、(この件に対する)怒りを装う人たちからの脅しに黙ってはいません」とコメントした。

 キンメルが言っていることは事実で、このブラックフェイス騒動は、反トランプを掲げるキンメルを批判する恰好の材料としてトランプ支持者らに使われていた。そうは言っても、その場は、ブラックフェイスをしたことで傷つけた人々に謝るための場。米Los Angeles Timesはコラム欄で「ブラックフェイスをしたことについて謝るなら、ブラックフェイスをしたことについて謝ればいい」と辛辣な言葉を送り、キンメル擁護派の反応も冷ややかだった。

 一方のファロンは、ツイッターで、「弁解の余地はありません。この紛れもなく侮辱的な決断をしたことを大変申し訳なく思っており、私にその責任を取らせてくださっている皆さんに感謝しています」と謝罪した後、番組でも謝罪。「恐ろしくて、申し訳なくて、恥ずかしいと言わざるをえません。 私のような白人の男やその他の人たちがやっている最大の犯罪は、沈黙することだと気づきました」としたうえで、黒人差別の話題に触れ、当事者の声を聞くために、当初予定されていたファーストゲストであるレディー・ガガに代わり、NAACP(全米黒人地位向上協会)の代表を招待して対話した。自分の責任をはっきりと認め、自責の念を述べ、被害と問題点を理解していることを示し、対話と成長というアクションを取ったファロンの謝罪は業界では評価された。

 炎上した時には、謝るだけが選択肢ではない。ただ、一度謝ると決めたならばいさぎよく謝るべき、というのが欧米論のよう。アメリカのPR界で権威的な存在である危機管理のプロ、ハワード・ブラグマンは、米Labrea Mediaのコラムでこう書いたことがある。「謝罪とは、あなたが100%悪いということではなく、あなたにその問題を乗り越える決意が100%あることを意味します。そのためには、120%の責任を取ること、つまり『自分を犠牲にすること』が必要なのです」。(フロントロウ編集部)

※この記事は2021年6月28日に最初に公開されたものです。

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