セレブの謝罪、火に油を注いだNGケース
まずは、謝罪したことが状況をさらに悪くしたケースから検証。
謝罪するときにやるとほぼ100%炎上するのが、当然と言えるかもしれないが、言い訳をすること。2020年3月にインスタグラム・ライヴで、「例え皆がかかったとしても、まあ、人は死ぬだろうけどさ、もちろんそれは恐ろしいことだけどさ、まあ、避けられないんじゃないかな」と、新型コロナウイルスについて発言して炎上した俳優のヴァネッサ・ハジェンスは、その後、「文脈を切り取られた」とSNSで釈明。しかしこの言葉が“言い訳だ”としてさらなる批判を招いた直後、ヴァネッサはSNSを再び更新。「私の言葉が無神経で、今の国や世界が置かれている状況に全く適していなかったことを理解しました。今回のことは、今まで以上に、自分の言葉が持つ意味に気づかされる経験になりました」と謝罪した。
そのほかにセレブリティの謝罪声明でよく使われるものの、批判されやすいのが、“passive voice(受動態)”という表現の仕方。これは例えば、「私はケーキを作った」というところを「ケーキが作られた」と、主語から行為を行なった者を抜いた表現の仕方。
司会者を務めるトーク番組でセクハラやパワハラが横行していたことが2020年に発覚し、自身も多くの人から横柄な態度が告発されたエレン・デジェネレスの謝罪声明では、出だしで、「I learned that things happened here that never should have happened(ここで起こってはならないことが起きていたことを知りました」と、“passive voice(受動態)”を使用。さらに、270人のスタッフを管理することの難しさや、横柄だというウワサの背景にある誤解を説明したこの謝罪の翌日、メディアの見出しには「不誠実」「最悪」といった言葉が並んだ。
“相手のとらえ方”を謝罪声明に入れるのも、さらなる炎上を招く要注意行為。2020年に、ドラマ『glee/グリー』の撮影現場でのひどい態度が当時の共演者から暴露されたリア・ミシェルは、謝罪文で「自分自身のキャストたちに対する行動が、彼らには、どのように受け取られていたかということを見つめ直すきっかけとなるものでした」と、“perceived(受け取られていた)”という言葉を使用。すると、あたかも行動が悪とされたのは相手がそう受け取ったからだと言っているような表現が集中砲火を受けて大炎上。最初の告発を行なった俳優のサマンサ・ウェアも不快感をあらわにした。
また、謝罪声明においてよく聞く、“傷つけるつもりはなかったですが、もしも傷つけてしまっていたのならば申し訳ない”というフレーズ。きちんと謝っているように聞こえるかもしれないが、「もしも(if)」という言葉が入ると高い確率でさらなる炎上を招く。例えば、複数の男性からMeTooされた俳優のケヴィン・スペイシーの「もしも、私が彼の言うような行動をとっていたとしたら、彼に心からの謝罪をしなければなりません」という言い回しにはと大きな批判が出た。
NGなケースを見ていると、そこには共通するのは、自分の責任を100%認めきれていないというところ。では、炎上を招きにくい優等生な謝罪声明とはどんな内容のものなのか?
フロントロウMEMO
謝罪声明と言えば、2017年からはハリウッドでMeTooされた男性からの謝罪声明が多く発表された。そのうち219件を分析したジョージア州立大学法学部による研究『申し訳ありません(申し訳なくありません):#MeTooの弁護を解読』によると、謝罪声明でもっとも顕著に使われていた言葉は「never(決してない)」と「alledge(主張)」。多くの声明で“否定”する言い回しと、告発をあくまで“主張”とする言い方が多かったことが分かった。責任を認め切れていない言い方と言えるが、予想どおり、著名人のMeTooに対する謝罪声明はそのほぼすべてが火に油を注ぐ結果となった。