曲紹介だけで歓声があがる!コナンのシンガーソングライターとしての強み
ここで、「横浜のみんなに質問があるんだ。今夜ここに(日本語で)“お友だち”と一緒に来た人は?」「その“お友だち”にハグしてあげて!」と語りかけたコナンが、「今夜ここにお友だちと来ていない人は、自分がベストフレンドになってあげる」と優しさをみせた後で披露したのは、『スーパーエイク』より文字通りの「Best Friend」。パフォーマンス中には、「ベストフレンド」という歌詞のところで腕をあげてみせたり、2階席や3階席のほうにも手を振ってみせたりするなど、オーディエンス全員との友情を祝福しているかのようだった。
そして、続けてパフォーマンスされたのは、恋愛未経験であることを公にしているコナンを象徴する楽曲の1つとも言える、「いつか僕も何の前触れもなく恋に落ちるだろう/でも今はこうして人間観察しているだけ」と歌う「People Watching」。この楽曲に続いた、こちらも実体験を基にした「The Story」もそうだが、リスナーが共感できる切ない歌詞を、美しいポップソングへと昇華できるのが、“サッド・プリンス”の異名をとるシンガーソングライターとしてのコナンのすごいところ。
バンド紹介を経て「Footnote」が披露される前には、「次の曲は、密かに親友のことを好きになってしまったことについての曲だよ」という曲紹介がされたのだが、その時点でファンはどの曲のことか分かったようで、ここで歓声があがる。いかにコナンの楽曲がファンの共感を呼んでいて、ファンがいかに歌詞を聴き込んでいるかを証明していた光景だった。
ここまで10曲を披露してきたコナンだが、楽しそうにファンと交流しながら、全力でパフォーマンスしてきたコナンの勢いは決して落ちることがない。『スーパーエイク』のオープニングトラック「Movies」を披露したコナンはここでまたアクセルを踏んで、シングル「Overdrive」を皮切りに、「Checkmate」から「Jigsaw」と、立て続けに3曲を披露。力強いアンセムたちを矢継ぎ早に歌い上げたこのセクションは、この日のハイライトの1つだった。
「Maniac」では1曲丸ごとシンガロングが生まれることに
アンセム3連発の後で披露された「Family Line」は、家族への複雑な思いを綴った1曲。母親の母国である日本でのパフォーマンスということで、いつも以上に特別な意味を持つこの曲をパフォーマンスするにあたって、「この曲は『スーパーエイク』のなかでもお気に入り」と紹介した上で、「辛い幼少期を過ごしたんだ」とコナン。「こうして横浜に集まってくれたみんなが、過去は自分を定義しないんだということを証明してくれた」と噛み締めるように語ると、観客に次のように呼びかけた。
「この曲はみんなへのリマインダーとして書いたんだ。出身地も、過去に起きたことも、どれだけ傷ついたかも関係ない。君はなりたい自分になれるんだ。いいかい? みんな約束してくれる? 過去は君を定義しないし、家族だって君を定義しないよ」。
「Family Line」は最後は観客との大合唱でフィナーレを迎えることとなり、会場には美しいサウンドスケープが広がった。
ショーはここからクライマックスへ。「高校で出会った女の子についての曲だよ」という曲紹介の段階でこれまた観客が大きく沸いた、歌詞がTikTokを中心にZ世代の共感を呼んでコナンの初期を代表するヒット曲となった「Heather」では、歌詞を大切にするコナンらしく、スクリーンに歌詞が映し出され、もちろんこの曲でも大合唱が生まれた。
「今夜は横浜のみんなと楽しい時間を過ごせたよ。悪くなかったね」とジョークを飛ばして、「残念なお知らせがある。これが最後の曲なんだ」とお知らせしたコナン。「悲しくない? 自分も同じ気持ちだよ。これがステージに立つ最後だから、みんな全力を出してほしい!」と伝えた後で本編の最後に披露したのは、『キッド・クロウ』からのポップアンセム「Maniac」だった。
オーディエンスもコナンからのリクエストに応えて、最初の歌詞から大合唱が生まれることに。この曲では、ほとんど全編を通してシンガロングが起きていたのが印象的だった。